伝承の蛇 3
俺は木の上から3人を監視していた。
話し声は距離があるため聞こえない。
元々アッちゃんの補助があって、何とか音が人並に聴き取れる程度である。
というのも、ヘビは聴覚が退化して耳が皮膚の中に埋もれているためだ。
もしアッちゃん無しなら相当つらい。彼は文字通りサポートしてくれているわけである。
「この距離では会話は聞こえないが、最後尾のラクダから違う熱反応がある。おそらく人間だと思うが・・・」
『ああ、微動だにしない。寝ているにしては不自然な体勢だ。拘束されているやもしれん。』
「・・・おそらく人攫いだな。」
『十中八九そうだろう。それより、あそこからオアシスと同じ波長があるのが気になる。』
俺が来る以前にオアシスに足を運んだことがある人間だろうか?
誰であれ、あまりこのオアシスに留まって欲しくない。俺のお気に入りスポットを荒らされたりしたら大変だ。
隊列の通る先に移動し、尻尾を一閃!
ブンッ。
『お見事!』
「神様と魚獲りをしたのが役立ったよ。」
尻尾の先にはラクダの上にいた人間。
安定した木の上に一度置こうとしたとき、寝息が聞こえる。
ふつーに寝てるな、おい。
うーん、自分の欲を優先させてついつい強行手段に出たが・・・間違ってないよな?俺。
っと。どうも気付かれたようだな。奴ら後ろを振り向き叫んでいる。
さて、モンスターパニックの主人公を演じますか!
そしてこちらに3人が振り向き・・・
「シャァアアアーーーーーーーーッ!」
◆side 三人組
「さて、そんなこんなでオアシスに着いたわけだが。」
「だれに説明してるんだ?マハル。」
オアシスはかなり広い。
この砂漠にもいくつかオアシスはたくさんあるが、正確な数が把握されているわけではない。
それでも、ここまで大きいのは三人組は初めてだった。
「案外、おとぎ話の世界だったりしてな。」
と、茶化すのはハーディー。
一行は休める場所を探すべく、奥へと進む。
荷物はラクダ上にまとめ、コイントスで負けたカシムが牽引している。
「あれか?『アルサドとヘビ』だっけ?言われてみりゃそんな雰囲気はあるな。」
カシムも話を思い出したのか、同意する。するとマハルが、
「おお、ヘビに助けられた男の話だな。額の宝石を求めて昔流行ったやつだな!」
この3人。案外ロマン好きなのかもしれない。話は続く。
「もしも、この後で宝石ヘビと出会ったらどうする?」
カシムは二人の顔をみる。
ブンッ。
「話をきく限りじゃ、そんなにでかいヘビじゃないだろう。うまく捕まえれれば美味しいな。」
「いや、そんな小さなヘビなのに人間を運ぶくらいだ。用心して・・・捕まえれたら確かに美味しい。」
ハーディー、マハルはそれぞれ答える。が、どうも2人とも、いや3人とも考えは同じのようだ。
カシムも答える。
「俺もそう思う。でも今まで誰も見つけられなかっ・・・て!お、おい!あの娘はどこだ?!」
「は?」「へ?」
カシムの驚く声で、後ろから牽引していたはずのラクダを見る。
娘を乗せたはずのラクダの上には、何も乗っていなかった。
「どこかで落としたのか!?」「いや、音はしなかったぞ!!」
来た道を見返し、混乱する3人。そこえ・・・
シュルルルルル・・・ガサ、 パキ、
3人の耳に、何かが地面を滑る音や枝が折れる音が聞こえる。
そして振り返り・・・
「シャァアアアーーーーーーーーッ!」
顔から血の気が引いた。
「で、出たあああああああああああ!」
「うわアああああああああああああ!」
「あばばばばばばばばばばばばばば!」
さんにんぐみは こんらん した!