第一章20 『メアリとアスカ』
夢幻の探求団は休日を取っていた。
メアリとアスカは二人で、外出し、休日を堪能していた。
「うわぁ、ここのお店おいしそ~~」
「食べていくのか?」
「う~ん。そうしよっか。帰ってミスティに作ってもらうのも悪いし」
「わかった」
メアリとアスカの二人は様々な店を見て回った後、お腹を空かせて食堂に入ることにした。
光の星も落ち、ちょうどいい時間帯だ。
席に通されてから注文し、少し待つと品が運ばれてくる。
まずは飲み物。果汁と天然水を混ぜ合わせた果実水が運ばれてきて、二人はそれを飲む。
ゴクゴク。
すっきりとした咽越しと、果実の甘みが口いっぱいに遅れて広がる。
次いで、湯気の立った鶏肉のステーキや、ウルフの骨付き肉など、スタミナ重視のメインディッシュに加え、新鮮な野菜やふっくらと焼き上がった小麦パンが並べられると、一気に食欲が刺激された。
「「いただきます!」」
声を合わせて食べ始め、一口頬張ると二人は顔を見合わせた。
「おいしい!」
「うむ。絶品だ」
二人は料理に舌鼓を打ちながら、食事を進めていき、雑談にも花が咲く。
「アスカはさ、色んな団に入ったんでしょ? ここはどうかな? アスカにとって居心地いいかな?」
「ふむ……」
メアリが訊ねると、アスカは果実水を少し飲んでから口を開く。
「ここは、とても居心地がいい。あれほどまで、あたしを理解しようとする者はいなかった。クライ=フォーベルン。本当に不思議な男だ」
「でしょ? クライは最強の探求者だもん」
「前々から疑問だったが、団長は何故、そこまでクライ=フォーベルンを押すのだ? 他にも有名な探求者は多い。先日のリリーゼ=メルフォルンは、クライ=フォーベルンよりも強いとされる十二神の3番だ」
「うん……知ってる」
アスカが口にしたことは事実。メアリも存じていた。
十二神の中でクライは5番。最強とは認識されていない。
でも――。
「それでも、クライが一番なの。私の中では断トツ」
「理由は、聞かぬ方がいいか」
「うん。ごめんね……。まだクライにも話してないし、やっぱりクライに話してからじゃないと、教えたくないかな」
そう言うと、アスカはニヤリと笑う。
「そうか。わかったよ」
「……ありがと、アスカ。それと、これからも頑張ろうね」
「無論」
二人は手元のグラスで乾杯のジェスチャーをし、果実水を飲み干した。