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第11話 お祝いと脅威


「ユウ様、シャレムさん、依頼達成おめでとうございますわ!」


 頭を包帯でぐるぐるに巻かれたモニカが、嬉しそうに声を上げた。


「頭はもう大丈夫?」

「はい! まったく問題ございませんわ!」


 さっきモニカが床に倒れていたのは、死んだからではない。

 気絶していたのだ。


 どうやら料理中に落としたトマトを踏んで滑り、頭を打ったらしい。

 体中に付いていたのは血ではなく、トマトだった。


「まったく、不器用なくせに慣れないことするなよ」


 モニカを手当てしたシャレムさんが呆れ顔で言う。


「だ、だって、ユウ様の歓迎会はまだですし、せめて美味しいお料理を振る舞いたかったのです……」


 気持ちは嬉しいが、シャレムさんの言う通り、危ないことはやめてほしい。


「モニカ、君の気持ちだけで十分だよ。ギルドに入れたこと自体が何より嬉しいし」

「ユウ様……!」

「料理なら俺に任せて。慣れてるから」


 そう言って、俺は完成した料理をテーブルに並べていく。


 レモンで風味づけした魚料理、トマトソースのパスタ、野菜サラダ、ジャガイモとベーコンのスープ。

 普段は食べられないメニューだ。


「すごいですわ……! ユウ様は強さだけでなく、お料理もお得意なんですね!」

「いや、そんな大したものじゃないよ……」


 前のギルドで散々作らされた記憶がよみがえる。

 メンバーたちには絶賛されたけど、毎朝早起きして仕込むのは正直つらかった。


「うん、美味しいですわっ!」

「すげぇ美味い! ずっと貧乏生活だったから、久々にまともな飯だ! めっちゃ美味ぇよ!」

「はは、ありがとう。いっぱい食べてください」


 美味しそうに食べる二人を見ていると、故郷にいた頃を思い出す。

 いつも笑顔で食べてくれた幼馴染のリーンの姿と重なってしまう。


 もう終わったことだ。忘れよう。


 今は、新しい仲間がいる。

 俺も椅子に座り、皆と食事を共にした。





「ええ!? フェンリルをワンパン!?」


 モニカの驚きの声が拠点内に響き渡る。

 驚くのも無理はない、張本人の俺ですら実感が湧かない。


「ボクも現場にいなかったから詳しいことはわからんが、ユウが嘘をついてるとは思えねぇし、その場にいた他のギルドの連中もそう言ってたからナ」

「で、でも、フェンリルですよ! B級ギルドの方々でも苦戦する魔物を……本当にすごいですわ!」


 モニカに尊敬の眼差しを向けられる。


「俺がすごいというより、自分に強化付与したから倒せただけで……付与なしなら、間違いなく負けてたよ」

「そんなことありませんわ! 『強化付与』はユウ様の力ですもの。ユウ様の実力に間違いありませんわ!」


 謙遜しても褒められる。

 モニカは俺を神格化しすぎだ。


「しっかし、すげぇ能力だな。他の奴らを強化しても、同じくらい強くなるのカ?」

「いや、上級の魔物を一撃で倒せるほど強化できたことはありません」


 はっきり言って、規格外の力だった。

 今まで強化した人たちはせいぜい十倍ほど強くなったが、俺の場合は五十倍以上は強くなった気がする。


 なぜそうなったのか、術者の俺にもわからない。

 もしかしたら、知らないうちに付与術が進化したのか?


「そうだ、よかったらシャレムさんを強化しましょうか? そうすれば、強化の差を比べられるかも……」

「悪いな、ユウ。断るよ」

「え?」


 付与術を拒まれるのは初めてで、思わず驚いてしまった。


「別に強化されるのが嫌いってわけじゃない。でも、強くなるなら自分の力でいけるとこまで行ってみたい。この剣でな」


 シャレムさんはそう言って、腰の剣を軽く叩いた。

 いい心意気で、胸が熱くなる。


「わかりました」

「強化付与で仲間をサポートするのはいいが、自分の能力なら自分に使うのが一番相性がいいはずだ。ほかの連中より強くなれたのは、そういった理由なんじゃねぇカ?」


 確かに、彼女の言う通りかもしれない。


 付与術士は他人のためにある職業だという認識が、間違っている可能性がある。

 自分自身に使うことで、本来の力を最大限に引き出せるのかもしれない。


「そうですね。これからもっと自分の能力について試行錯誤してみます」


 付与術への理解を、もっと深めなければ。





 ————





 それから一週間後。

 『金色の魔槍』のメンバーがフェンリルを一人で討伐したという噂が、都市ファフニールに瞬く間に広まった。


 依頼主の商人が、うちのギルドを宣伝してくれたらしい。

 「このギルドのおかげで、次の町に行ける!」と高評価だった。


 ファフニールの住民はもちろん、他のギルドからも注目されるようになり、気づけばギルドハウスに数十件の依頼が届いていた。


 しかし、良いことばかりではない。

 噂は、フェンリル討伐でダブルブッキングしたギルド『赤い諸星』の耳にも入ってしまったのだ。





「リリアン、お前が言っていた依頼を横取りした連中というのは……」

「ええ、今まさに噂になっているギルドの者たちです」

「ほう……そうか」


 『赤い諸星』のギルドマスター。

 金髪に青い瞳を持つ男は、ニヤリと笑った。


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