伝承の蛇 2
相変わらず短い・・・
あれから何年経ったのだろうか・・・
驚きだ。自分は確かに一匹のヘビで、この砂漠の小動物を獲って暮らしていた。
それが今では圧倒的質量を誇る巨大なヘビに成長した。
モンスターパニック物の映画じゃ引っ張りダコなんじゃないか?
小動物をエサにするにはやめて、迷いラクダなどを絞めて美味しくいただいている。
この身体、実はお腹が減らない。いかに自分が人間離れしているかわかる。今はヘビだけど。
だが、動物としての勘や身体を鍛えるにはやはり狩りが一番手っ取り早い。
そんなある日。オアシスのお気に入りの場所で、日課の行水をしているときである。
「アッちゃん。」
『うむ。』
オアシスからかなり離れているが、小規模の商隊だろうか。ここにまっすぐ向かっている。
珍しい。たしかにあのオッサン以来だから珍しいのだが、何やら様子がおかしい。
旅の用意も必要最低限で、なんというか、どこか人目をはばかる感じだ。
夜逃げか?
『ひとまず隠れて様子を見ては?いたずらに騒ぎ立てると、かえって厄介やもしれぬ。』
「ああ。あの木の上がいいだろう。」
◆side 商隊?
この日、三人の男達と一人の少女が砂漠をさまよっていた。
この四人、急いでいる。なぜ急いでいるかというと・・・
「カシム、あの娘はまだ寝ているのか?」
と、太った男が後ろを向く。
「ああ、ハーディー。もう町を出て大分経つがイビキかいてやがる。」
あきれたように、カシムと呼ばれた小柄の男が答える。
「カシム、ハーディー、この仕事は本当に大丈夫か?なんか心配になってきて・・・」
最後尾の頭の薄い男が、伏目がちに問いかける。
「マハル、大丈夫さ。やつから魔具やラクダまでお膳立てしてもらったんだ。それにどの道、失敗はできねえ。」
「でも、こんな小さな女の子を誘拐だなんて・・・」
いかにも、彼らは少女を拉致し、依頼人の元に運ぶ真っ最中である。
犯罪はいかに初動捜査の速さが決め手になる場合が多いといわれている。
事後、経過すれば証拠、証言の確保は困難になる。
証拠は変容し、証言は創造されがちなためだ。
とはいえ、彼らはけしてこの道のプロではない。
小柄なカシム、太っちょのハーディー、薄髪マハル。
三人は幼少のころから、貧民街でつるんでいた悪たれ達であった。
彼らが他の貧民街からの出と違うのは、紆余曲折あれど真面目に商売をしていた。という点である。
「していた」というのは、彼ら三人がとある仕事でミスをしたことに始まる。
町長に頼まれた仕入れの品を、相手方に納品したのだが・・・
「商品が壊れている!と言われてもなあ・・・」
思い出してため息をつくカシム。
「んで、いちゃもんつけられて、あの怪しいオッサンの手先と。」
あのオッサン、いつか目にもの見せてやる!と意気込むハーディー。
「ああ、ハーディー。だが、やりきれんな。 ん?マハル、どうした?」
あさっての方向を向いているマハルにカシムは問う。
「なあ、あれオアシスだよな?ちょっと休憩しないか?」
と、マハルが指を指す先には確かにオアシスがあった。
「確かに、そろそろ休憩しないとな。何分急だったから、いい加減ラクダがもたない。」
「カシム、ついでに水分補給でもしよう。万が一のためだ。」
「ハーディーはでかいから水は倍、必要だな。」
月の下に響く三人の笑い声の元、一向に起きる気配のない少女。
彼らは確実にオアシスに近づいていた。
しばらく続きます。
暴れる設定だすんじゃなかったー!
事前の話が脳内で培養されすぎた。
話まとまったら統合する予定です。