第3章 君への贈り物
- おめでとう 今日は君の ための日だ -
ぱぁん、激しい音と共に紙テープと火薬の匂いが雪菜に降りかかった
「えっ、嘘?えっ?」
「誕生日、おめでとう、雪菜」
俺は黒の長いウィッグと白い布を脱ぐと雪菜に話しかけた
雪菜はいまだに信じられないという顔で床に座ってる
「ごめん、サプライズだ、ほら、晩ご飯も用意したし」
テーブルの上にはそうめんが用意されている
ただ茹でただけだが一応、俺の手作りだ、遥の力を借りずに作った
「うぅ、智也さん、立てないです」
どうやら相当、ビックリしたようで、本気で腰を抜かしてしまったようだ
俺は手を差し伸べると、優しく掴まれた
雪菜の手は柔らかい、ひんやりしてて、触り心地がいい
そしてなんとか雪菜を立たせる
「・・・怖かった、すごく、うわーん」
その直後、俺にしがみつき泣き出した
上手く立てずに俺にしがみついてるためか腕に力がかかる
この時、少しやりすぎたなと反省した
だが後悔はしてない、準備は手が込んでいて、大変だった
それに可愛い女の子に泣きつかれる、めったにないことなので男として嬉しかったりする
本番は楽しかった、それでいいじゃんとか言うと雪菜は怒りそうなので秘密にしておく
「どうやったのよ、貞美が瞬間移動とか」
「片方は俺、もう片方は遥」
「ドアが開かなかったのは?」
「ストッパーを外からはめておいた」
「電気が落ちたのは?」
「ブレーカーを切ったんだ」
「じゃぁじゃぁ・・・」
「ごめんな、ちょっとやりすぎた、怒った?」
「怒れるわけないじゃないですか、智也さんの顔見たら、安心しちゃいましたよ
抱きしめられるだけですごく安心します」
その後もしばらく泣き続けた、その間、優しく頭を撫でてあげた
頭を撫でると、やっぱり懐かしい匂いがする
雪菜はようやく泣き止んだ
「よしよしっいい子だ」
「むー、なんかバカにしてないです?」
「冗談だって、後でさ、プレゼントあげるから俺の部屋来いよな」
タイミングを見て、遥が入ってくる
「おなかすいたし、ご飯食べよう、今日は智也の手作りだよっ」
明るくふるまってくれた
今回もその明るさに助けられる
「お~手作りなんだ・・・ってそうめんかいっ」
そのおかげでツッコまれた、それで少し安心した
とりあえず、いつもの雪菜に戻った気がする
「いただきまーす」
ずるずるずる・・・・
ずるずるずる・・・はぁ
ひたすらにそうめんを啜る
しかしなぜ、無言なのか、一応3人で食事してるんだよな
ひたすらにそうめんを啜る音が響く
「あ、生姜とって」
「はい」
ずるずるずる・・・
ずるずるずる・・・・はぁ
俺たちは無言でそうめんを食べ終えて、テーブルの上を片付けた
ものすごく虚しいほどに会話がなかった
「そういえばさ、食べてる途中に言おうと思ったんだけどさ、お誕生日おめでとう雪菜」
「あ、ありがとう、って遥も~、智也さんの手作りそうめんでやりすぎじゃない?」
「あれ?無言で智也の手作りを味わってたんじゃないの?」
「そうだけど、ただのそうめんじゃんか」
俺はこの2人が話してる間にこっそり席を外す
そして、今度はリビングの部分のブレーカーを落とす
「きゃぁ」
「えっ、なに・・・なに?」
パニックになってる2人、遥がいい感じに演技してくれてるおかげで助かる
俺は用意してあったケーキに火をつける
あくまで今日はサプライズのパーティなのでもちろんケーキは用意してある
そしてケーキを持って、再びリビングへ
そうすると遥が歌い出す
「ハッピバースデイテューユー」
「わぁー」
そして歌が歌い終わる
「ねぇろうそく足りる?」
「いや、16本でいいじゃん?」
俺と遥は顔を見合わせて、にやりとする
「どうせならさ、派手にやろうか」
俺と遥は頑張ってケーキにろうそくをさしてゆく
このために100本用意したのだ
100本刺すともう下のケーキがほとんど見えなかった
そして火をつける
「って私を100歳にするなよってか軽く火事だよね」
とか言いながら、100本全部建てた、だいぶ火が強い
途中から火事になってたが頑張った
完全にろうそくの火とは思えない大きさだ
完全に1面全体が火の海となってる
1つ言っておくこと、それは、良い子は危ないので真似しないでね
リアルでやると危険だから気を付けてねってことだ
「どうみても火事だね、ってことで一吹きで消せよ」
そして雪菜が息を吸い込んだ
優しく吹いても消えないのか、徐々に強くしてった
しかし炎の勢いは弱まらない
「頑張れ、もう1回だ、諦めるな」
何度か息をかけるが消えない、100本は強すぎたようだ
なかなか消えないので3人で息を吹いた
そしてようやく火は消えた、そして真っ暗になる
「おめでとう」
そして再び散らからないクラッカーを放つ
紙テープが見えずに音だけが聞こえた
「あ、智也電気」
そう言われ、俺はブレーカーをONにして部屋にもどる
電気がしっかりついて安心した
「もう、ケーキの上、ロウまみれじゃない」
ケーキの上にはカラフルなロウの色、それに紙テープが混ざりあってる
少し綺麗かなと思った、しかしこれでは食べれない
「やぁあれだね、これじゃ100歳まで誕生日祝えないね」
そういう事ではないと自分の心の中で突っ込みを入れる
「よし、これで自由研究かけるね」
いや、それも違うぞ
「って話してる場合じゃなくて、ケーキ食べれないじゃないですか」
そう言って怒る雪菜、こうなることはなんとなく知ってた
「それ元から食べれないやつだよ、ってことで本物のケーキはこちらです」
そう言って、遥が冷蔵庫からケーキを出してくる
もちろんろうそくはない、その代わりにプレートチョコが乗っている
「よかったな雪菜、ようやく普通のケーキが食べれるぞ」
そう言って雪菜の頭の上に手を置く
「ほんと、安心しましたよ、もぉなんなんですか」
そう言いながら笑顔で俺に寄りかかってくる
嬉しそうな笑顔が見れてよかったと思いながら俺たちはケーキを食べた
「こんな祝い方してもらったの初めてです、パーティとかとは違っていいですね」
まぁ初めてだろう、俺たちもやったのは初めてだ
相手を信頼してないと、出来ないドッキリ、今回は大成功に終わった
そしてケーキを食べて、俺は後片付けをしている
今回は散らかったりするものがほとんどないから、片付けは楽だ
雪菜は遥に連れてかれ、遥の部屋に行った
ほんとに純粋な子でよかったな、やっぱりあいつに似てる
ただ、俺の中であいつが薄れて、雪菜を好きになり始めてるのも事実だった
俺は片付けが終わると部屋に帰って休む
今日の仕掛けはかなり成功だと思う
ただろうそくは100本は多すぎたな
次は70本くらいにしとこうかな
クラッカーは定番で放つのが楽しかったから、また使いたいな
そんな感じで反省をしていた
そしてコンコンとドアをノックする音が聞こえた
「智也さん、今日はそろそろ帰りますね、ありがとうございました」
俺はふと時計を見ると10時を過ぎていた
ポケットにプレゼントを入れて、とっさに部屋を出る
ちょうど靴を履いてるタイミングで手を掴む
「待てよ、送ってくよ」
この瞬間に掴むとなんかかっこいい気がする
ただ、相手はバランスを崩しそうというわけでもなかった
「ありがとうございます、えへへ、待ってました」
相変わらずちゃっかりしてるな
そして俺たちは外へ出た
歩く、夜の道を、普段歩きなれた明るい道ではない
それがなんか新鮮だ、夜に女の子と2人で歩く
それだけでもレアだ、ふと空を見上げる
夜空には星がたくさん、手は決して届かない距離
あんなにたくさんあるのにどれひとつとして手は届かない距離
でも、あの三日月なら、がんばれば手が届く距離
なぜ人は星に願うのだろうか、星に願う時、それはそんなに遠い願いなのか
月なら頑張れば届く、だから俺は月に願う
雪菜がいる前で願うのは少し違う気もするが、3年前の日のことを少し思い出した
3年前、君と歩いたこの夜道を、もう一度歩きたい
あの日の声、あの日の手の冷たさ、あの日の君との距離が懐かしい
もし生きているなら、どこかで会いたい、それが俺の願い
雪菜と繋いだ手を見て、思い出す、あの日の思い
「ねぇ智也さん、こうしてると恋人っぽく見えますかね?」
それは2度目の問いだった
しかし2度目では重みが違った
だから俺は何も言えなかった、それが答えだった
「・・・・・・」
「そう、ですか」
雪菜の返事には力がなかった
そして再び黙って歩く、雪菜の家まで10分くらいで行けるのでそう遠くはない距離だ
いつの間にかたどり着く、雪菜の家
「あ、そういえばプレゼントって?」
「えっと、目を閉じて」
そう言われて、素直に目を閉じる雪菜
「もしかしてもしかします?」
目を閉じたまま嬉しそうに聞く雪菜
俺はこっそりとペンダントを付けた
そして雪菜を抱き寄せる、すっかりこの感覚が好きになってしまっている
「うん、もしかするかもな」
そう言って雪菜の唇に、触れた
指先で、触れた、さすがに出来なかった
「むー、智也さんふざけてます」
そういうと雪菜は少しむくれる
「冗談だ、それよりそれ」
俺は雪菜の胸元を指した
そこには綺麗な青いイルカのペンダントがある
「何が欲しいか分からなかったから、お前のイメージで選んだ」
「へ?私のイメージ?」
「可愛い、かなり賢い、元気がいい、明るい、そして・・・」
「そして?・・・」
そこであえて間を開けてみる
そうすることで、次の一言に、更に気持ちがこもる
「すげぇ可愛い」
そう言うとすごい照れる
自分にもかなり効果的だった
「に、2回も言わないでくださいよ、照れるじゃないですか」
雪菜は嬉しそうにはにかんだ
その笑顔が見れて俺は満足した
雪菜のためにいろいろしてよかったそう思えた
- 君のため 水泡のように 勇気をね 笑顔を1つ この手離さず -




