第7章2 放課後デート
-開けた先 風舞うキミは 微笑を-
「なんで、いるんだよ」
「えへへぇ、遥ちゃんに借してもらった、意外と似合うでしょ」
そう、扉を開けた先に待っていたのは結衣にゃんだった、もちろんただ制服借りて勝手に入って来ただけだ
「病院は?寝てなきゃダメだろ?」
本当はそんなこと心配してない、制服姿を見たのは3年前の卒業式以来だ、だから嬉しかった、まるで同じ学校に通ってたみたいで、例え3年間の思い出が1つしかなくても、3年前の思い出ならたくさんある
「しっかり外出許可は貰って来たわ、それにせっかく会いに来たんだし、やることは1つでしょ」
特に文句を付けるつもりはない、むしろ俺も嬉しいくらいだ、そして卒業式の日に両想いの2人が集まってすることと言えばあれしかない
「準備はいつでもいいわ」
そう言われ俺は徐々に近づき、まず手を伸ばし、頬へと触れた、触れることで伝わるものがある、それは温度だ、この寒い時は互いの温度を感じると暖かくなれる、頬に触れ、顔を寄せる、徐々に近づいていき軽く触れあうのが理想だが俺は思い切り唇を奪った、もう我慢とかしたくない、素直に触りたい、匂いを嗅ぎたい、キスしたい、そんな願いが今は叶う状況だ、そんな嬉しい状況は今だけなんだと感じた
そして、結衣にゃんの手に俺の第2ボタンを握らせる
「俺と付き合ってください、結衣にゃんのこと大好きです」
この言葉を口にするのは2度目だ、俺は3年立ってこの言葉を口にした、久しぶりに会えてまだ好きで今言わないと後悔する、そんな気がした
結衣にゃんはその言葉を聞くと俺の横を過ぎて入口へと向かい始める、俺は振り返りそれを視線で追う、すると結衣にゃんはこちらへ戻ってきて再び横をすれ違う
このやり取り、前に告白した時もした、あの時は3回目のすれ違いざまにごめんねと言ってそのまま屋上を出て行った、俺は取り残されて1人寂しく教室に戻ったのが前回
今が3回目のすれ違い、そこから発される言葉は
「ご・・・ごほっごほっ」
少しむせただけだった、せき込むだけかよとツッコミたかったが体調的にそうも言ってられないのだろう
結衣にゃんはそっとドアノブに手をかけた、そのままドアを開ける
今回は行けると心のどこかで確信してたのに、俺は悔しくて膝をついた
「ね、寒いから中入ろう」
そう言いながら小さく手招きしてた、俺は結衣にゃんに続いて、屋上を後にした
屋上から室内に戻ったときに不意に抱き着いてきた
「その優しさで私を暖めてくれたんだよね、だから一生暖め続けてください、今日からは私の彼氏として・・・ねっ」
その、ねっを可愛く言うなよ、抱きしめたくなってしまう、すでに抱きしめてるんだけど、すげぇ嬉しかった、そして俺たちは恋人同士になった、早速放課後デートだ
これが最初で最後の放課後デート、俺たちのデートは街へ行き、雑貨とか見て、映画見て、喫茶店で話す、普通すぎるデートだ、新鮮な気持ちというより安心感の方が強い
「楽しかったな、またデートしような」
「そうね、今度は海とかどう?私の水着姿とか見てみたいでしょ」
「スク水なら中学の時、心行くまで堪能したぞ」
「変なこというなよっ」そう言って頭を叩かれた、それが嬉しかったりする
そんな帰り道で家まで送る途中にキミは呟いた
「久々に寄ってくかい?」
結衣にゃんからの提案だった、俺は断る理由がなくもちろんそのまま寄ってくことにした
ジュースもってくから先にいっててと言われ、先に結衣にゃんの部屋に行った
「あ、智也おかえり」
「あれ、遥、どうした?掃除でもしてたのか」
なぜか遥がいた、服が汚れてるとこ見ると掃除でもしていたのだろうと思った
「まぁね、それよりデート楽しかった?」
「もちろん、なんか懐かしいって言った方があってるかもしれないけどな」
「お待たせ、遥ちゃん掃除ありがとね、ほんと助かった」
遥は笑顔で返事する、まるでまったく大変じゃなかったよとでも言う雰囲気で、実際は約3年も掃除してないので大変だったと思う、ほんと遥っていいやつだなと感心する
そしてみんなで時間が許す限りおしゃべりをして、ジュースを飲んだ
「あ、私そろそろ病院戻らなきゃ、そろそろ時間が」
その一言で今日の集まりはおひらきとなる
俺は最後は病院まで送って行くことになった、結衣にゃんともっと歩きたい、もっと話したいそんな気分だった
遥が帰り、再び結衣にゃんと歩く、その手の温もりを確かに俺は一歩ずつ踏み出した
夜になると疲れたのか言葉はなくただ寄り添い歩いてる、それだけだった、鼻をくすぐる結衣にゃんの匂い、抱きしめたい、キスしたいなどの気持ちが溢れてきた、恋人同士になるとこんなにも愛おしくなるのかな
「まだちょっとだけ時間ある?」
「まぁ時間なら少しくらい過ぎても大丈夫だけど」
俺はそれを聞いて、病院までの進路の途中にある公園に寄った、夜の公園はなんか新鮮だ、遊具で遊ぶ子供たちや見守る奥さん達はもちろんいない、すごく静かで噴水があり、街灯で照らされている、恋人たちの定番でもあるスポットだ、俺は噴水の前まで歩きストレートに言った
「結衣にゃんのことをもっと抱きしめたい」
俺にとってはこの言葉は嘘ではないが建前だ
「嬉しいな、そういう事言ってくれると恋人って感じするね」
「もっとずっと一緒にいたい、このまま病院へ戻らせたくない、明日からまた俺の家とか結衣にゃんの部屋で前みたいに楽しく過ごしたい、明日から休みなんだし、なにより恋人になったんだし、もっとたくさんデートしたい」
「そんなこと、言わないでよ、私だって、大好きな人と一緒にいたいよ」
俺はなんて酷いことを言ってしまったのだろうか、でもぶつけるなら今しかない、きっと間違ってはいないと思う
「これくらいしか出来ないけどごめんね」
俺は結衣にゃんを抱きしめてキスをした、抱き寄せたときの匂い、感触そして想い
唇にそっと触れた時の柔らかさ、切なさ、そして想い
「許す、これで私、明日からも頑張れるよ、それともう1つ聞いてほしい」
俺は静かにその言葉を待った、そして放たれる衝撃的な言葉
「私もう、余命過ぎたんだ、だから今もこうして生きていられるのが不思議なくらいなの、だから最後の1秒は一緒にいようね」
結衣にゃんはもう暗い顔をしてなかった、すごくいい笑みで俺を見つめていた
俺はそれに答えるようにもう1度キスをした、そして耳元で囁く
「あぁ、最後まで一緒にな、明日もいくから」
約束っと言って結衣にゃんが小指を差し出す、その指は細くて冷たくて、でも絡ませると確かな繋がりを感じた、そしてそのまま歩き出す、俺たちの今日のゴールへと、永遠に続いてほしいこの道も歩けば終わりが来る、終わらない出来事なんてないんだ
「智也っありがとう、またね、本当にありがと」
俺は「おうっ」と元気よく返事すると手を振って、1人で来た道を戻った
それから次の日、俺は約束通りに病院へと来た、時刻はお昼すぎたくらいだ、結衣にゃんは眠っていた
ただ起きるのかなと不安で、そのままベッドのそばで寝顔を見つめた、次にキミが目を覚めたのは夕方だった、俺は何時間かずっとキミを見つめていた、そして起きたからおはようと言った
「おはよう、ほんとに来てくれたんだね、嬉しい」
「約束だからなっ」
そしてご飯を食べさせてあげたり、昨日の話しで盛り上がった
「私本当に楽しみにしてるんだよ、海」
「あぁ、絶対行こうな」
目を覚まして、話が出来たことは嬉しかった、でもこの体調じゃ無理なのはわかっていた、一緒に泳いだり走り回るのは無理なんだと、もう一緒に居るくらいしか出来ないんだと、手を握る時にものすごい儚さを感じる、すごく力がなくて折れてしまいそうな感じだ、その感じがとてもつらかった
そんなこと考えている時間はあっという間で、すぐに時間が来てしまう
「じゃあな」そう言って病室を出て、俺は1人で帰った
-キミといた 触れると涙 この部屋で キミがいたから ここにいるんだ-




