機械仕掛けの恩返し
それはダンジョン奥深くでの事「おぉぉ。あったぞ。これを持って早く帰還せねば」
彼は俗に言うマッドサイエンティスト。古代の時代に作られていた機械人形を研究していて人生の全てを掛けてい行っている研究者である。
そんな彼は未発見ダンジョン内で1体の美しい女性型機械人形を発見した。
この世界ではまともな機械人形はない。仮に発見出来たとしても機械人形の劣化が激しく、研究材料として使用できる機械人形はほぼ無いと言えた。その為、機械人形を研究している大学や研究機関はなく。個人で研究を行っている者しかいない。
マッドサイエンティストは、発見した機械人形を自分の家兼研究施設へ持って帰った。
ダンジョン内から持ち帰った女性型機械人形を作業台に乗せて、様々な確認を行っている。
「髪や肌の質感は人間とほぼ同じ。着ている服に劣化は認められない。脈拍は勿論ない」
ふむふむ。見れば見るほど人間と大差を感じられない。古代人はいったいどのようにしてこのような存在を作り上げたというか……。
未知なる存在にマッドサイエンティストは感情の高ぶりを抑えきれない。
「世界で私だけだろう。ここまで状態のいい機械人形を発見し、研究できるのは!」
マッドサイエンティストは寝る間も惜しんで自分が見つけてきた機械人形を研究し続けた。しかし様々な方法を試しても、女性型機械人形は起動しなかった。
それでもマッドサイエンティストは来る日も来る日も、研究を続けた。
しばらく研究を続けていたある日
大貴族の使いと名乗るものが訪れてきた。貴族はどこで話を聞いたのか女性型機械人形を買い取らせろと言ってきた。金は言い値で構わないと言っている。
勿論、マッドサイエンティストは断った。
マッドサイエンティストは機械人形の為に生きているのだから、売るわけがない。
それから何度も何度も貴族の使いは訪れて、女性型機械人形を売ってくれと言い続けている。時には、大貴族本人が直接来て交渉をしてきた事もある。それでもマッドサイエンティストは女性型機械人形を譲らなかった。
そんなある日、自宅兼研究所の周りが騒がしく、何事かと窓を覗くと女性型機械人形を買取たいと言ってた大貴族が手勢を連れて自宅兼研究所の出入り口を封鎖していた。
マッドサイエンティストは悟った。痺れを切らした大貴族が女性型機械人形を奪い取りに来たのだと……。
マッドサイエンティストは研究者である。あのように武力行使をされるて対抗できる手段は持ち合わせてない。悲観に暮れその場に座りこんでしまった。
マッドサイエンティストはこれでこの女性型機械人形と一緒にいれる最後の時間かと思い作業台で横になっている女性型機械人形を抱きかかえてソファーに座らせた。そして自身もその隣に座った。
「長い間お前を拘束していたのに1回も起動できなくてゴメンな。お前と過ごした時間は楽しかった。でもこれで終わりだ。今まで研究者としてお前を実験していた。だけど最後の実験はお前を女として実験させて欲しい」
マッドサイエンティストは彼女が座っている方向に体を向けた。
そして彼女の顔を見て、目を見て、鼻を見て、口を見てから……。
マッドサイエンティストは両手の人差し指を立てて、彼女の胸の一番高い頂に向って
「スイッチオン」をした。
「ぁん」
彼女の口から淡々と言葉が綴られていく。
起動を行います。起動成功。
指先から生体認証登録を行います。生体認証登録完了。
以後正面にいる人物を自身の所有者と認定します。
「!?」
「起動しちゃったよ」
起動したばかりの女性型機械人形に現状の説明をした。
「俺は家の中に立て篭もって出来るだけ時間を稼ぐ。だからお前は裏口から全力で逃げてくれ。捕まってくれるなよ」
「畏まりました。全力で逃走させて頂きます。但し、マスターは何があっても外に出たり覗いたりしないでください。
「わかった。約束する」
女性型機械人形は裏口から走って行った。
マッドサイエンティストは入口を抑える為、ドアの近くにバリケードを作り徹底抗戦の構えを見せた。
暫くすると、外から轟音や悲鳴がしてさらに雨が降っている様な音がし始めた。マッドサイエンティストは女性型機械人形との約束を破って部屋の小窓から外の様子を伺い見てしまった。
そこは血の惨劇であった。至る所に赤いペンキが塗られていた。
血の惨劇の中心には「身長が2メートル前後でムキムキマッチョ」になっている女性型機械人形がいた。
女性型機械人形は小窓へゆっくり近づいてきた。
マスター見てしまいましたね……。
約束を破ってこの姿を見たからには責任を取って私と結婚して貰います。
「いや、結構です。間に合ってます」
その日以来、マッドサイエンティストは機械人形の研究を辞めたのだった。
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