音楽アプリ五百円
いつも使っていた音楽アプリが、配信停止になった、すごく使いやすかったので、ショックだった。
昼休みに音楽アプリを探してみるが、どれも今一つぴんとこない、一つだけレビューも良くて、月額たったの五百円で広告一切なしのアプリを見つけた。
リーズナブルなお値段と登録曲数に惹かれて、登録してしまった
最初に推しのアイドルのポップスを聴いてみた、アプリ自体の音がいいのか、没入感が凄い。
ライブ気分で、課題をこなしながら、アルバム一枚分聴いてしまった。
次の日電車に乗って聴こうと思いつき、プレイリストに入れていた、推しの曲を探してみる。
どこを見ても、検索しても出てこない。
まるで最初から存在しなかったように。
慌てて推しのグループ名を検索してみるが、何もヒットしない。
今日の夜の生放送音楽番組に、出演するはずだから、待機してようと強く拳を握りしめた。
番組の時間が来た、普段なら各自自由にポーズを撮って階段を降りてくるのに、最後まで登場しなかった。
司会さえも名前を呼ばなかった。
次の日学校で、思い切ってグループのことを聞いた、みんな
「何言ってんの?そんなの聞いたことないよ」
と笑っている。
昨日まで、一緒に推し活をやっていた友達でさえ知らないと。
私 はスマホを落とした。
拾えなかった。
こんなことがあるわけない、夢でも見てるの?
みんなで騙してる?
でもそれなら昨夜のテレビはどうなる。
私は静かに憤っていた。
帰り道電車で音楽アプリを聴く。いつも落ち込んだ時に元気をくれるyorigeの曲
ポップだけど聞く度に、胸がぎゅうっと締め付けられて、泣けてくる曲ばかりだ。
電車の中でも少し涙ぐみそうになってしまった。
今日は配信の日だ。
私は毎週水曜日に音楽配信をしている、そう、いわゆる歌い手というやつだ、とは言っても始めたばかりで、まだまだ新人だけど歌唱力には自信がある。
私の家は比較的裕福なので、両親は部屋は防音にしてくれている。
マイクのセット、ギターのチューニング
諸々の準備をして、配信スタートする。
「こんばんはsarisariです、今日の一曲目はyorigeのこの曲です、聴いてください」
イントロをギターで弾き出す。
コメント欄は「yorigeって誰?」
「新人のボカロPとか?」
「今検索したけどヒットしない」
「sarisariの別名義とか?」
「それなら検索に出てくるだろ」
コメント欄が荒れている
私は「あれ?みんなの好きなyorigeだよ?よく配信で歌ってるし、知名度も高いよ?」
と言うとコメント欄には
「知らない」
「誰?」
「全然知らない」
とどんどん流れてくる。
「あれおかしいな、じゃあ次行くね」
私は気を取り直して次の曲を歌っていった。
配信終了後yorigeを検索してみる、たしかにどこにもヒットしない、音楽のサブスクを見ても存在しません。
としか出てこない、あんなに大好きだったyorigeが。
推しも消えちゃったし、なんで?
それからも私が聴いた曲やアーティストはどんどん消えていった。
音楽番組のチャートは、私が興味のないアーティストだらけになった。
時には昭和歌謡までランクインするようになって言った。
昨日まで街中で流れていた曲さえも消えていく。
そのうち私も名前すら忘れるようになっていった。
そんなある日私にレコード会社からオファーが来た、歌でデビューしてくれないかと、両親の了承も得て晴れて私は歌い手兼歌手になった。
初めてできたCDが嬉しくて、両親の分を持って帰った。
私はサブスクで自分の曲を聴いた、何周も聴いた。
その時足の先からすうっと砂のように溶けていく、消えていくような感覚がした。
お腹、胸、首
取り返しのつかない速度で消えていく。
どんどん消えていってしまう、最後にふっと頭が消えて終わってしまった。
最後に消えていく意識の片隅で、母が私の部屋に入ってくる。
「あれ?物置部屋に何か用があったかな?」
というのが聞こえた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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