表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
されど彼らはダンジョンに挑む  作者: 新増レン
第一章 「夢幻の探求団」
19/47

第一章18 『経験を積もう』

 

 メンバーがギルドから戻ってきた翌日、早速クライ達はダンジョンへと向かった。

 当面の目標はここのダンジョンで力を付けていくこと。ここの半分を踏破出来れば新米探求団としては申し分ない。

 事前に新たな技術を披露し、打ち合わせして、試したい内容を試す。

 これで意見は一致している。



「そっちいったぞ!」

「任せろ!」


 ダンジョンを少し深く潜り、ウルフよりも少し手強いゴブリンと対峙していた。

 彼らは上級から下級までの階級があるが、どの階級も徒党を組んでいるため、集団戦闘は避けられない。

 しかし知能は低く、裏をかくことはたやすいため、ウルフ同様に初心者向けの魔物だ。

 この深さに生息するゴブリンは下級のゴブリン。


「があああっ!」

「ふんっ!」

 キンッ! ギンッ!


 アスカが一体のゴブリンと交戦し始める。

 相手は五体。それぞれ剣を持ったり盾を持ったり、人間の真似をして連携を試みようとしているが、恐れることはない。


 アスカを狙おうとしているゴブリンに照準を定め、誰からも感知されない位置取りをしたシェドから合図が来る。使役した使い魔の鼠が足元までやって来た。



 シェドの得た技術は使い魔の使役。これにより、離れていても意思疎通が可能となる。


 そしてゴブリンを圧倒しているアスカの得た技は硬化。防具を重厚に身に付けない戦士の防衛術で、皮膚を固くして傷つかないようにする技だ。



「あぎゃあああ!」

「次っ!」


 アスカは一体目を倒し、後ろに控えるゴブリンへと突進する。

 しかし、そこに声が響いた。


「アスカさん! 他のゴブリンに注意して!」

「――! わかった!」


 ミスティールの声にアスカは足を止める。すると、進む先に矢が放たれてきた。


「助かったわ!」

「うん!」


 ミスティールは、これまでよりも正確な占いを出来るようにしてきた。細かなことも予知できるようになり、彼女からの指示は的確になる。


「シェド!」

「はい!」


 掛け声に合わせて、シェドは後方に控える矢をつがえたゴブリンを脳天への一撃で仕留めた。


「レクシス!」


 それを見てから、クライはレクシスに合図を送る。


「了解だぜ、兄貴!」

 彼は頷き、アスカが相手するゴブリンへと向かって行った。


「姉御! チェンジ!」

「了解!」


 レクシスはいつの間にかアスカを姉御と呼ぶようになったが、アスカも一騎討ちにごねることは少なくなった。

 こうして交代し、アスカは他の二匹のゴブリンを相手取る。

 さすがに、二匹を同時に相手するのは厳しい。


「シェド、フォロー! ミスティも頼む!」

「「はいっ!」」


 二人が的確にアスカの支援へと動き始める。それを見てから、クライはレクシスに目を向けた。

 曲芸師は前衛向きではない。

 たとえアスカとの戦いで疲弊し傷ついたゴブリンだとしても、レクシスが苦戦しているのは目に見えていた。


「メアリ! 自然回復を付与。こちらで強化を付加する」

「任せて!」


 メアリが修得したのは自然回復の術。

 こちらは治癒よりも精神力を使わないため、こうして単発で発動することが可能。肉体の持つ回復力を底上げする身体能力の増強術だ。


 対して、クライはレクシスに奮起の陣と防壁の陣を付与する。戦術使いであれば起訴中の基礎と言われる技術であるが、今はまだ、この程度で充分だった。


「燃えてきたぜ!」


 レクシスはクライとメアリの支援の効果でテンションを上げ、そのままゴブリンへと斬りかかっていく。

 彼が新たに習得した技術は、ナイフジャグリング。手に持つナイフと宙に投げたナイフを使うことで、相手を撹乱しながら斬りつける芸当らしい。


「それそれそれそれ! 見えないのかぁ!」

「よし、あっちは大丈夫だな」


 レクシスが押しているのを見て、クライはアスカたちに視線を向ける。

 するとすでに二体のゴブリンを倒したようだった。


「どっせい!」

「ぎやああああ!」


 ゴブリンの叫び声……レクシスの方も終わったようだ。


「クライ、勝ったね!」

「ああ。みんな、休憩にしよう。岩陰に集合!」


 新たな技術や連携を生かし、勝利を収めることができた。





 その後も休憩を挟みながらダンジョンを探索し、日が暮れる前にはダンジョンを出る。

 クライの判断では、まだダンジョン内のキャンプは難しそうだったため、こうして何度も往復を繰り返していった。


 これを数日続ける頃には、さすがにマンネリ感や疲労感が前面に出てきた。


「メアリ、今日も行くのか?」

「そのつもりだけど……ちょっと辛いかもね」


 宿舎で最終判断をすることになっているが、メンバーを見ても難しそうだった。


「クライは、平気なの?」

「俺は慣れてるからな。ダンジョンで三泊したこともある」

「うへぇ……次元違う」


 メアリはゾッとしてへたり込む。

 一方、元気な者もいた。


「だらしないわよ、みんな」

「そうだぜ! 今日もダンジョンにトライして、稼ごうじゃねぇか!」


 無尽蔵の体力かと疑いたくなる、アスカとレクシスの二人だ。

 クライも初めての頃は疲れていたため、彼らの姿は恐ろしい。


「今日から二日、休日にしよう」

「さ、賛成です」

「えぇ~~! 兄貴、そりゃないぜ!」


 賛否両論だが、このまま続けるのは命の危険がある。


「考えてもみろ。休みだぞ? 迷惑かからない限り、何してもいいんだ。例えば、飲みに行ってもいい」

「飲みに?」


 ゴクリ。と喉が鳴る音が聞こえそうだ。レクシスは扱いやすくていい。


「アスカも、鍛錬は必要だろ? 魔物相手ばかりで変な癖がつかない様に、鍛えておいた方がいいんじゃないか?」

「……一理ある」

「よし、二人ともいいみたいだ。どうする? メアリ」


「もちろん! 休みにする!」


 こうして夢幻の探求団は初めての休暇を取ることになった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ