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番外編 いろんなところを大掃除

更新が遅くて大変申し訳ありませんでした。

リクエスト番外編です。

時節ネタ番外編のため、本編の続きではありませんが、微妙にリンクしております。

この話に出てくる個人名などは架空のものです。よろしくお願いいたします。

 


 ただ今、おじさんちの神社で、おおそうじのおてつだい中です。



 赤ちゃん……おとうとが急にねつを出したので、びょういんへお母さんといっしょに行こうとしたら、インフルエンザが流行中だから、かえってうつっちゃうかもしれない。だから、ついてきちゃだめって言われたの。

 わたしはもう冬休みだけど、今日は平日だからお父さんは会社がある。

「おるす番、一人でもできるよ、平気だよ」

 って言ったけど、お母さんはよくてもお父さんは心配みたい。じゃあ、おじさんところへ行っておてつだいするって言ったら、それも気に入らないみたいで、ふくざつそうなかおをしてた。


「年末年始は神社の掻き入れ時で忙しいのよ。はっきり言って猫の手も借りたいくらいなの。千鶴が行ってくれたらきっと喜んでくれると思うわよ」

 お父さんがなにか言うまえに、お母さんがそうにっこりわらったので、わたしの行き先はけってい。

 31日におおはらいっていう一年間のケガレを落とす行事っていうのをやるので、それまでに神社の中をぜーんぶおそうじするんだって。あと、しめなわをとりかえたり、おそなえをしたり、ほんとうにやることいっぱいみたい。

 そのあとも、はつもうでする人たち向けのじゅんびがあるから、氏子さんたちがとまりがけでおてつだいしてくれるんだって。


「参道から境内全部を掃除するから、毎年氏子さんにも沢山来てもらうの。結構重労働よー。お掃除が無理だったら、お守りにお札を入れる作業とかもあるから、そっちをやってもいいと思うし」


 そんなことを言うお母さんとくらべて、お父さんはわたしの方に向かってしんけんなかおをした。


「いいか?知らない人に付いて行っちゃダメなのは当たり前だけど、氏子さんだって顔を合わせただけで仲がいい人じゃない。そう言う人は顔見知りっていうんだけど、そういう人になにか言われても、やたら付いて行ったりするんじゃないぞ。顔を知っているだけで仲良くないし、仲良くなってもその人は大人の他人だから。身内のおじさんか、和也君の傍に居て一緒に行動すること」

 お父さんのちゅういは、いつもこまかい。

「そんなにしんぱいしなくても、だいじょうぶだよ」

「いや、お前はお母さんに似てるから、その台詞は全く当てになってないからな?」

 これにはお母さんがおこった。


「どういう意味よ?」

「昔は色々やらかしてたろう」

「そ、そうかもしれないけど、私だけの責任みたいに言われるのはちょっと……」


 お父さんが会社に行くじかんがおそくなっちゃうよ、って言ったらあわててじゅんびさいかいしてた。

 お母さんが昔やったことってなんだろう?あとで教えてもらおう。



 お父さんが会社に車で行くついでにお母さんと赤ちゃんはびょういんへ、わたしは神社のちかくまでおくってもらったけど、おとうさんが先にれんらくしていたせいか、かずや君がむかえにくれていた。


 やっぱり手がたりないみたいで、

「おてつだいする」

 って言ったら、おじさんにすごくよろこばれた。役に立てればいいけど、あんまりむずかしいことはできないよ?



 あっちこっちでいろんな人がおそうじしてたんだけど、おねがいされたのは、いちばん大きなたてもの……ほんでんの近くにある、水神さまといっしょにまつられている神さまのちっちゃなお(やしろ)のおそうじだった。


「なんの神さまなの?」

 っておじさんにきいたら、むかしの人だって。


清水五郎左衛門直光(しみずごろうざえもんなおみつ)っていう人が、幕府……っても分からんか。えーっと、当時の一番偉い人の意向に逆らって殺されちゃったんだが、その後、富士山が噴火してなぁ。宝永山ってほら、富士山の横にぽこっと飛び出しているのあるだろ。あそこが噴火した時が、宝永って年号だったから宝永山って名前が付いたんだぞ」

「おじさん、はなしがそれてる」

「ああ、すまん。……噴火したのがその人の祟りじゃないか?っていうか、原因が良くわかんないからとりあえず祀っとけって事でここに社を建てたのが始まりだな。噴火するわ、火山灰は降るわ、火山性の地震があるわ、昔の人は自然災害の理由を祟りとか(バチ)があたったとかと思ったんだよ」


 そんなことを教えてもらってから、社の中のほこりをおとしてきれいにおそうじした。なかにあったかざりものも、きれいな布でふいて、さいごにお花をそなえておしまい。


「小さいから早くおわったな」

「そうだね」


 そのあとはお守りにお札を入れるのをおてつだいしたり、あきたところでテントをたてるのをおてつだいしたりしたところで、おちばとかのごみをはこんでほしいっておねがいされた。


「ちょっと重いけど、神社の裏手に捨て場所があるから。昔は境内で燃やしたりしていたんだけど、条例が厳しくなってその辺で燃やせなくなっちゃったんだよ」

 おちばもごみだから、本当はきまったすて方をしないといけないんだけど、ここの神社はうら山が森になってる。人も入らないし、そこにすてれば森のえいようになるから、ためにもなるんだって。

 おちばの入ったふくろをもちながら、氏子さんの一人がそうおしえてくれた。かいだんがきついし、おちばも大きなふくろいっぱいだと、かなり重い。かずや君と二人で一ふくろがせいいっぱいだった。


 神社の入り口ちかくまでもどっておちばをふくろにつめていたら、

「君たち、この神社の子?良かったらちょっと教えてほしいんだけど」

 ってこえをかけられた。


 かいだんの下にいたのはお父さんと同じくらいにみえる男の人二人で、一人はジーンズにジャケットをきてる。もう一人もジーンズにTシャツだった。


「なんですか?」

 かずや君がわたしのかわりにきいてくれたんだけど、こえをかけて来たのはあっちからなのに、なかなか言わない。


 かずや君がどんなことを思ったかしらないけど、わたしをかばうみたくまえに立った。

「オレたちいそがしいんで、ききたいことがないなら、もう行きます」

「ちょ、ちょっと待って!神社のことを教えてほしいんだ」

 ジャケットの男の人があわてて引きとめてきた。

「……神社のことの何を?」

 ぐずぐずしないでささとしろ、って言いたげなかずや君。一応ていねいにしゃべってるけど、こわいかおをしている。ちょっとでもヘンなことをしそうだったらにげるつもりなのか、わたしの手をこっそりにぎってきた。


「ここって、お祓いもしてくれるんだよね?」

「してますけど、今は大掃除で忙しいから、31日に大祓いって行事をやるんで、それに参加したらどうですか?」

「それって、どういう行事なの?」

「白い人型に切った紙に、自分の名前を書いて体になすりつけて一年で溜まった穢れを移した後、紙を燃やして清めるんですよ」

「……それ、本当に効果あるのかな?」

 じぶんの家をばかにされたと思ったんだろう、かずや君がよこから見てももっとこわいかおをしたのに、男の人があわてて手をふった。

「ごめんね。……馬鹿にしているんじゃないよ。俺、変なサイトで心霊写真を見ちゃってさ。それ以来、体調は悪いわ周りで変なことは起きるわ、散々な目に遭ったんだ。その写真の撮った場所が水森神社だってようやく分かったんだけど、なかなかここまで来る勇気が出なくて……。一応、お詫びに来たんだけど、写真見たせいでおかしなことになったんだから、実際に来たらもっとひどい目に遭うかもしれないって怖くなってさ。足も動かなくなっちゃったんだよ」

 だんだん男の人のこえが小さくなる。 

 えーっと、こういうの何て言うんだっけ?


「あ、おもいだした。じごうじとく?」

 わたしがぽんと手をたたくと、がっくりと男の人がうなだれた。もう一人の男の人は、ただ黙ってそれを見ている。

「……そうなんだけどさー。藁をも掴む思いで来た訳よ。……藁をも掴むって分かる?」


「──そう思うのならば、その様な格好(ナリ)で来るのがそもそもの間違いだ」

 後ろから聞いたことのない声がした。ふりかえると、かいだんのとちゅうに男の人がいた。氏子さんたちはさむえとかはんてんを着ている人が多かったけど、この人はちがう。おじさんと同じ黒いはかまにびゃくえのかっこうをしてる。顔は……とおくてよく見えなかったけど、知らない人みたい。


「謝罪というのは最低でも、身ぎれいにしてから臨むものだろう。髭は伸びてる、髪はくしゃくしゃ、服装は……それ以上上等な物はないのかもしれないが、ちゃんと洗濯してあるものを着てくる。そうでなかったら、余計に失礼だとは思わないか?」

「……ああ、そうか、そう……ですね。だから、神社の境内に入れなかったのか……?」


 はじめの方はすごくなっとくしたみたいに、こうはんはふしぎそうにつぶやいたので、わたしが男の人のとなりをゆびさした。

「え?その人が、手をひっぱってるからじゃないの?」

 ぜんぜんしゃべんないけど、さっきからずっとジャケットの男の人の手を、もう一人の男の人が引っぱってる。それいじょう、ぜったいすすませないみたいに、がっちりにぎってるんじゃ、すすめないよね?

 わたしがそう言ったら、男の人はなんだか一気にかお色がわるくなった。


「────え?」


 手をふりはらうようにしても、男の人の手ははずれない。あれ、あんなにしっかりつないでるのに、わかんないの?


「身綺麗にして来たらここに入れるようにはなるだろう。それ(・・)は、境内には入れない」




 ジャケットの男の人は、真っ青なかおをしたままはしって行っちゃった。ものすごくあわててたけど、「精進潔斎して来ます!」ってさけんでたから、たぶんまた来るんだろう。

 たすけてもらった?おれいを言おうとおもってうしろをふりかえったら、はかまの人はもうみえなくなっていた。足がやたら早いんだね。


「……千鶴、二人に見えたのか?あいつ、一人しかいなかったぞ?」

「えー?二人にみえたけど?Tシャツにジーンズはいてたよ」

 男の人にくっついて行っちゃったけど、ふつうにはしってたし。

「Tシャツ……?今、十二月だぞ、最高気温が10℃行かないくらいで、Tシャツっておかしいだろ」

「……そういえばそうだね。でも、たまにすごくうす着の人っているじゃない」

「外人とかだろ?あいつら平熱が日本人より高いらしいぞ。だから寒さに強いんだと。そいつは外国人だったのか?」

「えーっと、日本人、にみえたけどよく分かんない」

「…………人だったか?」

「たぶん……?」


 

 よく分かんないままのこりのおちばをかたづけて、言えなかったおれいを言おうと思ってさっきの人をさがしてみたけど、どこにもいない。

 おじさんにもきいてみたけど、

「白衣に黒い袴を着てたのは、俺だけだぞ」

 って言われちゃった。Tシャツの男の人はともかく、はかまの人はかずやくんも見てる。見まちがいじゃないし、なんか神社のことにもくわしそうだったのに、なんでいないんだろう?


 あんまりすっきりしなかったけど、おそうじはかんりょうしてきれいになったのでいいとしよう。





Side:和也


 大晦日の大祓いの行事に、この間見た男が来ていた。

 神妙な顔をして白い紙のヒトカタを自分の体になすりつけている。一瞬、真っ黒に見えたのでびっくりしたけど、見直したら別に何ともなっていなかったので、見間違いだろう。


 それにしても、千鶴が見たTシャツの男もそうだが、袴の男は誰だったんだろう……?

 親父にはもちろん、氏子の人たちにも聞いてみたけど、そんな恰好をした男は一人だけだったと言われた。

 一人はもちろん親父当人だ。

 神社の中で袴なんて穿くのは当然神職にある人間だろうから、意識に上らなかっただけかと思わないと納得できないくらい、目撃証言がなかった。くわしく男の特徴を言おうにも顔は良く見えなかったし、背格好は親父にそっくりだったから、勘違いだろうなんて言われるし。


 神社は自分の家だけど、気持ち悪いと思ったのは千鶴の姿が急に見えなくなった時以来、二回目だ。

 一回目は偶然、二回目は必然、三回目は運命なんてことをどっかの本で読んだが、千鶴のことなら運命なんて言葉で許せないからな!



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