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01.08 第九話『地元』

躍動的な展開をかきたいなぁと思うこの頃です。

 寛和にとって自分の意見を峰岸に話すことはリスクが大きかった。もし森家の本家あたりに見つかればなんらかのやり方での封殺を行ってくるからだ。


 連中に精神病患者にされている現在だと、妄言を吐いたとして、精神病院に収容される可能性が一番高い。精神病院の多くは資金繰りに苦労しているから、金さえ払ってもらえればいくらでも収容しますよというところが多いからだ。


 しかし、だからといって誰にも話さなければそれはそれで意味はない。今、寛和にとって、世界を救うためには自分の組織が必要である。

 そのためには理解者を一人でもいいから確保する必要がある。



 富山にいたころは就職先で、世間話でこの手の話をしたが、上司の中に森家とつながっている人物がいて、栄転にみせかけて、辻家の信者が運営する外部の会社に飛ばされそうになったこともあった。


 困ったことにその上司は会社内でそれなりの地位にいて、いろいろやりにくかったことを覚えている。上司は森家の市議会議員とつながりがあったからだ。




 開戦前の地元である高岡市は北陸本線の南側と北側の商店主どうしの派閥があって対立が顕著だった。


 高岡駅の北側が昔からの商店街だったが、いろいろ対策をしたもののシャッタ街になりつつあり、一方の南側は北陸新幹線の新高岡駅との間に位置して、新たな商店がつぎつぎ建っていた。


 一応一時期まで高岡市の方針では人口増大を考えて、南部の田園地区を都市化する計画を立てていた。北側商店街を再開発するにはそれより何倍ものお金がかかるからだ。


 ところがある時期から人口減少が堅調になったからと方針転換をした。それが新高岡駅周辺の開発の遅れを生み、人口減少にさらに拍車をかける結果となった。


 商店街の店主会の意向はよくわかるが、新幹線駅の誘致を拒否したのはかれらで、そのせいで南部に高岡駅とは別に新高岡駅が作られることになったのだ。

 

 この対立には森家が深くかかわっており、森家の利権集めの結果ともいえるものだ。


 どうにも富田家が作った高岡の街を森家は嫌厭しており、うまくいかないようになるようにいろいろ小細工を弄していたきらいがある。


 市全体の事を事を考えるなら、まず高岡駅と新高岡駅の間と新高岡駅周辺の開発を優先して税収を上げる方向にもっていき、そのうえでその税収で北側商店街を再開発するのがまっとうな順番である。


 しかし、森家に作られた南北の溝は大きく、なかなか開発計画はすすまない状況に置かれていた。商店街をつぶす気かという意見はわかる。実際、集客力がおちて閑古鳥が鳴く状況に高岡駅前はなっていた。これをどうにかするには昭和初期中期の古い町屋の商店を取り壊して、新しい商店を立て直す必要があるし、それにともない街区の整理も必要になる。


 これは莫大な費用だけでなく痛みが伴う。しかし、そこに踏み込まなければ復興はないのである。


 専門店街として生き残るには、若年層が集まるようなファッショナブルな商店街を作り出す必要がある。あるいは商店街として生き残るのを放棄して、住宅用地として再開発するかの二択になるだろう。


 ファッショナブルな商店街にするというなら、それこそ街区全体を一つのショッピングモールにしてしまうくらいの思い切りが必要である。売られる商品も北陸新幹線の開通で、東京の商品が手に入りやすい環境になっているから、それに追随したラインナップも必要である。それだけでなくオリジナル商品も必要なる。

 薄暗い裏通りがある商店街のままでは生き残れないのは確実である。


 だがそれを邪魔しているのが森家と辻家なのである。


 そして開戦で中華人民共和国に占領されたことから再開発は完全に絶望となったわけだ。



 職場の上司の一人は高岡商人はがめつすぎるとよく漏らしていた。その商人の代表者である富田の家の人間としてはなんともいえない感触をえていた。


 本来の高岡は新進気鋭の合理主義者の商人があつまる街だった。だから利益をえるのに必要なことはなんだってした。しかし、やってはいけない一線だけはまもっていた。それが富田家の取りつぶしのあとに崩されたのは間違いない。

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