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第4話 跪け(ひざまずけ)





月が銀の鎌のように空に浮かんでいた。

まるで裁きの時が近づいていることを告げるかのように。


森の奥深くで、二つの影が静かに進んでいた。


カイトとアデルハイド。


二人は慎重に動き、アヴェルノール王国の外壁を回り込んでいた。

――彼を召喚したその王国……

そして、ゴミのように捨てた王国。


「本当にこれをしていいのか?」カイトが囁き、見張り塔を見上げた。


アデルハイドは少しの躊躇もなく答えた。


「司令官、これは単なる侵入ではありません。

世界に対する最初の一撃です。

私たちがもはや『守る者』ではなく、

裁く者であることを知らしめる時が来たのです」


二人は高い木の影に身を隠した。

そこから城の物資搬入口が見えた。

何人かの兵士たちが、気を緩めて何の心配もなく冗談を言い合っていた。


「正確には、どういう計画なんだ?」カイトが呟いた。

「戦うのか? 力ずくで入るのか?」


アデルハイドが微笑んだ。


「いいえ。彼らの傲慢さを利用します。

あなたがこの世界に来た時に唾を吐きかけたのと同じ傲慢さを」


カイトが眉をひそめた。


「……お前の能力は複数人に同時に効くのか?」


「中身が空っぽなら、はい。

そしてこの王国の貴族と兵士たちは、例外なくそうです。

腐ったシステムの奴隷。

だからこそ……始めるのに理想的な駒なのです」


一歩の迷いもなく、アデルハイドは進み出て衛兵たちの前に姿を現した。


「誰だ?!」兵士が槍を構えて叫んだ。

「もう門限は過ぎてるぞ、娘! こんなところで何をしてる?」


「すみません……道に迷ってしまって。

この街に来たばかりで……」アデルハイドは恥ずかしそうに目を伏せ、控えめな微笑みで答えた。


兵士たちは顔を見合わせた。

一人が下卑た笑みを浮かべた。


「おや、今夜は退屈しなさそうだな」


「詰所まで来い。

あらゆる『助け』を与えてやるよ」


「もちろんです……」アデルハイドは赤い手袋をはめた手をそっと胸に当てた。

「でもその前に――」


> ――スキル発動:《鉄の意志(アイゼン・ヴィレ)




暗黒のエネルギーが衝撃波のように爆発した。

兵士たちの体が瞬時に凍りつき、瞳が震えた。

笑みが消え……虚無の中に消えた。


「……なぜ……俺たちはあんなことを言ったんだ……?」一人が膝をつきながら呟いた。

「どうしてこの方の理想を疑うことができたんだ……?」


茂みから、カイトが目を見開いて姿を現した。


「……またやったのか?」


アデルハイドが頷いた。


「司令官。

彼らはもうあなたのものです」


兵士たちはすぐに姿勢を正し、彫像のように直立した。


「命令をお待ちしております、閣下」


カイトはほんの一瞬躊躇し……そして毅然と話した。


「王国の軍事地図が必要だ。

交易ルート、防御の薄い地点、警備の交代時間……すべてだ」


「了解!」


「その後、兵士を十人集めろ。

エリートじゃなくていい。

現在のシステムを憎んでいる者。

上官を軽蔑し、変化を望んでいる者が欲しい」


「何人か知ってます」一人が答えた。

「下町の詰所に裏切り者候補が数人います。

慎重に集めます」


「よし」アデルハイドが頷いた。

「終わったら森に戻れ。

そして警報を作動させるな」


兵士たちは自動人形のように静かに去って行った。


カイトは彼らの背中を見つめ、高鳴る鼓動を抑えられなかった。


「信じられない……

もう完全に我々の指揮下にある……」


アデルハイドが誇らしげな微笑みを浮かべて彼の方を向いた。


「今日、私たちはあの大国の情報を盗みました。

明日は、彼らの領土を奪います。

そしていつか……

この国の住民があなたの前に跪くでしょう」


カイトは数秒間沈黙した。

そしてゆっくりと微笑んだ。


「……いいだろう。

この腐った王国に、私に与えた屈辱の一つ一つを思い知らせてやる。

そして我々の旗が彼らの廃墟の上にはためく時……

後悔するだろう」


アデルハイドは厳粛に頭を下げた。


「それこそ真の司令官の言葉です」


こうして、月明かりの下で、

彼らの帝国への第一歩が踏み出された。


炎によってではなく。


絶対的な服従によって。


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