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コインは裏返る

城の中に入ってきた悪の気配。

金髪で高身長なソイツは、殺気を隠せずにいる。

彼は待ち望んでいたかのように、僕らの出迎えを歓迎した。


「ヤミノ・ビックベンにハドウ・ミチマサか。魔王と勇者が仲良く密会なんて、許されると思うのかい?」


ヤミノ・ビックベンは父の名前だ。

その名を出した彼を、僕は知らない。

だが、僕の父とハドウはやつが何者か知っているようだった。


「魔王は悪に生きるもの。どこにおかしなところがある」


「なんと言おうと、犯罪は犯罪だよビックベン。運命反逆罪は、唯一にして絶対の罪だ」


互いに一歩も引くことなく、バチバチとぶつかり合う父と金髪の男。

そんな間に、僕はハドウに金髪男の正体を聞いてみることにした。


「あの人は?」


「超・善組織執行部部長。名前は、ブラック・ホワイト。俺たちを勇者と魔王に指名したイカレ野郎だ」


ハドウは私怨混じりに僕に話す。

執行部……つまりアイツは、僕を襲った奴らの上司ってことか。


「そんな敵意を向けないでくれよ。今日は君たちを取り締まりに来たんじゃない。そこの彼を、引き渡してもらいに来たんだ」


ブラックはへらへらした顔をしながら、僕を指差す。

ハドウは一つ、ブラックに聞いた。


「もし断れば?」


「お前ら全員、今殺す」


それを聞いた瞬間、ハドウの拳がブラックを襲う。

速すぎて、僕の視界

ハドウは一瞬のうちに距離を詰め、そしてブラックが反応するよりも先に、ブラックをぶん殴る。

その衝撃で、ハドウが踏んでいた地面が割れる。

だが、拳が直撃したはずのブラックには傷一つだってついちゃいなかった。


「俺の拳を受けきれるとは……貴様、超能力者か」


「流石は元悪組織大幹部。能力だけかと思っていたけど、こんな力を隠し持っていたとはねぇ!」


「弱いままでは嫌なのだ。ので、強さを磨いたまでだ」


これが、ハドウ・ミチマサに眠っていたポテンシャル。

能力者としてではなく、ハドウ・ミチマサとして導き出した力。

完成された肉体から放たれるパンチには、とてつもない破壊力が込められている。

そのスペックは、並の超能力者なら簡単に凌駕できてしまうほどだ。


「滑稽だな。今の私は、力だけで十分だ」


ブラックは高らかに笑い、見せつけるかのようにハドウを押し退ける。

そして、余裕たっぷりに自身の能力について解説を始めた。


「私の能力は【反転(リバース)】。様々なものを、いのままに反転させる能力。ただし、意識を反転させて仲間に引き込んだりすることはできない」


「敵に能力を教えるとは。戦いの基礎を知らんのか?」


ブラックの余裕を、ハドウは疑問視する。

能力を用いた戦闘において自身の能力をわざわざ説明するのは、どうぞ攻略してみてくださいと言っているようなものだ。

自分の能力によほどの自信があるのか……それとも、単にイカれた野郎なのか。

どっちにしたって、厄介なのは確かだ。


「厚意を素直に受け取れないとは、とんだ捻くれ者だな。そしてすでに、情報戦は死んでいる」


意味深なことを言うブラック。

だが、ハドウは気にすることなく拳を振う。再びハドウの拳がブラックに直撃する。

だがやはり、ブラックには傷一つついちゃいない。

それどころか、まるで衝撃が反射したかのように、ハドウは後方へ吹き飛んだ。


衝撃逆行(インパクトリバース)。おめでとう。衝撃は君だけのものだ」


ブラックはわざわざ解説し、攻撃は無駄だと分からせようとしている。

そんなことで、ハドウが降参してたまるか。


「私の攻撃が効かなかったのは、衝撃を常に私の方へ反転させていたからか。強すぎる肉体も考えものだな」


ハドウは、自分の肉体を皮肉る。

そしてハドウと交代するかのように、父は魔法を放つ。


破滅の流星(フォルト・メテオ)!」

 

空中に、縮小された疑似宇宙を召喚し、その彼方より小惑星を隕石として降らせる。

近づくにつれ、大きく巨大に変化していく惑星は、ブラックを押しつぶす。

はずだった。

ブラックは迷うことなく隕石に触れ、そして一瞬のうちに消しさった。

そしてブラックは、何事もなかったかのように解説を始める。


性質反転(マジックリバース)。炎は溶け、水は砕け、風は止み、光は塗りつぶされ、闇は輝き照らされる。そして、君の創造は破壊される」


「魔王魔法すら消し去る力……俺様の魔法だけじゃ厳しそうだ。となれば道は一つ」


魔王魔法なんて未知のワードを出しながら、父はハドウと目で通じ合う。

それはまるで、二人に残された最後の手段を行使する合図のようだ。

ハドウは瞬時に父の意図を理解し、同意する。


「いいだろう。魔王の力、貸してもらうぞ!」


「魔王と勇者の共闘、いいじゃないか!……大歓迎だ」


ブラックは興奮し、僕らに不気味な笑顔を見せつける。

その恐ろしさに怯むことなく、二人はブラックに立ち向かうのだ。


「ふん!」


ハドウは突然、地面を殴りつける。

その行動に、ブラックは疑問を抱く。


「どこを狙っている?私はここだぞ」


ブラックの足元に魔法陣が現れ、次の瞬間に地面がえぐれる。

まるで、衝撃が転移したようだった。


「転移魔法の応用だ。ヤミノ!」


次の一手をうてと言わんはわかりに、ハドウは父の名を叫ぶ。


「アースバインド」


すかさず父が魔法を使い、舞い上がった土煙を鎖へと変え、ブラックの手足を拘束する。


「どうやら、視認したものしか反転できないみたいだね。でなきゃ、俺様のバインドをくらう理由がない」


拘束され、身動きが取れない苛立ちからか、ブラックは舌打ちする。


「しかしこんなもの、すぐに反転させて脱出すれば……」


そして、父の考察にうんともすんとも言わず、ブラックは視線を拘束具に移し、解錠に集中を始める。

この瞬間、この時を待っていたかのように、ハドウは飛び出し、ブラックの腹を殴る。


「がはっ!?」


解錠に集中していたせいか、反転が間に合わずにダメージを負うブラック。

そして二人は、反射の発動条件を、視認していることだと確信する。


「やはり今か!我々の攻撃が届く瞬間は!」


ハドウは直線上に高速移動しながら、ブラックに視認されるよりも早く、殴る蹴るの攻撃を仕掛ける。

その電光石火の早業を何度も何度も繰り返すことで、バインドや父から意識をそらす。

そして父は、ハドウを巻き込んでもおかしくない協力な魔法で、さらにブラックの思考を乱そうとする。


属性魔法連弾(ランダム・ラッシュ)!」


ブラックの周りを、様々な色をした無数の魔法(マジック)ゲートが取り囲む。

ゲートの色は全部で七色。

色それぞれが、対応している魔法を表している。

そして父の合図と同時に、一斉に魔法が放たれた。

圧倒的物量による、反転妨害。

ブラックはさらにダメージをくらい続ける。


この戦場の有利不利は、二人の共闘で完全にひっくり返った。

そして僕は、確信する。


「確かにこれなら勝てるかもしれない。能力の発動条件が、本当に視認することなら……な」


勝利と、敗北の条件を。


「老いぼれどもが調子に乗るな……!貴様ら程度の醜いあがきなど、完全に、完璧に!無意味であると思い知れぇええ!」


世界が止まった。

誰も動けない、動かせない。

そんな中でただ一つ、ネジ曲がり始めたものがある。

決していたはずの過去だ。

すでに確定し、変えられない事実であるはずの運命の軌跡。

それが、ゆっくりとじっくりとネジ曲がり始めたのだ。

その際、一つの巻物が飛び出す。

ハドウと父、そしてブラックが描かれている巻物だ。

その巻物は、これまでの戦局を書き記したものだった。

だが、内容は白紙へ消えた。

そして、ハドウと父が優勢のように描かれていた巻物は、気がつけばブラックが優勢のように描き直されていた。

そして巻物は閉じられ、再び時は動き出す。


ハドウは全身が殴打されたかのように吹き飛び、父は魔法攻撃によって、地面に叩き落される。

まるで、自分のダメージを二人へ移したかのように、ブラックは傷一つなく平然と立ち尽くしていた。


「罪深きクズ共が……!視認なんか必要ない。集中さえ出来れば!余裕で反転できるんだよ。そして、反転できるのは傷や魔法や攻撃だけじゃない。戦況だってご覧の通りさ!私のダメージは完全に癒え、貴様らは私に与えたダメージと同じ傷を負う。私を攻撃なんぞ、完全に無意味だ!」


たまりきったフラストレーションをぶちまけるかのように、ブラックは叫び散らす。

その凄まじい姿は、この場の全員が気圧されそうになるほどだった。


「状況にすら干渉できる能力……過去の私に匹敵するほどの力か!」


「こんな能力……どう攻略すれば!」


ハドウは過去に失った自分の能力と比較し、強大さを実感する。

そして、父は高すぎる壁を前に万策を期す。

そしてブラックは、絶対的な力を手に、ただ一人笑ったのだ。


「攻略ぅ?そんなもの不可能だ。貴様らみたいな反逆者を根絶するための、あるべき理不尽。それが私の反転リバースなんだからなぁ!」


不可能……ブラックはそう口にした。

だが、それは嘘だ。

現に僕は一つ思いついたし、つまりアイツはその方法を知らないんだろう。

それで、さっそくその方法とやらを試してみたいのだけど一つ問題がある。

この方法は、ある人物が不可欠なのだ。

協力はする必要がない……むしろ、絶対にしてはならない。

だからこそ、僕の本気をぶつけられるアイツが必要なのだが、正直生きてるかどうかすら怪しい。

だが、50%問題ない。

アイツのことは正直苦手だが、あの不死身度とストーカー気質だけは心の底から信頼できる。

もし生きているのなら、そろそろここに着くはずだ。

というか着け。着いてくれ。着いてくださいお願いします。

じゃなきゃたぶんどっかで詰んでまう!


「貴様ら全員、不可能の壁に押しつぶされて、圧死するがいい!」


ブラックは、一歩一歩僕らに近づいてくる。

やはり、無制限でぶっ潰すしか方法はないのか……なんて思ったその時。

城の扉がバタンと蹴り破られた。

そこそこ大きな扉が宙を舞って、地面にぶつかりバラバラに粉砕される。

全員の視線は、蹴り破られた入口に集められていた。

そこにいた人物を見て、僕は勝利を確信した。


「やっときたか、待ちくたびれたぜ。僕のライバル」


そんな適当なことを言いながら僕は、入口を見る。

そこにいたのは、踏み潰されて死んだはずのイチゴウだった。

エグゼイド見終わったー!

医療+ゲームって作品だから、医療を扱う上でどうしてもついてくるテーマ的な重さと、ゲーム的なコミカル要素のベストマッチって感じでめっちゃ面白かった。


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