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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season12 ― 喧騒と旋律 ―
11/12

第10章 暴かれる過去

深夜に近い時間帯。


部屋の明かりは最低限に落とされ、モニターの光だけが淡く浮かび上がっていた。


なぎ蒼真そうまは並んで画面を見つめ、キーボードの音だけが静かに響く。


しゅうは少し後ろに立ち、腕を組んだまま2人の動きを追っていた。


その少し離れた位置で、みなとは息をひそめるように座っている。


——何かが、明らかになろうとしている。


それだけは、はっきりとわかった。


「……来た」


蒼真の低い声が、静寂を裂いた。


画面上に並ぶデータの羅列が、一瞬だけ波打つ。


次の瞬間、隠されていたログが展開された。


凪が息を吸う。


「これ……資金の流れ、やっぱり二重構造だ」


「表向きの帳簿と、裏で回してる帳簿……完全に分けてるな」


柊が腕を組み直す。


「で、どっちも“正しい”ように見せてる」


蒼真が静かに頷く。


「片方は監査用、もう片方が本命。

 しかも、表のほうに“意図的なミス”を仕込んでる」


湊が息をのむ。


「……それって……」


「“誰かが修正すること”を前提にした罠です」


凪が淡々と続ける。


「修正した人間に、裏の流れをなすりつける。

 その瞬間、その人が“実行者”になる」


部屋の空気が、さらに重くなる。


柊が、ゆっくりと口を開いた。


「……つまり」


その言葉の続きを、湊が受け取った。


「……私が、犯人に仕立てられる予定だった」


沈黙。


誰も、すぐには言葉を返せなかった。


湊は自分の手を見つめる。

震えてはいない。ただ、胸の奥がじんと冷えていた。


「……あの2件の“修正”。

 あれ、どっちも“間違いを直した”つもりだった」


静かな声で続ける。


「でも、あれが“正解”だったからこそ

 ……私が“犯人”になれた」


凪が歯を食いしばる。


「……ひどい話だ」


蒼真が画面を睨みながら言った。


「しかも手口が巧妙すぎる。

 湊さんの技量を、完全に計算に入れてる」


柊は、ゆっくりと息を吐いた。


「……狙われた理由は、技術だけじゃないな」


湊が顔を上げる。


「どういう意味だ?」


湊の問いに涼平りょうへいが答える。


「“疑われにくい人間”だったからだ」


その言葉に、湊は小さく息を呑んだ。


「実績があって、信用があって、派手じゃない。

 疑われにくくて、表に出てこない。

 ……一番、都合がいい」


涼平の声は淡々としていたが、その奥には怒りがあった。


「だから、湊が選ばれた」


湊は、しばらく何も言えなかった。


沈黙を破ったのは、凪だった。


「でも、向こうの計算がひとつだけ外れてる」


全員の視線が集まる。


「湊さん、ちゃんと気づいた。

 それに——僕たちがいる」


蒼真が小さく頷く。


「もう、相手の思い通りにはならない」


柊が一歩前に出る。


「ここからは、こちらの番だ」


その声は静かで、揺るぎなかった。


湊は深く息を吸い、そしてはっきりと言った。


「……私も逃げないよ。

 最後まで、ちゃんと戦う」


その言葉に、涼平は小さく微笑んだ。


「うん。守るだけじゃなく、一緒に戦おう」


モニターの光が、5人の顔を照らす。


それはもう、ただの“事件”ではなかった。


——それぞれの過去と誇りを賭けた、静かな戦いの始まりだった。

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