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最終章 約束の海

-見えなくて キミの痛みは どこにある-

あれから数日が過ぎていた、俺は病室へは行けなくなっていた、ずっと家で過ごす


「智也、結衣にゃんのとこ行かなくていいの?」


妹の遥に聞かれた、ホントは行きたいけど、どんな顔すればいいのだろう、返す言葉はなく、そのまま部屋に篭る、もし結衣にゃんが退院して遊びに行けて、走り回れたらどれくらい楽しいだろうか、もう弱っている姿は見たくなかった


ただひたすらご飯を食べ、部屋で何もない時間を過ごす、そんな日々は楽しいわけはない、休みの日だし友達と遊びに行こうとしても、なぜか立ち上がれない、部屋にいてもこんなことしか考えれない、少し散歩で紛らわそうと思った、やっぱり病院の方へは足が向かない、俺は適当に歩き回る、商店街に来てみた

賑やかで楽しそうだお買い物してる人、買い食いをしてる人、友達と話してる人、みんな楽しんでる


そんな中、こんなしけた顔で歩いてるのは俺くらいのものだろう、ホント見渡せば数日前もそうだけど、もっと前だって、結衣にゃんと一緒に過ごした日々が蘇る、昔はずっと一緒にいたせいで、どこへ行っても思い出だらけだった、歩いてても辛くなる、このまま病院へ行けば、結衣にゃんの笑顔見れば元気になれるかなとか思った、でも足が進まない、行っても寝てるんだ、長い時間寝てる、少し前に寝てなきゃダメなんて嘘をついたせいなのか、こんな形で嘘が本当になるとは思いもしなかった


俺は何も考えずに帰り、また部屋に閉じこもった、そしてゆっくり目を閉じた

俺は1つの夢を見た、季節は夏、2人で水着を着て、海へ行く夢、海で泳いだり、水を掛け合ったり、冷たくて気持ちいいずっとずっと見たかった、疲れて砂浜に寝転がり一休みしてまた海へと、夕焼けになるまで遊んだ、2人で何をやっても楽しかった、眩しいほどの笑顔、そして聞きたかった君の声

結衣にゃんは俺に抱き着いてきて、大好きだよっと耳元で囁く、そんな夢だった


「俺だって大好きだよ」

気が付いたら泣いていた、ふと時計を見ると10時だった、明日も休みでやることない、とりあえず晩ご飯を食べようとリビングへと行く


「あ、智也、やっと起きたんだね、晩御飯先食べちゃった」

俺はだいぶ遅れて1人で食べ始めた、冷めてるけどうまい、ただご飯はいつでもホカホカだ


ピンポンとチャイムが鳴った、こんな時間に誰だ?

「私行ってくるね」

そう言って遥が駆けだした、その先にいたのは

「智也、お客さんだよ~」


俺は箸をおき、玄関へと行く、そこにいたのは雪菜に支えられてる、結衣にゃんだった、まるで状況が掴めない


「じゃあ私帰りますね、結衣にゃん頑張れっ」


「ミカンちゃん迎えに来てくれてありがとね」

そう言って雪菜は帰って行った、迎え・・・まさか病院から歩いてきたのか、とりあえず俺がやることは1つだ、結衣にゃんを休ませないと、倒れたらまずいことになりそうだ


「とりあえず部屋に上がれ、部屋で」


「どうして病院来てくれないのよ、なんでよ、海行くって約束したじゃん」


「えっ?」


「小指絡めて約束したじゃんか」

結衣にゃんに圧倒された、確かにそうだ、でも今の結衣にゃんを見る限りそこまで元気があるとは思えない


「確かにしたけどさ、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ」

一刻も早く、結衣にゃんを休ませないと、もう弱ってるのはすごい伝わってきた、なのになぜこんなに必死なのか


「場合だよ、次はないかもしれないんだよ?」


「えっ?」

結衣にゃんの一言は俺の心に突き刺さる


「行こうよ、彼女として、あなたの恋人としての、最後のわがままだから」


さらに重く突き刺さる、俺は思わず泣きそうになる、でも結衣にゃんは本気だ、これが最後なんだ、最後・・・その意味を考えただけで心が痛い、でも最愛の結衣にゃんの前で涙は流したくない

「1分だけ待って」

俺は急いで部屋に戻ると、上着を取って戻ってきて、結衣にゃんに着せた


「ありがとっ」


俺は靴を履くと結衣にゃんを背負った


「疲れたろ、俺の背中でゆっくり休め」


「うん、暖かい、智也のぬくもりだよっ」


そして歩き出した、これが最後のデートだ、こんな背中が重いデートは初めてだ

俺はゆっくりと歩く、そのぬくもり結衣にゃんを確かめるように


「寒くないか?」


「うん」


「海楽しみだな」


「うん」


「お見舞い行けなくてごめんな」


「・・・うん」


「お前の寝顔、可愛かったぞ」


「・・・う・・ん」


背中のぬくもり、それが今、結衣にゃんの証だ、返事はただか細く、それでも帰ってくるだけで涙が出そうだけど安心できた、1歩、1歩海へと近づいていく俺の足は徐々に速くなっていった

しばらく歩くと波の音が聞こえてきた、塩の匂いも強くなってきた、海へと来たんだ、そのまま歩き砂浜にたどり着く、海には、夜空に輝く満月が映っていた、ついに来たんだ海、結衣にゃんときたかった念願の海、しかも貸切状態で俺達しかいない


「やっと着いたな海」


「うん、海に着いたら渡そうと思っていた、はいこれ」


俺が受け取ったのは鍵だった、どこかで見覚えのある鍵だった、あなたは私の鍵ですみたいな意味だろうか、私の扉を開けてねとかそんなわけでもなさそうだ


「ともちゃんが前へと進むための鍵・・・なんて、ただの私の家の鍵だよ、部屋にはさ、ともちゃんへのプレゼントが置いてあるからね」


「すげぇ貴重品じゃねぇかよ」


それにしても結衣にゃんは海へと着いたとたんに元気になったのか、その声をたくさん聞けて嬉しかった


「少し歩きたいな、ねっ、一緒に歩こうよ」


さっきまでなら大丈夫かとか無理するなとか心配したが、もうとことんわがままに付き合うことにした

それは最後のわがままだから、愛しいわがままだから、俺にしてやれるのはこれくらいしかないから


俺は結衣にゃんの手を取って歩き始めた、2人で歩いてる、2人で来たかった海、満月が綺麗だ、とてもロマンティックな風景だ、さざ波は癒しのあるBGMだ、聞いていて癒される、こんないいデートが出来るなんて幸せ者だ


2人が座れそうな丸太を見つけた、そこに2人で座る、結衣にゃんは俺の膝の間に座る俺がしっかりと結衣にゃんを抱きしめる


「ずっと夢だったこんなデートが」


「えへへ、私もいつもうるさくてごめん」


「そこが好きなんだけどな」


「私はともちゃんの優しいとこが好き」

そして互いに見つめ合い、静かにキスをした、それは少ししょっぱくて、でも優しい優しい柔らかいキスだった、俺はしばらく結衣にゃんを抱きしめ続けた


「俺は何も用意できなかった、だからこれくらいしか出来なくて、こんなんでごめんな」


「ごめんなとか言わないで、ここまで導いてくれた、ともちゃんがいたからこの景色も見れてるんだからさ、私には最高の贈り物だよ」


嬉しい言葉をもらった、こういう時って胸が暖かくなるんだな、さっきまでふぬけていた自分に伝えたい、世界はこんなにも綺麗で結衣にゃんが答えをくれるんだって、だから迷わず進めと


「ともちゃん、ありがとう」


-キミがいる ただそれだけで 幸せな 幽世かくりよまでも 一緒ともに行けるね-


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