伝承の蛇 5
お久しぶりです。
「私の名前は・・・ククルだ。そう呼んでくれ。」
とっさに神話のヘビの名前であるククルカンから拝借した。
まあ、本人(本ヘビ?)に会うこともないだろうし。
しかし、サミラといったか。その・・・なんというか、こう、ぽやーっとした子だ。
あの三人組やいつぞやのオッサン、それにこの子は浅黒い肌に暗い髪の毛をもっていた。
唯一違ったのはこの子の瞳が金色であり、その他は黒や茶色だった。
「その、サミラちゃんは私が怖くないのかい?」
かねてよりの疑問である。なにせ大の大人が失神する位だ。
サミラは俺の目を見ながら、首をすこし傾げる。
「え?別に怖くないよ?おじいちゃんがヘビさんを大切にしなさいって言っているし、おじいちゃん自分で飼っているし・・・あ、私もよくお世話するんだよ!」
ヘビな俺が言っちゃなんだが、趣味の悪い爺様だ。
うん、教育上良くない。いや、待てよ。あえて飼うことで偏見に左右されないよう育てているのか?
実際そこまでは考えてないのだろうが・・・っと話が逸れた。
「ほう、ヘビを飼っているのかい?いい子だね。ところでその首飾り、なかなか珍しそうだ。」
本当はヘビ飼ってるほうが珍しいのだが・・・と思いながら、例の神様のメッセージが入っていた首飾りについて聞く。
「これ?これはおじいちゃんが私にくれたんだよ。私の宝物!」
サミラはにこりと笑う。かわいい笑顔だ。
だが、神様と直接かかわりがあるわけではないようだ。
とはいえ、あの装飾には何かあるかもしれない。調べる必要がある。
ここはひとつ・・・
「宝物か。私の宝物はこれだよ。触ってごらん。」
といって額を見せる。
『えっ?』
今は宝石が付いているように見える、我らがアッちゃんである。
「わぁっ!きれい~!!」
と、アッちゃんを触るサミラ。
アッちゃん、小刻みに震えているけど大丈夫か?
そして、本題に入る。
「よかったら私も宝物を触ってもいいかい?」
欲すればまずは与えよ。ってね。
改めて触ってみると、光るわけでも文字がでるわけでもなかった。
尻尾で撫でているが、見た目どおりの木の細工だ。
(どうだ、アッちゃん。)
(この木はオアシスの木だ。それに神々の比較的新しい形跡を感じる。
む?御主人。下のほうに穴があるぞ。)
垂れ下っているため、気がつかなかったが装飾の下には確かに小さな穴があった。
何気なしに穴に触れると
「あれ?」
ぷるんっ! という可愛い効果音とともに俺は装飾に吸い込まれた。
中は暗いが、外の様子はわかる。戦隊モノロボットのコックピットのようだ。
「これも神様の仕業かねえ・・・」
こうも無茶振りな展開だと、そうとも疑いたくなる。
おそらくは、これでこの子に着いていけということだろうが―
「あんまり使い勝手は良くないな。」
この巨体である。
首をあげれば、大人が見上げる位の大きさだ。
そんなモンスターの類が町で突然現れれば騒動になる。
結果として、サミラに影響が全く無いはずがないだろう。
砂漠を抜ける移動手段として考えておくか。
『あれれ~?』
サミラのどこか抜けた声が聞こえる。
・・・天然っていいよね。
『御主人、なにか不埒なことを考えなかったか?』
「気のせいだヨ。さて、ぷるんっと。」
巨大なヘビがいきなり消えたと思ったら、またいきなり現れたのに驚いたのだろうか。
サミラの金色の双眸が大きく開かれていた。
移動手段はとりあえず手に入れた。あとは、今後の方針だな。
まずサミラがここに来た経緯、尋常ではない。
事の背景は当事者に聞いたほうが早い。
と言うより、サミラは何も知らないだろうという俺の直感である。
まずはサミラを遠ざけたほうがいいだろう。
「サミラちゃん、あそこのラクダをあっちの木に結び直すことはできるかい?
私はごらんのとおり、手がなくて結べないんだよ。」
嘘である。さっきまで尻尾で器用に結んでいた。
うなずいて、ラクダへと走っていくサミラ。素直なのはいいことだ。
三人組はサミラの走ったほうの反対側に拘束してある。
さあ~て、楽しい尋問タイムのはじまりはじまり。