ステイションにて。
お姉さん、
そう言って、彼女の前に立った。
そして、
占ってもらえますか?
と、続けた。
ここは或る、星間連絡船のターミナル。
ごったがえしていた。
柱を背に、壁を背に、コンコースのど真ん中で、または隅の方で、集団があちこちに待ち人を待っている。
集団が行き交う人をぶつかろうが、ものともせず。
ありとあらゆるところで、まだか、まだかと、待ち人がいた。
行き交う人や、アンドロイド、人に似たAI、ミュータントや、異星人、エイリアンなどが右から左、左から奥に。
また、出会った者同士が喜び合い独特の挨拶をかわしたり、携帯端末を片手に怒鳴っている者がいたり、別れを惜しんでいる者、行き先を案内板の看板に求めている者。
それらを背に、
そこで、彼はもう一度言った、
お姉さん占ってもらえますか?
暫く声をかけた彼の目を見ていた占い師は、いつかの占ってあげた女の子の事を思い出した。
なぜ思い出したのか。
彼女が男の子について占ってほしいと、言っていた男の子に特徴が酷似していたからだろう。
初めて見るとは思えない位、あれからずっと反芻していた。
特徴を。
占い師は、彼に言った。
初めて会ったとは思えないねえ。
昔、占った女の子の相手の彼氏の特徴とよく似ていたもんでね。
そうだ、時間つぶしに聞いてくれよ、ついでに占ってあげるからさ。
なに、お代は無料にしておくからさ、私の他愛もない話に付き合ってくれたお礼さ。
そうだ、あの日も今日みたいにごった返していたよ。
そう言いながら水晶に目をやった。
その時の彼女は待ち人が来ず、ステイションは今日の様にごった返していて。
目が回る、人酔いだろう、いずれにしても熱気と、雑音と、振動と視界があちこちとなって視線が定まらない所謂人酔いだろう、少し気分が悪くなって。
路地、と言っても、パイプスペースぐらいしかない狭さだが、今までいたポジションより幾分ましな、その路地に避難して、おもむろに、携帯端末を起動させ、連絡が無いか確認した。
無い。
閉じて、その狭い路地から切り取られた景色を眺めていた。
切り取られた、景色の間を者が行き交っている、と言っても一瞬で視界外から視界、そして視界外へ。
まるで時間を切り取っているような感覚だった。
お嬢さん。
おもむろに背中に聲をかける者が、あった。
振り返ると、占い師だった。
なぜ、一目で占い師と分かったか、彼女自身分からなかった。
雰囲気だろうか、なりだろうか、あからさまに、白い布の台に水晶があったからだろうか。
その予想は、次のセリフで確実なものとなった。
商売の邪魔だよ、占う気が無ければ此のショバから出て行ってくれないかい?
少し実入りが無かったので、語気は自然強くなった。
あ、すいません。
彼女はそう言ってそのパイプスペースから出て行こうとすると。
待ちな。
と、呼び止めた。
待ち人来たらずといった所だね。
占いはどうだね、どうせ客は来ないみたいだ、客が来るまで時間つぶしにどうだい?
お前さんも、時間を持て余しているんだろう?
はあ、まあ。
と言って彼女に近付いた。
やっぱり、あれかね、彼との将来でも占っておくかい?
彼女は短く、これまでの身の上話を占い師に言った。
カレッジを卒業して、ようやく希望に沿ったカンパニーに就職が決まり、その間就職活動で、長い間彼との連絡が取れず、彼が何とか時間をこじ開けて、会えることになった。
そして迎えた今日だが、待っていたが中々来ない、トランジットの欠航の情報なども無かった。
かなり待っていたのは事実だ。
今だけでない。
長い期間お互い逢っていない。日々と二人の結論を出すのに丁度いい機会ということもあって、今日会うことにスケジュールの調整も以前からしていた。
あんまりよくないことは聞きたくないんですが?
彼女
はは、そうさね大丈夫だよ。
私は、こう見えても必ず当てるからね。
占い師
必ず当てるって?
彼女
まあ、見てておきな、そう言って水晶を睨むと。
彼は今、着岸する所だね。
占い師
よくわかりましたね。
彼女
タイムマシン、で少し未来に行ってきたのさ、
占い師
タイムマシン?
彼女
まあ、永久機関並みにまゆつば物とは聞いているが、正真正銘のタイムマシンさ、そこで見るのさ、人間が乗り込んでの時間旅行じゃない。
その座標を見るだけさ。
パワーを絞って、見たり聞くだけにしているのさ。
見るだけなら、時間に干渉しないだろう?
人や物に干渉せず過去や未来をみるだけの物さ。
と、占い師は言った。
その時、ステイション全体が大きく揺れた。
強い振動と叫び声や、人々が騒がしくこのステイションを右往左往し駆けずり回っているのが路地から見えた。
と、同時に緊急ニュースが入って来た、今このステイションに着岸した船が事故で、大破して、死傷者が多数出ているとの事だった。
そして彼女は、その事故を起こした船の名前を見て気を失いそうになった。
彼が乗船している船だ。
モニターにはその惨状が映し出されている。
救助隊員、や、怪我人や、乗客が入り乱れている。
頭が、思考が混乱して気分が悪くなっていた。
大丈夫かい?
占い師は席を立ち、彼女の傍に駆け寄った。
その時白いテーブルの下に隠していた、タイムマシンの本体が露になった。
本体と水晶を模したモニターが、ケーブルで繋がっているといった代物だった。
彼女はそれを見止め。
占い師さん、それ、確かタイムマシンって言いましたよね。
そこまで聞いて、理解した占い師は即座に否定した。
見ることは出来るが、そんな人を飛ばすなんて。
確かにパワーを上げれば飛ばすことが出来るが、そんなことすれば、パラレルワールド、多元・平行世界に行ってしまい、枝分かれしたどれかの未来に行ってしまって、元の世界に戻ることは難しい。
いやいや、そんな事出来るもんかね。
そうこうしている内にもヒステリックに、事故現場からの中継が、間断なく流れて来る。
彼女は、
でも行きます、彼を助けに。
占い師は、
暫く、考えて。
昔、赤い糸の伝説があったね、生まれながらに結ばれる二人は赤い糸で結ばれている、どんなに遠くても、近くても、離れていても絡まったり切れたりしない。
それに賭けるかい?
結局は、未来は無数の可能性の収束した物。
自分の歩む道さね。
どの道に行くのかは、お前さん方次第さ。
タイムマシンの放つ光が、収束して起動した。
そうして、彼女は行ってしまった。
その後私は、ずっと待っているのさ、占いもそうだがその赤い糸ってものを信じて見たくなったのさ、あの時の純真な彼女の瞳が忘れられずにいるのかもしれない。
その彼女を待って、いるのさ。
独り言のように呟き。
確認するように彼にそう言って、目線をあげると。
そこには、二人、立っていた。
あの時の彼女と。
占い師は、
驚きと、嬉しさで涙が溢れ出していた。
そして言った。
そうかい、そうかい、聞かせておくれよ。
その赤い糸の顛末を。
ここは或る、星間連絡船のターミナル。
相変わらず、ステイションはごったがえしていた。 了
拙作に目を通していただき痛み入ります。誠にありがとうございます。




