01.02 第三話『現状と今後の為の兵器技術』
寛和が清掃作業とゴミ集めの仕事について一週間がたった。寛和は夜勤の仕事についている。統合失調症の治療については東京大学病院を相談窓口で紹介されて、前と同じ薬剤を投薬されている。どうもほかの病院はすでにいっぱいらしく、普通だったら回されないはずの東京大学病院の精神内科に回されている。
東京大学病院では予想通り大病院らしく、予約を入れていても三時間待たされることになった。
大学病院ではインターンの関口という医師が担当をしてくれていた。
彼は、診察をしつつも、忙しすぎるとぼやいていた。正直、精神病患者の目の前でぼやいていいのかなと寛和は思わなくはない。しかし、病院内がかなり忙しく感じられるのも事実だった。
彼の話によるとどうやら新潟や富山を脱出してきた医師たちが東京大学の医局の下におかれた戦時治療センターにまわされていて、そちらが主に戦傷を負った自衛隊員や米軍兵の治療にあたっているそうだった。
一方で、もとからの東京大学の医師は民間人の治療にまわされているらしく、そのため関東の地域からあつめられたインターンが大々的に避難民の診察や治療にまわされているそうだ。
関口医師も東京大学のインターンではなく九州大学のインターンなのだそうだ。九州はいまかなり酷い戦況になっているらしく、自衛隊の熊本方面隊と人民解放軍が血を血で洗う大激戦を繰り広げているとのことだった。
新潟方面からの電撃侵攻で東京をおとすのが人民解放軍の当初の作戦だったようだが、新潟方面は群馬の自衛隊部隊と撤退してきた新潟方面隊がかなり善戦し、その侵攻を阻止した。
また、太平洋からの潜水艦によるミサイル攻撃と同時に、貨物船に偽装した特殊部隊による東京占領作戦もあった。これは水際で海上自衛隊と海上保安庁が臨検などを行うことで事前に阻止することに成功している。飛来したミサイルのほうは在日米軍が迎撃ミサイルPAC-3で処理をおこなったそうだ。
結果的に人民解放軍による日本の電撃的制圧は失敗し、占領地の拡大に作戦を切り替え、九州と沖縄方面を占領しようと人民解放軍は動いているようだった。
二日前にニュースでみた九州の対馬海峡に大挙して現れた、人民解放軍の海軍船舶の数の多さに唖然としたものだ。あの物量を押しとどめている熊本方面隊の自衛隊や在日米軍の粘り強さには驚くかぎりである。
一方で日本の海上自衛隊は散発的にだが敵艦艇を撃沈したり、ミサイルの迎撃をおこなっているようだが、こちらは情報があまり出てきてはいない。
新鋭イージス護衛艦の金剛が沈められたのが影響している可能性が高い。もともと艦船の数がすくないもの影響しているのだろう。
そのせいか最近どうも千葉の鹿島や神奈川の横須賀あたりで、造船ドックの新築が相次いでいるとニュースが出ていた。太平洋戦争時にはあった造船ドックも戦後、船舶不況でかなりが埋め立てられたが、ここへいきて船舶不足が目立ち、政府も本腰を入れはじめたということだろう。
東京大学病院の帰り、電車に揺られながら寛和は今後の対応を考えていた。
(プラズマレールキャノンの実用化を図らせる必要があるだろうな。あれさえあれば少なくてもテラフラクトの連中の戦闘宇宙船を撃墜できるようになる。中国を解体しても、問題の完全解決にはならない。その先が問題だ。)
寛和が考えているプラズマレールキャノンというのは、まず電磁場で封じられた場所にプラズマをその背後からの高収束レーザーで弾頭物質を励起させて発生させる。さらにレーザーマニュピュレーター以上の収束レーザーで圧縮したまま目標地点までレールガンで打ち出し、目標地点で収束を解除して爆発させるか、逆にレーザーを用いて圧縮をかけて核融合をおこさせて大爆発をひきおこさせる兵器である。
わざわざプラズマにする理由だが、基本的にレールガンは加速を加える際に一定以上はやくすると弾丸物質が励起されてプラズマ気体化して標的にぶつかる前に蒸発してしまう。
すると光の速度をこえて移動できるテラフラクトの戦闘宇宙船にはほぼ命中させれない。
これでは連中が暴走をおこしたときに反撃が行えない。
そのうえ、テラフラクトの連中の宇宙船は表面の相対速度を光以上に高速化することで外部からの相互作用の干渉性を失わせた障壁をはっている。これは移動にそれを利用しているから副次的なものでもあるのだが、物理弾道弾やレーザーでは表面をすべるように背後にそらされてしまうだけだ。
その点プラズマレールキャノンではそれ自体が力場を発生させているプラズマの塊を打ち出すので、プラズマを収束させるレーザーの出力さえ上げればこの障壁を突破できる。そのうえで核融合爆発を発生させればいかな障壁とて破壊できるわけだ。
(一応、概要だけは二十年も前に掲示板で紹介しておいたけど、いまどのあたりまで研究がすすんでいるんだか・・・・・。日本では・・・・アメリカに期待かな・・・。)