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されど彼らはダンジョンに挑む  作者: 新増レン
第一章 「夢幻の探求団」
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第一章11 『不思議な団長』


「お、終わったんですか?」

「だぁ、はぁ、はぁ」

 カラーン。

 レクシスは緊張が解け、ナイフを落とし、へたり込む。

 他の面々も同様に座り込み、息を荒くしていた。

 なんとかウルフ三頭を倒し、夢幻の探求団は初めての戦闘を終了した。



「ウルフって、あんなに強かったんだね」

 メアリが驚いたように口にする。

 それを聞いて何を思いだしたのか、レクシスが声を上げた。


「――っ! お前! 何でなんも仕事しねえんだよ! お前が手を貸せば六人で――!」


 あいつもアホだ。昨日の今日で学習していないらしく、またメアリに睨まれた。

「レクシス、クライに文句があるなら私が受け付けるけど?」


「す、すみませんでした!」


 メアリの一言でレクシスは体育座りをし、大人しくなる。

 しかし彼の言った事は決して的を射ていないわけではない。



「で、でも、クライさんがいない分、不利だったんじゃ……」

 その思いがあったのか、ミスティールが言うと、誰も言葉を発しなかった。

 彼女の言う通りだ。それはクライでもわかる。

 だが――。


「不利だったと思う。でも、最初から全てを教えるのは意味がない」

「経験から学べってことだよね!」

 彼女は本当に、前向きだった。

「メアリの言うとおりだ」

「で、でも、少しくらいアドバイスを……」


「ミスティは知らないけどな。こうして初めて探求団を作ったら、普通は経験者なんていないんだ」

「え……」


「何もわからない中で、これまでの探求者たちはウルフを倒してきた。戦術士がいないのは団として致命傷。でも、常に誰もが万全とは限らない。だから、個々が成長しなければ、団としても伸びない」


「……」

 ミスティールは真剣な表情で話を聞いていた。


 何か思う所があっても不思議ではない。

 メアリの様に順応できたりするほうが稀だ。

 なにせ、これは命のやり取り。一瞬のミスが命取りになる戦いだ。

 その恐怖や難しさは、言葉では説明できない。



 特に頭の中を死が過れば、人間は足掻くか諦めるかの二択を迫られる。

 探求者であれば、前者を選ばなければ生き抜いていけない。

 彼女達はこの戦いで、この感覚を少しは感じ取っているだろう。



 だからクライは今回、感覚を覚えさせるため、具体的な指示を出さなかった。



「メアリ、俺達は六人で活動するんだったな」

「うん。もちろん!」

「だったら、全員で強くならないとな」

 その言葉に、アスカは静かに笑っていた。

 他の三人はまだ納得できていないようだが、それでいい。悩んでくれなければ、成長を促せないからだ。

 その点――。


「よし! もう一戦くらい大丈夫だよね!」


 このメアリという少女は、迷いなくクライを信じてくる。

 そしてまた、クライも不思議なことに、メアリを信じようとしていた。

 本当に不思議な団長だった。


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