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されど彼らはダンジョンに挑む  作者: 新増レン
第一章 「夢幻の探求団」
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第一章9 『はじめてのダンジョン』

 

「ふふーん」

 メアリが許可証を見せびらかすと、番兵は頷く。

「よし、入っていいぞ」

 探求団となった翌日、クライ達は近くにあるダンジョンに足を運んだ。


 グレンタの首都をベースキャンプとしている彼らにとって、最も近い場所がここ。

 新緑のダンジョン「コヤード」だ。



「ここがダンジョン……」

 中を歩くと、ミスティールが思わず声を漏らしている。


 古代の遺跡、その中は不思議な金属で造られた人口の通路。

 ダンジョンによって異なるが、このコヤードは緑を自生するダンジョンで、地下に潜っていくほど、地上ではないのかと錯覚を起こしてしまう神秘的な遺跡だ。


「洞窟みたいですね」

「ここは金属と土で造られてるから、その表現は間違いじゃないな」


 コヤードは、グレンタ王国に点在するダンジョンの中でも魔物も弱く迷宮も複雑ではないため難度は低く、すでに踏破されたダンジョンでもある。

 その踏破した探求団というのが……。


「クライ、黄昏の探求団が最初に踏破したのはここだよね!」

「ああ。よく知ってるな」



「もちろん! 私、黄昏の探求団のファンだし、クライの大ファンだもん。黄昏の探求団が踏破したダンジョンの数は12。その中でも最初に踏破したのが新緑のダンジョン、コヤードだよね。メンバーの顔も名前も全部知ってるの。大ファンだからね!」



 恐ろしいくらいに良く知ってる。

 そして自慢なのか、大ファンを二度も言った。

「すごいね、メアリさん」

「メアリでいいよ。団長だけど、クライみたいにすごくないし」

 俺もあまりすごくない。

「え、えぇと」


 ミスティールがチラチラとこちらを見てくる。

 昨日の一件があったからだろうが、名前を呼び捨てにしたくらいでブチ切れるとは思えない。


 無難に頷くと、ミスティールはメアリの事を「メアリちゃん」と呼んだ。


 歳も近いから、悪くない関係だ。

 メアリも団長として威張り散らすつもりはなさそうだし、このくらいの距離感が的確なのかもしれない。



「……あの、クライさん」

「ん?」

「人、少ないですね。いつもこう、なんですか?」

 シェドは弓を握りしめるように持ち、周りをキョロキョロ見ながら訊ねてくる。


「ここは以前、俺達が踏破してるからな。先には何もないことがわかってるダンジョンは挑む者も少ない。そこで、挑戦する人が少ない分、最初の経験を積むのには、コヤードはちょうどいい場所なんだ」


「最初の経験、ですか?」


「なに話してるの~~?」

 話を聞いていたのか、ミスティールとメアリも寄ってきた。

 メアリ、ミスティール、シェドの三人には懐かれているが、残りの二人は少し離れたところを歩いている。

 さすがは、退団数上位の二名だ。


「本格的にダンジョンを踏破しようとすると、他の探求団との競争になる。そうした中で、一番重要なことは何かわかるか?」

「はい! 先にダンジョンを踏破すること!」

「惜しいな。メアリ、今言ったように踏破するには何が必要だ?」

「んーと、魔物に勝つ強さ?」



「そう。ダンジョンの踏破を狙う探求団は大体、上級ギルドに所属する者が多い。つまり、今のまま挑んだとしても、踏破することは絶対に不可能だろう。なにせ規模の大きい団は人海戦術も駆使できるから、全てにおいて負けてる」



「それで、訓練なんですね」

「そういうこと」

 ミスティールは察しが良いタイプだ。

 それに意見もはっきり言えて、いい機能を果たしている。

 彼女が他の団に入る前にここを選んでくれて助かった。

 他の団に入れば、間違いなく手放さない逸材だ。


「まず目指すのはダンジョンの踏破ではなく、個々人の能力向上と連携の確立だな。団としての機能を果たせなければ、生存率は上がらない。その上、ダンジョンを進めなくなる」


「よし! それじゃあ早速、行ってみよう! わくわくして昨日も眠れなかったんだ」

 メアリはキラキラと瞳を輝かせる。ミスティールも同じようで、初めてのダンジョンを堪能しているようだった。

「それじゃ、行くか」

 クライの号令で、とりあえずダンジョンの洗礼を受けるため、進むことにした。


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