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魔女と猫の旅立ち

 毎朝、カーテンの隙間から零れた光で目を覚ます。

 その光に照らされて宙に舞う埃が見え隠れする。

「ナー」

「お前は気楽そうでいいな」

 ベットに上がって来た愛猫を一撫でし、珈琲を淹れるべくベットから立ち上がる。

「今日はお客さんが来るから、おとなしくしていてね」

「ナーーー」

 愛猫の彼女と他愛もない話をしながら階段を降り終えると、資料で床の見えないダイニングが顔を出す。

「部屋を片付ける魔法があるといいのだけどね、そんなものないのだから仕方がないわよね」

「ナ~?」

「分かってるわよ、片付けるわよ。珈琲飲んでからね」

 ダイニングテーブルの上に散らかっている資料を雑に片付け、キッチンへと足を向ける。

 これまた散らかったキッチンを雑に片付け、食器棚から珈琲豆と珈琲カップ、フィルターを取り出し、食パンと共にテーブルへと持っていく。

「ナ~?ナ~~ナナ~?」

「こういった凝ったことは楽しいから好きなの!掃除とは訳が違うの!それに、最近でたパックで簡単ってやつは味が薄いのよ。まぁ、数十年後に期待ね」

「ナ~」

 納得のいかなそうな彼女を横目に、いつもテーブルに置いてあるミルとドリッパーを杖を一振りし、自分の元へと引き寄せる。

「こういう時、魔法って便利って実感するわよね」

「ナー」

「無駄遣いじゃないわよ、失礼ね」

 少しムッとしながらドリッパーにフィルターを取り付け、ミルに珈琲豆を投入しゴリゴリと小気味良い音を鳴らしながら回す。

 しばらく回していると、ゴリゴリといった音からカラカラとミルのハンドルの空回りする音へと変わっていく。

「そろそろよさそうね」

「ナナナ~」

「ふふふ、はいはいご飯ね。今用意するから少し待って」

 挽き終わった豆をフィルターへと入れ、杖からお湯を出す魔法と、さらに物を空中で回す魔法を使い珈琲を抽出していく。

「さぁってと!次はあなたのご飯ね。今日はミルクと魚の切り身よ」

「ナー!ナー!」

「あなた本当に生魚好きよね。今度ステーキとかも食べさせてあげるわ、美味しいのよ」

「ナー?ナーナーナ?」

「なんでって、あなたにも美味しい物は魚だけじゃないって知ってほしいと思ったからよ。ただそれだけ。」

「ナー」

「え?生がいい?ふふふ、分かったわ。今度生のお肉、買ってくるわね。はい、まずはミルクから」

 ミルクを勢い良く飲む彼女はとても愛らしい。ついつい背を撫でてしまう。

「はい、お待ちどおさま。魚の切り身よ」

 ミルクを殆ど飲み干していた彼女は、待ってましたと言わんばかりに切り身を頬張っていく。

「ふふふ。喉に詰まらせないようにね」

 部屋中に立ち込めてきた珈琲の匂いが、寝起きの緊張した私の身体から無駄な力を取り払ってくれるこの感覚が、とても心地良い。

 魔法を止めドリッパーを取り、下の容器から珈琲カップへと珈琲を注ぎ移す。

「よし、準備完了!いただきます」

 珈琲を一口啜り、食パンを一齧りする。するとパンは雪のように溶け、珈琲の香りが口の中一体に広がる。とても幸せだ。

 そして、窓から見える枝垂柳が風に吹かれゆらゆらと揺れているこの景色。これが更に私に幸せを感じさせる。

 本当、此処に越して来て良かった。自然に囲まれている上に村も近からず遠からずと、全てが丁度いい。まさに理想郷だ。

「さぁ~てと、食べ終わったし掃除するか~…いやだな~」

「ナアアア」

「やるってば。ただの愚痴よ、愚痴」

 彼女が疑うのも無理はない。昨日も同じ会話をし、結局やらず仕舞だったのだから。

「言ったでしょ、今日はお客さんが来るの。だから嫌でもやらなくちゃならないのよ。生活が懸かってるんだからね」

「ナーー?」

「そう、魔法協会のお偉いさんよ」

「ナーーー」

「納得していただいたようで結構。さぁ、始めるからベットの方に行ってて」

「ナー」

 彼女はやれやれといった感じに部屋へと戻ってくれた。

「さぁ、始めるよ」

 杖を構え、杖に魔力を流し込み、魔力でくうに魔方陣を描いていく。

「まずは一旦物を全部浮かせてっと」

 物を浮かせる魔法の陣を描き、起動させる。

 物が全て浮いたのを確認し、窓を開ける。

 窓を開けると、爽やかな風が部屋へと流れ込み、埃っぽい空気を攫っていく。

「気持ちいい」

 つい掃除の手が止まってしまう。

「いかんいかん、モップ掛けしないと」

 部屋の隅に放置してあるモップを手に取り、水魔法で軽く埃を洗い流してから先端をしっかり濡らし、モップを掛けていく。

 モップ掛けが終わり、風魔法と火魔法を合わせ温風を出し、床を乾かす。

「よし、乾かし終わった!時間は…げ、10時じゃん」

 その光に照らされて宙に舞う埃が見え隠れする。

「ナー」

「お前は気楽そうでいいな」

 ベットに上がって来た愛猫を人撫でし、珈琲を淹れるべくベットから立ち上がる。

「今日はお客さんが来るから、おとなしくしていてね」

「ナーーー」

 愛猫の彼女と他愛もない話をしながら階段を降り終えると、資料で床の見えないダイニングが顔を出す。

「部屋を片付ける魔法があるといいのだけどね、そんなものないのだから仕方がないわよね」

「ナ~?」

「分かってるわよ、片付けるわよ。珈琲飲んでからね」

 ダイニングテーブルの上に散らかっている資料を雑に片付け、キッチンへと足を向ける。

 これまた散らかったキッチンを雑に片付け、食器棚から珈琲豆と珈琲カップ、フィルターを取り出し、食パンと共にテーブルへと持っていく。

「ナ~?ナ~~ナナ~?」

「こういった凝ったことは楽しいから好きなの!掃除とは訳が違うの!それに、最近でたパックで簡単ってやつは味が薄いのよ。まぁ、数十年後に期待ね」

「ナ~」

 納得のいかなそうな彼女を横目に、いつもテーブルに置いてあるミルとドリッパーを杖を一振りし、自分の元へと引き寄せる。

「こういう時、魔法って便利って実感するわよね」

「ナー」

「無駄遣いじゃないわよ、失礼ね」

 少しムッとしながらドリッパーにフィルターを取り付け、ミルに珈琲豆を投入しゴリゴリと小気味良い音を鳴らしながら回す。

 しばらく回していると、ゴリゴリといった音からカラカラとミルのハンドルの空回りする音へと変わっていく。

「そろそろよさそうね」

「ナナナ~」

「ふふふ、はいはいご飯ね。今用意するから少し待って」

 挽き終わった豆をフィルターへと入れ、杖からお湯を出す魔法と、さらに物を空中で回す魔法を使い珈琲を抽出していく。

「さぁってと!次はあなたのご飯ね。今日はミルクと魚の切り身よ」

「ナー!ナー!」

「あなた本当に生魚好きよね。今度ステーキとかも食べさせてあげるわ、美味しいのよ」

「ナー?ナーナーナ?」

「なんでって、あなたにも美味しい物は魚だけじゃないって知ってほしいと思ったからよ。ただそれだけ。」

「ナー」

「え?生がいい?ふふふ、分かったわ。今度生のお肉、買ってくるわね。はい、まずはミルクから」

 ミルクを勢い良く飲む彼女はとても愛らしい。ついつい背を撫でてしまう。

「はい、お待ちどおさま。魚の切り身よ」

 ミルクを殆ど飲み干していた彼女は、待ってましたと言わんばかりに切り身を頬張っていく。

「ふふふ。喉に詰まらせないようにね」

 部屋中に立ち込めてきた珈琲の匂いが、寝起きの緊張した私の身体から無駄な力を取り払ってくれるこの感覚が、とても心地良い。

 魔法を止めドリッパーを取り、下の容器から珈琲カップへと珈琲を注ぎ移す。

「よし、準備完了!いただきます」

 珈琲を一口啜り、食パンを一齧りする。するとパンは雪のように溶け、珈琲の香りが口の中一体に広がる。とても幸せだ。

 そして、窓から見える枝垂柳が風に吹かれゆらゆらと揺れているこの景色。これが更に私に幸せを感じさせる。

 本当、此処に越して来て良かった。自然に囲まれている上に村も近からず遠からずと、全てが丁度いい。まさに理想郷だ。

「さぁ~てと、食べ終わったし掃除するか~…いやだな~」

「ナアアア」

「やるってば。ただの愚痴よ、愚痴」

 彼女が疑うのも無理はない。昨日も同じ会話をし、結局やらず仕舞だったのだから。

「言ったでしょ、今日はお客さんが来るの。だから嫌でもやらなくちゃならないのよ。生活が懸かってるんだからね」

「ナーー?」

「そう、魔法協会のお偉いさんよ」

「ナーーー」

「納得していただけたようで結構。さぁ、始めるからベットの方に行ってて」

「ナー」

 彼女はやれやれといった感じに部屋へと戻ってくれた。

「さぁ、始めるよ」

 杖を構え、杖に魔力を流し込み、魔力でくうに魔方陣を描いていく。

「まずは一旦物を全部浮かせてっと」

 物を浮かせる魔法の陣を描き、起動させる。

 物が全て浮いたのを確認し、窓を開ける。

 窓を開けると、爽やかな風が部屋へと流れ込み、埃っぽい空気を攫っていく。

「気持ちいい」

 つい掃除の手が止まってしまう。

「いかんいかん、モップ掛けしないと」

 部屋の隅に放置してあるモップを手に取り、水魔法で軽く埃を洗い流してから先端をしっかり濡らし、モップを掛けていく。

 モップを掛けが終わり、風魔法と火魔法を合わせ温風を出し、床を乾かす。

「よし、乾かし終わった!時間は…げ、10時じゃん。見えるまでもう1時間しかない。早く資料整頓しないと」

「ナーー」

「もう降りてきたの!あぁでも2時間は我慢してくれたのか。ありがとうね」

 彼女の背をまた一撫でする。すると彼女は喉を鳴らして答えた。

「じゃあできる限り寝室へ運ぶか~」

「ナー」

 再度物を浮かせる魔法を資料全体に掛け、寝室前の廊下まで運ぶ。

 全てを運び終わった時、時計の針は10時30分を指し示していた。

「良し、後はできる限り寝室に入れるだけだ」

「ナー」

「それじゃ、ちゃちゃっとやっちゃいますか」

「ナーー!」

 作業すること20分。進行具合は半分満たず。

「だ~終わらん」

「ナー」

 彼女の呆れ顔ももう見飽きてしまった。

「どうしよう、もう10分しかないよ。また自己管理ができない認定されて研究費減らされちゃうよ」

「ナーナ」

 ただでさえ研究が滞っているというのに、これ以上研究費を減らされたとなっては本格的に研究を中止せざるを得なくなる。それだけは何としても避けなくては。

 だが待てよ。大分片付いている方ではないか?研究費減額という言葉に怯え視野が狭くなっていたが、よくよく見てみれば片付いているぞ。

「ねぇ、メイ」

「ナー?」

「これで大丈夫な気がするんだけど、どうかな」

「ナーー!」

「えーだめ?わかったよ、限界まで押し込んでみるよ」

 それから9分間格闘し、私は廊下一面に広がった資料を廊下半分が顔をだすまで押し込むことに成功した。

 そして、運命の時はやってきた。

 コンコン

 11時定刻、木製のドアを叩く音が家中に響き渡る。

「は、はい只今」

 ドアを開けると、そこにはいつもの様に厳しい表情をした審査委員の方が立っていた。

「ほ、本日はよろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いいたしますサラ・アン・イースティさん」

「あ、お、お入りください」

「失礼します」

 いつも彼の動きは洗練されている。玄関マットで靴底の土を落とすその姿さえ、まるで絵画を見ているかのような気になる程だ。

「今お茶淹れますね」

「ありがとうございます」

 お茶を彼の前に置き、私が席に着くと面談は始まった。

「それでは年一面談を始めていきます」

「よろしくお願いします」

「初めに、研究内容の確認です。サラ・アン・イースティさんが研究なさっているのは、不老不死になる魔法と転送、移動系魔法の長距離化を目的とした、魔方陣の研究でよろしいでしょうか」

「は、はい。間違いありません」

 彼は資料にチェックを書き入れていく。

「続きまして、研究の進捗をお聞かせください」

「報告いたします。私はここ最近、転送、移動魔方陣の研究に力を入れていました。その結果、転送距離を以前よりも3㎞延長することに成功いたしました」

「それは、不老不死になる魔法の研究は進展が無い、ということでよろしいでしょうか」

「え、は、はい」

「承知いたしました。その他の進展、進捗は?」

「えっと、ありません」

 彼は大きな溜息を吐き続けた。

「いいですかサラ・アン・イースティさん。転送魔法の転送距離が3㎞延びたことは素晴らしいことです。ですが、我々魔法協会が主で出資しているのは不老不死の研究の方です。ですので、そちらの研究の成果を少しでも、ほんの少しの進捗でも出していただかないと、出資を減らさざるを得ません。と、前回の面談でお話しましたよね」

「はい、しました」

「何故です。何故、転送魔法に力を入れてしまったのです。出資を減らされたいのですか」

「そ、それは困ります」

「そうでしょう。ですがもう、減らさざるを得ない。今までの半分、いや、それ以上だと思っていてください」

「そ、そんな」

「自業自得としか言いようがありません。まったく、貴女はもっと自覚を持つべきだ。自分が魔術師国家資格一級保持者であるという自覚を」

「は、はい。すみません」

「来年も成果がない場合、資格剥奪もあり得ます。どうか、不老不死の研究に注力ください」

 情けなくも半泣きである。

「それでは、本日の面談は以上となります。お疲れさまでした」

「ありがとうございました」

 本来ならば少なくとも1時間は続く面談だが、資格所有者であることと、あまりに研究成果が少ないという理由で、私の面談はいつも15分ほどで終わる。

 彼は茶を一気飲みし、家を出た。

「ああ、疲れた」

 ストレスで脳が悲鳴を上げている。

「成果を出せと言われても、難しいんだもん。そうそう出せないわよ」

「ナーー」

「そうね、気晴らしに森でも歩きましょうか」

 食器を片付け、彼女と家の隣にある森へと向かう。

 一つ伸びをする。

「気持ち良いわね」

「ナ~~」

「もういっそのこと資格放棄しちゃおうかな」

「な!」

「だって面倒くさいんだもん。それに、縛られるの嫌なのよ。ストレス。何にも縛られていない方が、良い考えが浮かびそうだし」

「…ナー」

「ありがとう。もう少し考えるけどね」

 だが現実的に考えるとなかなか厳しいところだ。研究には莫大な金が必要だし、今まで大目に見られていたグレーな部分が真っ黒になるわけだし、やはり資格の放棄は難しい。

 だがこのストレスは本当にしんどい。もう耐え切れない。

「…お暇をいただこうか」

「な?」

「そう、お休みだよ!私、ここ数十年はもらってないもん!申請したらくれるはずだよ」

「ナー」

「一応毎年成果は出してるもん。だから毎年仕事してるってことにはなってるの。メインではないけど」

「ナー」

「分かってないわね、お休みをもらえれば気兼ねなく旅に行けるじゃない!研究の為の遠征としてじゃなく、ね。勿論面談の日を伸ばせるし」

「ナーー」

「ええ、好きにしますとも。さあ帰ったら申請の手紙かくわよ」

 それから暫く彼女と歩き、帰宅した。

「ええっと、確かこの辺に仕舞ったと思うんだけどな」

「ナー?」

「レターセットよ。昼間言ったでしょ、休みの申請を出すって」

 寝室のクローゼットの奥をまさぐっていると箱のような物が手に触れた。

「これかな」

 箱であろう物を引き出すと、周囲に埃が散らばる。

「ありゃりゃ、凄い埃」

 蓋を開け中身を確認すると、大量の紙と小瓶に入ったインクにガラス製のペンが顔をだす。

「あったあった。さあ早速書きますか」

 箱から物を取り出し机へ広げ、席に着き、ペンをインクに浸け、手紙へと運ぶ。

 手紙はものの数分で書きあがった。

「よーし書き終わった」

「な!」

「へへ、休めると思ったら文がスラスラ出てきたの」

 手紙に封をし、転移魔方陣へと持っていき、魔方陣を起動する。

「明日には返事が返ってくるでしょう。さ、寝ましょう寝ましょう」

「ナーー」

「上手くいくわよ、きっとね」

 翌日、いつも通り珈琲を飲んでいると魔方陣に反応があり、急いで寝室へと向かった。

「来たよメイ!」

「ナー」

 緊張を押し殺し封を開けると、そこには承諾の文字があった。

「やった、やったよメイ」

「ナー。ナーー?」

「ん?五年だよ」

「ナー」

「そう。私も五年は厳しいかな、って思ったんだけどいけたよ。良かった~。さあさあ、どこに行こうか」

 早速手帳を取り出し、行きたい場所を書き出していく。勿論彼女の意見も聞き入れながら。

 気付けば外は暗くなっており、梟が鳴いている。

「大分決まったね。もう明日には出られそう」

「ナー」

「いや、明日は不動産屋に鍵を預ける手続きしに行ってくる。早くて明後日だね」

「ナー」

「そうね、楽しみね」

 彼女もご機嫌で何だか救われたような気持ちになった。最近のところ、彼女も何だか晴れない様子だったから。

 この旅で何か得られるものがあると良いな。

 不動産屋のドアを叩き入店すると、気の良い店主が出迎えてくれる。

「お久しぶりです、イースティさん。本日はどういったご用件で」

「お久しぶりですアドラスさん。実は五年ほど旅に出ようと思って、鍵の管理をお願いに参りました」

「左様ですか。承知いたしました。いつ頃のご出立で?」

「明日の7時には出ようと思ってます」

「承知いたしました。それでは6時55分にお伺いしますね」

「はい、よろしくお願いします」

 互いに会話が終わり、立ち尽くしている。

 席へ案内されるのを待っているのだけど、もしかして手続きみたいなものはないのだろうか。

「あ、あの、手続きとかは」

「ああ、結構ですよ。イースティさんが十分、信用できるお方であることは存じております」

「そうですか。それでは失礼します」

「はい。また明日あす

 照れくさい気を持ち。扉を開けると、眩しく日が瞳へと飛び込んでくる。まるで旅立ちを祝福しているように感じられ、気が軽くなる。

「ただいま」

「ナー」

 食料やらなんやらを買い帰宅し、早々に荷造りへと取り掛かる。

「ナー?」

「早めにやっとかなくちゃまた億劫になるからね、やってるのよ」

「な」

 その様な露骨に見直したという表情はやめていただきたい。普段の私はこんなことで見直されるほどの怠惰人間か?…そうかもしれない。

 荷物を纏め終り、床へ就く。

「おやすみ。明日もよろしくね」

「なー」

 恒例の挨拶を済ませ、眠りに就いた。

「なー!」

 彼女の声で目を覚ます。

「おはよう。今何時?」

「なー」

「6時30分ね。ありがとう」

 ベッドから飛び起き、身支度を済ませ、外へと出る。時刻は6時50分。

「おはようございます」

 アドラスの声が聞こえ振り向く。

「おはようございます。朝早くにありがとうございます」

「いえいえ。もうお出になられますか」

「はい、行きます」

「それでは、お気を付けて」

「はい。お願いします」

 鍵を預け、彼女と共に箒へとまたがった。

「それでは、行ってきます」

 箒に魔力を流し込みむ。すると箒は一気に上昇し、気付けば、小さくなった家々が見えるようになっていた。

「これから始まるね、私たちの旅が」

「な〜」

「そうね、楽しみましょう。全力で」

「なー!」

 箒の設定を上昇から進行へと切り替え、スピードを上げる。

 天気は晴れ。私達の心も晴れだ。

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