表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侍に忍ぶ  作者: ろーくん
5/12

石か? 玉か?




「助かったのじゃ、礼をいうぞ」

「まさか塀を乗り越えようとなされてる姫がいようとは…驚きました」

 背丈は4尺5寸(138cm)、体重は12貫ほど(40kg)といったところだろうか。いや、それ以上に目立つのは…


2尺9寸(87cmIcup)…くらいか」

 おぶった時に背中に感じた感触は相当のものだった。

 こうして対面して見ても幼い風貌に見合わぬ豊満さ、なるほど壁のぼりも容易でないだろうと思わせる大きさだ。


「ん、何がじゃ? それよりもぬし、父上の家臣なのであろう? ならばわらわの供をせい」

「供…でございますか。一体どちらに行かれようというのです?」

「決まっておる、町じゃ!」






「おぉ、山原様」

「山原様ーっ、ご出世おめでとうございやす!」

 町といってもどこに連れて行くべきか迷ったが、自分の所領であるここが無難だろう。万が一の事もないだろうし城からも近い。

 何より町割りを把握している分、案内を求められても問題なく応える事ができる。


「すごいのぉ、ぬし。民草がみな慕っておるではないか」

「いえ、それほどの事でも…。私めの所領はこの町一つですゆえ、町人との距離が近くなりやすくもありますれば」

「………むー」

 何か不満げだ。気に障るような事をした覚えはないのだが。

 この小さな姫は、仮にも仕える殿の愛娘。侍大将の山原としては上司も当然の存在だ、無礼は許されない。


「ぬし。本当はそのように面倒な性格ではなかろう? わらわの前ではかしこまらずともよいぞ」

「!?」

 なん…だと?―――― 一瞬全身が凍りついたような寒気に覆われた。出会ってよりわずか1刻(30分)ほどしか経っていない小娘に、己の素性を見透かされたなど、忍にとってこれほど危険を感じさせる事は、そうそうない。


「(いや……、さすがにそこまで見抜かれてはいないだろう。だが、侮れぬものだな、警戒すべきか)」

 居並ぶ家臣達(同僚)よりも、大殿よりも、今の自分にとって最も危険度の高い人物がまさか姫君であるとは、彼自身思いもよらず心があわ立つ。


「……ぬし、ぬしっ! わらわを放って置いて何を呆けておる。ぬしの名を聞いておるのじゃからこたえぬか」

「ああ、これは失礼を。(それがし)、山原 条之介 信正と申します」

「むー……まぁよい。山原信正じゃな? しかと覚えておくぞっ」

 間違いない、勘付いている。見抜いているわけではなく、山原という武士の下に何かが隠されていると、彼女は確実に勘付いている。



「(あの人の好さそうな殿様からは想像もつかないな。いや、(とんび)(たか)を産む事もあるか。さてどうするか…口封じ…は、今はマズイ。あの殿には他に子がいない分、大事になる。長老に報告して―――)」

 不意に裾を引かれ、姫の方を見る。


「のう、ノブよ。あの娘こちらを見ておるがぬしの知り合いか?」

 指し示す方向に視線を向けると、いつかの町娘が驚いたような表情でこちらを伺っていた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ