コインの果ては地平線
「誰かと思えば……君か。まさか、生きていたとは」
ブラックは、まるでイチゴウを知ってるかのように驚いている。
「よく言うよ……見捨てたくせに。是非なんてどうでもいい、俺はお前をぶっ潰す」
「やれるもんならやってみせろよ。潰されるのは、お前の方だけどな!」
僕が言い終わると同時に、僕は二属性の複合魔法を形成して使用する。
白と黒の二つの魔法弾が、回転しながら一つとなりイチゴウに迫る。
その進行方向には、ブラックがいた。
「無駄だ。何をしようと私には……!?」
なんて、高をくくっていたブラックの腹に、黒の魔法弾が直撃する。
そして、ブラックをすり抜けていった白の魔法弾がイチゴウの腹を吹き飛ばした。
「はーいくらったー!目に頼ってるから当たっちまうんだよバーカ!」
僕は騙しの一撃をくらった阿呆をコケおろす。
まったく、安上がりないい気分だよ。
「勘違いするな、当たってやったんだ。今度は俺がニ度当てる!」
イチゴウは腹を再生させると、腕を振って見えない斬撃を放つ。
ブラックはそれに反応し、攻撃に手で触れようとする。
反転させる対象として意識させ、攻撃を無力化させようとしているのだ。
しかし、そんなことは不可能だ。
「なぜだ……なぜ当たったのだ!?私は確かに、反転させたはずなのに……!?」
ブラックの左腕は、見えない斬撃に切り裂かれた。
ブラックはわからないようだが、僕はこの攻撃を知っている。
ので、簡単に避けてみせた。
「ざんねーん。当たりませんでしたー!幻くらい見切れなきゃ、見えない斬撃の持ち腐れってやつだな」
僕は丁寧にネタバラシを行う。
まるで、わかったところで攻略は不可能とでも言いたげにわかりやすく、だ。
ようするに、負けた二人の仕返しだ。
「見えない斬撃だと!?それに幻!?そんなふざけた手段で、この私にダメージを与えただと!?そんな程度のことで!」
ブラックは信じられないと言わんばかりに、うるさく叫び続けている。
冷静なイチゴウとはまるで真逆だ。
「ただの幻じゃないな?種も仕掛けもなけりゃ、幻で攻撃できるはずがない」
イチゴウは、当然の考察で僕に問いかける。
別に隠すものでもないので、もう一回やるついでに解説してあげることにした。
「即興で思いついた光と闇の複合魔法。もう一度見せてあげるよ……幻影双撃」
光と闇の二つの魔法弾が再び放たれる。
この魔法の仕組みは実に簡単。
回転で二つの魔法弾が合わさりそうになる瞬間に、光の魔法弾が発する光をより強くする。
合わさったと誤認させると同時に、光で闇の魔法弾を隠し、一撃目になる光の魔法弾を【外す】もしくは【防がせる】ことで、2発目への警戒心を完全に無くし必中の一撃へと昇華させるのだ。
ブラックは集中すれば反転できると発言していた。
集中……それが能力発動の前提ならば、意識外からの攻撃は防げない。
見えない一撃にはめっぽう弱いのだ。
だからこんな風に。
「私は触れた……触れたのに!集中できたはずなのに!」
黒の魔法弾に巻き込まれてしまうのだ。
まあ、正直どうでもいいけど。
「2度もやったなキョウメイ!やはり、一撃当てなきゃ気がすまない!」
こうして、イチゴウにダメージを与えられた……こっちの方が大事だ。
なんせ、僕らは今戦ってるんだから。
「5度も6度も同じだろ。お前は無料で復活できるかもしれないけど、僕は一度目から有料なんだ。一撃だって当たりたくないね」
アイツの攻撃は、まともに一撃くらっただけで致命傷。
魔法じゃ即座に治せない。
可能性エネルギーだよりの回復なんて、何度もやりたくない。
だって、命がすり減る感じがするから。
「なら俺も、新技を!」
なんてイチゴウが言ってる間に、僕はステージギミックをイチゴウに向かって蹴り飛ばす。
突然のことで反応できなかったブラックは、蹴られるがまま弾丸のようにイチゴウへ迫る。
「シュート!ほら、やれるもんならやってみせろよ!」
イチゴウは、お構いなしに拳でブラックを殴る。
その瞬間、イチゴウの拳から今までにない形の斬撃が現れる。
その形は丸く、ブラックを切り裂かず吹き飛ばすその様子は、まさに衝撃。
ただしその衝撃は、通る道にいる全てをえぐる。
僕は自身に防御魔法をかけまくったが、そこまでしてなお、全身の骨がバキバキに折れるほどのダメージを負ってしまった。
「|見えない衝撃《エアスラッシュ/インパクト》」
そのまんまじゃんか。
思わずイチゴウにツッコみたくなる気持ちを抑えながら、高くジャンプし、空に打ち上がったステージギミック《ブラック》を蹴り返す。
「もう一回!」
全身ものすごく痛かったが、我慢我慢。
イチゴウはため息をつきながら、もう一度拳を構える。
見えない衝撃を使うつもりなのだろう。
「しつこい……なんだ、骨が折れたのか?」
予想通り使ったイチゴウは、突然に負傷する。
おそらく、ブラックが攻撃をくらった瞬間に状況を反転させたのだ。
「ククク……ダメージを与えられたところで、なんの得にもならない!状況を反転させればこの通り……!?」
見えない衝撃で吹き飛ばされ、地面に打ちつけられたブラックは、ありえないと言わんばかりの驚いた顔をしている。
反転によって回復したはずの自分の肉体が、回復していないことに気がついたのだ。
「邪魔!」
全身骨折なんてなかったみたいに、僕は元気にブラックを踏んづけ、イチゴウの元へ駆け寄る。
もちろん、怪我を負っているからだ。
「ぐがぁあああああああああ!?なぜだ、なぜ傷が癒えていない!私は確かに、反転させたはずなのに!」
叫ぶブラックを背に、僕はイチゴウをぶん殴る。
しかし半不死身の能力で回復したイチゴウの拳が間に合い、ぶつかり合った結果、相殺されてしまった。
「駄目じゃないか、ステージギミックはちゃんと把握しとかないと」
「初見殺しもはなはだしいぞ。もっとマシなギミックを持って来い!」
イチゴウは拳を引き、もう一度拳を振るう。
今度はただの拳ではなく、見えない衝撃。
だが問題ない。
至近距離でくらっていたはずのブラックは生きていた。
おそらく出始めは、まだ衝撃が完全ではないのだ。
つまり、完全でない状態なら食らってもぎり大丈夫というわけだ。
僕は空へ打ち上げられ、ブラックよりももっと後ろで着地した。
思った通りダメージは少ない。
この程度なら魔法で回復できる。
「お前、二種類しか技ないのかよ。戦略の幅狭すぎるでしょ」
そんなことをイチゴウに言いながら、僕は回復魔法で回復する。
「お前こそ、そろそろ本気になったらどうだ?」
挑発するようにイチゴウは言う。
たぶん、可能性エネルギーを使った戦い方の事を言っているのだろう。
「あれは消耗品。ただの普通の魔法だけが、いつでも100%の僕の本気だ」
僕は可能性エネルギーを使いたくなかったので、丁重にお断りし、それっぽい答えを返した。
「なら、俺の本気に答えてみせろ!」
イチゴウは、再び拳を構える。
だが今までと何かが違う。
おそらく、今までよりも数段上の衝撃を放つ気なのだろう。
「いいだろう。これが最終決着だ!」
僕はそれに答えるように、魔法の構築を始める。
火、風、水、光、闇。
五属性全ての魔法弾を出現させ、それを反発させあうことで、互いのエネルギーを増幅させる。
そして、そのエネルギーが極限まで高まった時、魔法弾を融合させることで、究極の破壊エネルギーを生み出し、それをビームにして解き放つ。
「極限破壊魔法!」
「究極の衝撃!」
極限まで高められた互いの一撃は、中心点にいるブラックへ迫る。
「なぜ、どうして負けた!私は、最強の能力を与えられたはずなのに!? なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜ……!?」
ブラックは発狂の後、何かに気がつき止まり、ただ一言ボソリと呟いた。
「私は、巻き込まれていただけ……?」
ブラックは蚊帳の外だった。
戦ってるのは僕とイチゴウ。
ブラックは最初から、表も裏もない地平線でただ突っ立っていただけなのだ。
だから戦況を何度反転させようとも、ヤツの状況は変わらない。
だってアイツは、戦ってすらいないのだから。
ーーーーーー
「いい一撃だった。僕たち、親友になれそうだ」
「姑息と呼んだことを謝罪する。お前はクソ強い」
あの一撃を持って互いの強さを認めた僕らは、ボロボロになった城の中心で握手を交わす。
戦いの中で、僕らはわかりあえたのだ。
奇妙な話だけど、いがみ合ってたはずなのに友情すら感じている。
「「それで」」
僕らは地面に転がる肉片を見下ろし、一言だけ吐き出した。
「「きったねぇ。ゲロみたい」」
やっぱり僕らは、とっても気が合うみたいだ!
「尊厳破壊もいいところだ。まったく、アナタの息子は……」
「流石……俺とアイツの息子だ!ダークマター!」
ハドウと父はテンションがまるで真逆だった。
やああああっとブラック倒せた。
ふう……長かったぜ。(サボってスターレイルやってたのは内緒)
追記
最後のブラックの台詞変更しました。
変更前の台詞を記念にここに残します。
「なぜ、どうして負けた!私は、最強の能力を与えられたはずなのに!? まさか……まさかまさかまさかまさかまさかぁああああああああああ!私を相手の味方と認識した上で、互いに互いを敵と認識し戦うことで、コインの表裏を無くし、反転を封じた……だとォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」




