謎の事件、ささやかな悩み
お久しぶりです!!!
相変わらずな文ですがどうぞ(・±・)ゞ
とある日の、村の役場にて。
「獣が殺されている?」
「鋭い刃物か何かで、こう…スパンっと殺られてるんですよ。」
「熊ではないのかね。」
「あれは爪のあとではなかった…おそらく人間の仕業でしょうな───」
こう話をしていたのは、村長と狩りを生業としている男。
そしてそんな会話を、森の近くで採れた木の実を役場に売りに来ていた来ていたノウは耳にした。その話をしていた二人からは距離があるのだが、ノウは耳がいいので聞こえていた。
「おいおいちゃんと着いてこいよ…ん?どうしたノウ。」
ノウほど聴力が良くはないフゥエンが横にやって来て尋ねた。売るつもりの木の実が入っている籠を抱えたままだ。
奥の受付で引き換えるつもりだったのにノウが着いてこなかったので、そのまま引き返してきたらしい。
「いや、なんか気になる話をしてたから。」
「どんな話だ?」
「この間の、俺たちが感じた森の事と関係してるかもしれない話。」
自分達の方を見ていることに気がついたのか、村長と男がノウたちの方へと顔を向けてこちらへ歩いてきた。
「やぁ、こんにちは。」
「こんにちは。あの、さっきの話なんですけど…」
ノウは村長に尋ねた。
「おや?聞こえていたのかね。最近、獣が何者かに斬殺されているらしい。」
「俺たちも前に森から帰る途中、奇妙な気配を感じたんです。」
それを聞いた村長と男は、少し険しい顔をして小さく唸る。そして村長がその表情をさらに険しくしたまま、口を開いた。
「君たちには先に忠告しておくが、あまり森には近づかぬ方がいい。行くとしても、単独での行動と奥まで行くことは止めておくように。」
どうやら、自分達が思っていたよりもとても大事なことらしい。
ノウとフゥエンは強く頷き、木の実を売ったあと役場を出て家へと帰りついてから、家族全員にこの事を伝えた。
次の日から役場の掲示板に『深く森へ行かぬように!行くときは個人では行かぬようにすること!!』という張り出しが出ていて、村の住人全員が警戒しながら日々を過ごすこととなっていた。
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もうすぐレイメイの誕生日がやってくる。
ノウが出会ったときよりも女性らしさが出てきはじめた彼女に、ノウやフゥエンは少し戸惑いつつもいつものように楽しく時を過ごしていた。
「なぁフゥエン…。女の子って、誕生日に何をあげれば喜ぶんだろうな。」
二人きりでフゥエンの家の庭の草むしりをしている最中、ノウがそんなことをポツリ言い、セミの鳴き声とサラサラと葉の擦れる音くらいしかしていなかった、静かな空気を唐突に破った。
「うおっ、なんだよいきなり!…そんなこと聞かれても、俺にはサッパリだ。」
「だと思ったよ」
「んじゃ何で聞いたんだよ!?」
「一応。」
今日も楽しくフゥエンを弄るノウである。
「フゥエン去年は何あげたんだっけ?俺何もあげなかったけど。」
「うーん…たまたま森で美味しそうなキノコ見つけたんだ。たしかそれをあげた。」
「キノコかよ。」
「後から分かったんだけど、実は腹痛キノコだったんだけどな!」
アハハとノウに笑いかけるフゥエンだったが、ノウはそんな彼を生暖かい視線で見つめる。ジリジリと太陽の照りつけるなか、いろんな意味の汗が地面へと垂れていくのだった。
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「はぁ…森か。」
そう呟きながら、ノウは森の近くをぶらぶらと一人で歩いていた。フゥエンは熱中症で倒れたので家に寝かせてきた。今のうちにレイメイのプレゼントをこっそりと見つけてしまおう、という策略である。
ノウはピタリと歩みを止める。そして森に向き合う形で立ち止まった。
「少しだけなら、大丈夫だよな…?」
ほんの、小さな出来心だった。
「夕方までには戻れば、心配されないだろうし。」
そう言って、彼は一人で森へと入っていく。数メートル歩いたところで何も異変がないことに警戒心が緩んだのか、進む速さは森に入るにつれて徐々に速くなっていった。
ノウはキョロキョロと辺りを見回しながら、何か面白そうなもの、珍しいものがないか探すのに必死だ。
その後ろから、何者かが近づいてきているのにも気づかずに。