チチと裏ボスと不穏な気配
TOHK跡地……今は名もなき国。
国と言っても国民はいない。
形だけが残ったハリボテの国だ。
ここにいるある男に会いに、僕はこの国にきた。
「キョウメイさん。今度は何しに来たんですか」
国の中心にある城の中で、この国の王女だった人が話しかけてきた。
彼女の名前は……忘れた。
僕は他人のラブロマンスには興味がないんだ。
あと、そこまで僕と接点がない。
「またってなにさ。僕、ここに来るのは二度目なんだけど」
一度目はTOHKだった頃、そして二度目はたった今だ。
の、はずなのに……なぜだろう。
彼女は僕と初対面のはずなのに、明らかに僕を知っていて、この場所で会うのは二度目かのような反応だった。
そんなことは、ありえないはずなのだが。
「だからまたなのでしょう?ミチマサなら、二階の応接間に居ますよ」
「あざーっす」
教えてくれた王女様に軽く感謝し、僕は二階の応接間へ向かう。
例の招待状をカティアの父親に送った、張本人の元へ。
応接間の前へたどり着いた僕は、勢いよく応接間の扉を開き、中にいるであろうヤツに向かって叫んだ。
「ハドウ!僕はお前に教えてほしいことがある!」
やはり中にハドウはいた。
50代のおっさんの老け顔は現在で、やはりお姫様とはだいぶ年の差を感じる。
まあ、色々あったししょうがない。
とりあえず、優雅に紅茶を飲んでくつろぐなんて時間は終わりにしてもらおう。
向かい側に座ってる人には悪いけどご退席を願おう。
……コイツ友達いたのか。
そのたぶん友達であろう人は、僕を見るなり嬉しそうな声で話しかけてきた。
「おっ、ダークマターじゃないか!久しぶりだな〜、元気にしてたか〜?」
ヤミノ・ダークマター。
僕の異世界ネームで、キラキラ感が強すぎるあまり人前で封印していた名前だ。
まあ、この世界だと、結構普通よりの名前らしいんだけど……。
ともかく、名を知っているのは、この世にオトンとオカンの二人だけ。
それで、久しぶりなんてワードが出てくるのは一人しかいない。
最近、魔王であることが判明した僕の父だ。
「父さぁあああああああああああん!?」
驚いて叫んでしまう僕。
だが、この状況で一番驚いてるのは誰でもないハドウだった。
「えっ……あっ……え?」
みろ。驚きすぎて言葉一つ出てこない、威厳もクソもない悪組織大幹部の頂点に君臨していた男の姿を。
キョロキョロと僕と父を交互に見続け、まるでショートした機械みたいだ。
そんなことを構いもせずに、父はハドウに僕を紹介し始めた。
「紹介します。彼は私の息子のダークマターです!」
「えっ……あれ……あいつの名前はキョウメイなんじゃ……」
「いやぁ、本人が恥ずかしいみたいで……学校では、そっちで名乗ってたみたいです。というか、ハドウさんはすでに息子と知り合いだったんですね」
「えっ……あぁ、そうだとも。彼とは死闘を繰り広げた仲でね。今の私があるのも、彼のおかげなんだ」
ようやく正気に戻ったハドウは、それっぽい威厳を醸しながら語る。
「そうなんですか。いやぁ、流石はうちの息子!」
突然に父に褒められ、ほんの少しばかり嬉しくなる。
だがしかし、こんな話を聞いている場合ではないのだ。
「って、そんなことはどうでもいい!ハドウ、お前が校長……悪組織の頭領に寄越した招待状についてなんだけど」
僕は話をぶった切ってでも、ハドウに聞くことにした。
だがその時、ズシン……っと地面が揺れた。
地震ではない。
何かが落ちたその衝撃で、大地が揺れたのだ。
僕らは感づく。
城の中にいても感じる、最悪な殺気を。
空気がピリつく。
「この揺れ、この殺気……まさか」
ミチマサは、何かに気づいた。
誰が来たのか、わかったのだ。
僕は何も気づけなかったけれど、ミチマサの様子を見て、何となくそんな気がした。
そして、その答え合わせの時間だと言わんばかりに、お姫様は息を切らしながら応接間に入ってきて、来訪者の存在を告げる。
「ミチマサ大変!誰かが、ここに来る!」
戦いの気配が色濃く染まる。
ここはすでに戦場となった。
だから僕らは武器を取る。
招かれざる客を葬るために。
逃げることは許されない。
奪われる前に奪えなければ。
僕らの明日は闇に消える。
だから僕らは立ち向かう。
戦争が始まった。
まさか土日でこんな疲れるとは思わなかった。
体力回復の見込みがマイナスレベルなんじゃが……。




