決戦と書いてザガーンと読む
ここは静かな街の外。
壁に囲まれたかごの外で、僕はただ一人待つ。
だけれど僕の待ち人は、やっぱり一人で来れないようで。
彼女を先頭に、人波の大軍が夕日を背にやってくる。
大軍はまだ遠くのはずなのに、美しい地平線が隠されてしまう。
悲しくはない。
だって目の前には、それに勝るほどの美しい人がいるのだから。
「なーんだ、ちゃんと来たんだ。僕はてっきり、お得意のレーザー攻撃でもしてくるのかと思ったよ」
「あなた一人にそんなことはしません。それとも……私達に勝てると、本気でお思いで?」
「よく言うよ。僕に勝つ気ないくせに」
「冗談がお上手ですね」
冗談じゃないとカディアに思い知らせるために、僕は全体攻撃をすることにした。
その規模大体可能性エネルギー50年分……つらい。
「|連鎖する施錠」
指定した範囲内にいる全生命体は、地中から生えてくる鎖で手足を拘束される。
鎖で拘束された生命体は、次第に体が石化する。
僕はそれを、善組織軍全部を巻き込む範囲で使用した。
「た……助け……!」
悲鳴は聞こえる前に、風のように消える。
だがたとえ消えずに余韻が残ろうと、手を伸ばした先にいる者たちに届くことは決してない。
なぜなら彼らは、元より聞く気がないからだ。
各々が各々の方法で鎖の呪縛を打ち払い、何事もなかったかのように進軍する。
彼らが万を超える軍の正体。
たった12人の超能力者たちだ。
「残念でしたキョウメイさん。この程度じゃ、私達は止まりません」
「たった12人……バカにしてる?」
簡単に挑発に乗る喧嘩っ早い超能力者が、一人で飛び出す。
「てめぇなんか、俺様一人で十分だっての‼」
見るからにパワー系の男はそう宣言すると、僕に拳を振るう。
それが当たるよりも先に、僕はパワー系に27発の拳を打ち込む。
「瞬足の爆発拳〈ラビット・エクスプロージョン〉!」
光速を超える連撃によって置き去りにされた27回の爆発が、パワー系の腹の上で踊り狂う。
その爆発は凄まじく、バワー系を遥か彼方まで吹き飛ばした。
そして僕は、満面の笑みを浮かべてみせた。
「いいえ、11人で十分です」
カ……カ……カディアのへらずぐちぃいいいいいいいい!
カディアの笑みは、自身に満ち溢れている。
それは明らかに、僕に対する挑発であるにも関わらず、僕はやっぱり乗ってしまったのだった。
「やっぱりアナタは迂闊です。その行動で、アナタのだーいすきな人が死んだこと……思い出させてあげます」
カディアがそう言った瞬間、まっすぐ突っ込む迂闊な僕の動きが止まる。
指先ひとつたりとも動かせないこの現状。
僕は一言喋ることだって許されない。
そんな異常な状況の原因はいつだって一つ。
超能力者だ。
「僕はトマリギ。君の動きを止めさせてもらったよ。これで、好き勝手攻撃できるってわけさ」
トマリギと名乗った者は、僕の視界の外から語りかけてくる。
姿を視認されないようにして、安全圏から僕の動きを封じる。
一見すれば、どこまでも合理的だ。
だけど……。
確かに僕は動けない。
動けないなら、動かなきゃいい。
魔法を使って、果てにぶっ飛んでしまえばいい!
魔力集中……禁断中の超ド禁断……完全無詠唱魔法……ビッグジェットストリーム!
風で浮き上がった体を、カディアに向かって突撃させる。
「あらすごい。だけど、熱烈なのは好みじゃないんです」
カディアはそういいながら、僕の突撃をさっとかわしてしまい、僕はそのまま本当に果てへと吹っ飛んでしまった。
「おいおーい!アーイツ何がしたがったんだ?」
図体がデカいだけのハゲ頭がバカにしてる風にそう言った。
「カディア様にふられてやんのーだ。釣り合わねぇんだよクソガキが」
ヒョロガキも続けてそう言った。
どうやら相当僕のことが嫌いと見えた。
そんな二人をカディアがなだめる。
「キョジョウ、マイナス、その辺にしておいたほうがいいですよ。彼、とっても執念深いから」
おそらくハゲ頭がキョジョウで、ヒョロガキがマイナスだろう。
二人はそれぞれに適当な返事をする。
完全に舐め腐っている。
僕が地獄耳じゃなかったら聞き逃してたところだった。
さて、とりあえずぶっ飛ばす準備をしよう。
現在、僕は果てに向かってぶっ飛んでいる。
減速はしないから止まらない。
なぜなら、僕が未だに加速し続けているからだ。
トマリギとやらの視界から外れて拘束が解かれたはいいものの、完全無詠唱した代償で魔法が暴走した結果こうなってしまったのだが、ちょうどいい機会なのでこいつを利用してみようと思う。
可能性エネルギー1年分くらいでいいかな……身体に力をこめて……さらに何倍にも加速!
「人間大厄災!果ての果ては、世界一周だぁあああああ!」
僕はその超加速で丸い星を一周し、戦場へと帰還し帰宅する。
僕が通り過ぎたその一瞬を見逃さなかったトマリギは、油断する味方に伝える間もなく後方にからくる僕を待つ。
そのトマリギの様子に、マイナスは笑う。
「おいおいトマリギ。そんな構えてたって、誰もきたりしねぇっての」
そうマイナスが声をかけた瞬間、光速で突っ込んでくる僕の頭突きをトマリギがもろに受けた。
そしてそのまま、二人で世界一周するはめになった。
「ど……どうして……止まらな……」
「止まれないからね。もし止められてたとしても、君は衝撃で死ぬ」
途中で完全無詠唱のデバフが消え、減速し始める。
残った勢いで僕はトマリギの体をぶち破り、三周目の世界一周を終えて戦場に再び舞い戻った。
「トマリギ……!?」
トマリギの死体を見て、驚愕するカディア以外の超能力者。
そんな超能力者達を見て、僕は一言呟いた。
「あと10人……」
学マスたのしすぎぃいいいいい!




