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00.12 第十三話『アナザーエルとの交渉』

久しぶりの投稿です。周りの環境を少しづつ書いていこうかと思っています。

 目の前には数名の男性が席に座っていた。その向こう側のシリコンナノチューブ樹脂の透明な窓というには広すぎるスクリーンのような窓を介して、多くの宇宙船、いや、武装しているから宇宙艦というべきか、それが行きかう姿が見えていた。


 手前のほうから声がした。

「最低限、アルマター機関の開発を行わなければ意味がない。それすら許可しないのなら君たちの展望は絶望しかないですね。」


 その声に窓の前の席に座った男性たちが眉をしかめた。

「機関といっても色々あるわけで・・・・・。」


 手間にに座っている男性はため息をつきたくなった。


 アルマター機関というのはエネルギー変換システムの中でももっとも基本的なものとなり、恒星間宇宙航行において最低限必要なシステムである。むろんこれより上のエネルギーシステムは数多あるわけだが、このレベルの文明を構築しなければ恒常的に宇宙に出るのは難しいと言われている。


 むろん、男性も相手方がスター・ストリーム・ユニオンでいうところの後期発生生物の進化の結果生まれた人類の系譜、俗に外来種と呼ばれる人類であるから、先進銀河国家のスター・ストリーム・ユニオンの常識が通用しないことはよくわかっている。


 彼らがわざわざこの軍事施設を自分に見せたのも、一種の威圧行為のためであることも理解している。


 しかし、同時に彼ら自身、その将来性に暗雲が立ち込めている。遺伝的な問題により出生率の低下が著しく、このままでは社会が百年もしないうちに維持できなくなることが予見されている。



 彼らはその問題について二億年以上かけて解決を探していたが、今現在、ここまでひっ窮していても解決手段を得ていない。

 解決のためにかつてスター・ストリーム・ユニオンの領有宇宙域であったこの太陽系の過去の遺跡や施設の探索を行うと同時に、スター・ストリーム・ユニオンの人類因子をもつ現地の人間の遺伝子を改変することで自分たちの遺伝子に組み込む実験を長年行ってきた。

 だが、その成果は惨憺たるものだった。



 結局彼らは文明が条件がそろわないと発生しないことを理解していない。彼らは政治崩壊し、生物が死滅した宇宙国家のあとに偶発的に発生した生物の進化により発生している。だが、その実、その環境や文明にかんする知識は過去の文明をもった人類の史跡を得ることで進化してきた。

 要するに自分では維持発展できてきていない。それにもかかわらず、その信条として、『過酷な条件であればあるほど優れた文明が育つ』という科学的にはあり得ないものをよりどころにしている。

 宇宙社会では『文明は温室でしか発生せず、また育たない』というのは常識である。つまるところ矛盾するその思考により彼らは文明を途中までは育てることができてしまったことに不幸がある。



 彼らが満を持して、自分たちの因子を組み込んで作り上げた次世代人類としてロールアウトさせたものがいま我々がすむ地球を危機に陥れようとしている。

 すでにスター・ストリーム・ユニオンの演算ではなく、彼らアザゼア・ルノーの予言システムでも結果が出ている。

 そしてその現実をなかなか受け入れようとはしていない。



 男性が呼び出されたのもスター・ストリーム・ユニオンの特使として解決手段を相談されたからだが、彼らの上司はともかく、技術士官のかれらにとってもなかなか受け入れられないようだ。

 自分たちがスター・ストリーム・ユニオンより劣っているという現実を受け入れない。



 保守的なその思考パターンは彼ら自身の未来を閉ざす原因となっているのに受け入れない。


 男性もいい加減イライラきているのも事実だ。敬語で、それも謙譲語を使う気にはならない。

「色々あると言いましたけど、宇宙に出るための最低限度のそちらでいう一フェムトユース単位くらいの出力のものを開発させろということです。」



 男性のその言葉に周りがざわざわする。

「・・・・・一フェムトだと!!」

「馬鹿な、そんなものを許可すれば我々の優位性が担保できない。」


 彼らは地上にすむ人間を見下している。そして自分たちは彼らにとっての神だと臆面もなく言い放つ。

 厳密なことをいえばスター・ストリーム・ユニオンこそ彼らにとっても地上にとっても神なのだが、そんなことを言うような非現実的な思考は男性も持ち合わせていない。



 どちらにせよ現場を動かす連中がこれではお話にならない。テクノラートが腐ってるとどうしようもない実例の一つだ。


 切り口を変えるべきと男性は思った。


「それならセラフィックウィングの使用者の束縛を解放するというのはどうですか?」


 セラフィックウィングとは過去の文明の遺物を使用できる能力をもつ人類の総称であり、地上で一般的な熾天使セラフィムの翼の意味ではない。

 地球は過去のスター・ストリーム・ユニオンの文明のあった惑星あるため、その人類には少なからずその文明の利器を起動あるいは使用できるIDとなる遺伝子のデオキシリボ核酸の配列を保持している。

 基本的に空間に展開された情報システムである空間情報システムや亜空間情報システムを使用したり、それの補助をうけているのが現在の地上の人類である。

 これを意識的に行使できる存在をセラフィムと呼んでいるのである。

 星間国家アナザーエルは宗教でこれをごまかしているのである。



 問題はそれにとどまらない。遺伝子研究には莫大なお金がかかる。その問題を解決するのに、地上の人間を観察したり、動かしたりする権利を他の星間国家の放送局に与えることで莫大な放送手数料をアナザーエルは得ている。

 だがいくらお金があっても、基本理念が間違っていれば成功するものも成功しない。



 地上の人間は空間情報システムの一部を利用した特殊な放送システムと、透明な撮影器具などを駆使して観察され、ほかの星間国家の人類に娯楽として提供されている。

 むろんこの放送に関して、実験そのものを放送局が阻害したこともあり、微妙にアナザーエルと放送局との間には溝があったりする。

 放送局側にしてみればどんな形であれ放送が継続できることこそ重要なのであるいみ当然の結果ではある。

 そして話題性があればなおいいのが放送局。

 地上の資本の一部に出資すらしてその放送局は戦争をプロデュースすることすらしている。

 一部のアメリカ合衆国の軍事資本がこの援助をうけているが、実はライバル関係にあるロシア連邦も同様であったりする。

 アナザーエル自身は、次世代人類として期待した華北人の因子を支援する目的で中華人民共和国に支援を行っている。

 中華人民共和国の思想がアナザーエルと同じなのはそれに由来していることが大きい。



 次のイベントして第三次世界大戦の準備に放送局は余念がないわけだ。そこにアナザーエルの研究所がのっかり、中華人民共和国による世界征服の陰謀と題した一大キャンペーンをはっている。



 普通にアメリカ合衆国と戦争すれば中華人民共和国に勝ち目はない。しかし、そこは支援があるのでアメリカ合衆国内部のロビストを抑えたり、内部に間諜を送り込んだりしている。

 それだけではなくカンボジアやネパールといった属国化させた国家をいくつもつくりだしているである。

 そしてロシア連邦も中華人民共和国側として第三次世界大戦に参戦させるという計画であり、それとどうじにヨーロッパはEU分裂で手出しできないように内部工作が行われている。

 簡単に戦争が決着すると話題性がないのでそこはもう念入りにバランス調整が行われている。



 ちなみに日本は中華人民共和国に占領されるというシナリオで、アメリカ合衆国に逃れた男性が日本再独立と復興を目指して戦うという計画書を作られている。

 むしろこれが放送局側のメインシナリオだろう。


 困難に打ち勝っていく悲劇の英雄譚を演出するつもりのようだ。




 家族や大切な人を失う悲しみなどを感情をスパイスにしようという、ある意味かなりの非人道的なプログラムである。

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