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神様稼業  作者: ガム
19/25

伝承の蛇 15

微グロ注意

※操作ミスで二重投稿になっていました(汗

「ヌルいわ小僧ども!」


首領が振るう鉈はカシムを追い詰める。

首領が撃つ矢はハーディー達を追う。

これまでの戦いで積み重なった疲労も追い打ちをかける。

特にハーディーとマハルは接近戦に向かないため、遠距離からカシムを援護しようと動いた。

ところがである。


「駄目だ!あの矢のせいで攻撃できないぞ!」


「喋ってる場合か!うぉおおお!」


逆にクロスボウで牽制され、思うように行動できない。


つまりカシムは腕一本で相手されているのだ。

しかも剣撃を片手でいなされているどころか、徐々に押されている。


「なぜだ?砂漠で戦ったときにこんな・・・」


戸惑うカシムの横を、矢が空気を裂いて頭を掠めていった。

そしてその矢は、


「ぐッ!」


「ハーディー?!クソっ!」


ハーディーのうめき声が聞こえたため、とっさの判断でカシムが砂を蹴り上げる。


「む?!眼つぶしとは小癪な」


「一旦退くぞ!」




「大丈夫か?」


「痛ってえ!すんげー痛ってえ!!」


「つーかあんなのに勝てるのか?」


あの後、怪我をしたハーディーを連れてツルスのテント群に逃げ込んだ。


遠くから「出てこい!」と叫んでいるのが聞こえてくる。

誰が行くか!とマハルは物陰から首領を覗いた。


「前のでこりたのか奴さん、万全な装備できやがった」


「正攻法じゃ勝てないな・・・」


三人がかりであのザマだ。まともにぶつかれば文字通りバラバラにされるだろう。


「じゃあどうするんだよ。ハーディーは火もないし、俺はもう叫んでも何もでないぞ・・・」


カシムは壁にもたれながら、ぼんやりとテント群を見つめてつぶやいた。

灯りが三人を照らす。


「ここは明るすぎる。傷の手当てが終わったなら暗がりに移動しよう」


暁の空の下、沈黙が支配する。


マハルは嘆いた。

この目の良さで見張り台では生き残ったとはいえ、なんと自分の無力なことか。


カシムは悩んだ。

唯一、俺は自分の能力を把握しきれていない。

それが判ればこの状況をひっくり返せるはず。だがしかし、どうやって?


ハーディーは・・・痛みに意識をとられていた。

あだだだだ!今日だけデブに感謝だ。そう思わなきゃやってらんねえ!


沈黙を破ったのはカシムだった。

ただし、感情の発露という形であったが。


「畜生!」


そう叫び、地面を平手で叩いた。


「痛ッ!」


ハーディーも不意に大声をあげた。


「二人とも静かにしろよ―」


ヤツが来たらどうする。と続けようとしたマハル。

だが何かが壊れ、落ちる音が、彼の言葉を遮った。


ヤツが来たのか?いやいや、音がしたのは奴がいたところの反対側だ。

回り込まれる前に、先に出会うはずだ。

では何が落ちたんだ?


マハルは落ちたソレが目に入った。


ん?あれは・・・しかし何で・・・もしかすると・・・


次にマハルが原因であろうものに目を向けた。



その時にマハルに電流走る。


「ああーーーー!!!」


「「お前が静かにしろ!!」」


「あーなんで気がつかなかったんだろう!」


次の瞬間、マハルは二つの鉄拳により沈黙した。




「ほう、とうとう観念したか」


首領は出てきたマハルを見てニタリと笑った。


「いいや、観念するのはオマエのほうさ」


「減らず口を。他の二人はどうした」


マハルがニタリと笑う。


「オマエの後ろさ。」


首領は不意に背中の違和感から身を翻す。その目に小さな、しかし熱気を持った紅い塊がいくつも飛び込んできた。


さすがの首領もこれには肝を冷やしたのか、慌てて回避する。


「ぬう、未だ知らぬ魔具があるとは」


首領が知る由もなかったが、ハーディーの「火球」である。

ハーディーは、何とかコントロールして首領の足を止めるべく大量の弾幕を張った。


「質より量か。どんな魔具であれ、使い手を始末すれば同じことよ」


ハーディーによる炎の弾幕の隙間を見つけて、首領はクロスボウを構えた。


その時である。

何かが破裂する音が首領の耳を刺激し、とっさに後ろへ一歩下がった。

彼が後ろに下がったのは経験か、はたまた直感によるものなのか。


首領が立っていた位置には、構えていたクロスボウが転がっていた。

今度こそ首領は驚いた。彼の自慢の武器は、銃床から切断されていたのである。

そしてその相方は綺麗な断面図をみせ、砂の上に転がっていた。


「ちっ!外したか」


暗がりの中から舌打ちが聞こえる。

カシムは地面に手のひらをつける格好で呻いた。


「ふ、ふふははははは!何だ。驚かせよって!」


いつの間にか火の弾幕も張られなくなった。二人の姿も見えない。


「ハゲを使って貴様らを定位置に移動させ、デブの魔具によって動きを封じ、貴様がトドメを刺す。なるほど、よく考えたものだ。」


「・・・褒められても・・うれしく・・ないね・・・」


カシムは既に限界に達していた。

もうすぐ戦いが始まって丸一日が経とうとしている。

武器は折れ、気合の声も枯れ、疲労も溜まる。

むしろ、よくぞここまでもったものだ。とカシムは思う。


「おまえ達とあのヘビのお陰で我々は何もかも失った。だがチビ、トドメをさしそこなったおまえを先ず血祭りにあげてやろう。そして残った者一人ずつその血で贖わせてくれるわ」


「よく・・回る舌だ。おまえは・・・みっつ、間違えている」


「何だと?おまえはもう助からんぞ。あの二人もどこへ行ったのやら。それもこれも、おまえがトドメをさし損なったから・・・」


「ひとつは・・・俺達は魔具なんぞ使っていない。ふたつ、あの二人は・・・役目を果たした。そしてみっつ―」




時間は少し遡る。


「ハーディー、喜べ。火だ」


マハルの目線の先には壊れ落ちた物、それは野営用の照明として使われている「かがり火」であった。


「よしみんなきけ」


監督のようにマハルが地面に線を引く。


「ハーディー。火の調節はできるな?」


「ああ、一日中撃ってたからな」


「カシム、なんとか『力』は使えないか?」


「後一回が限界だな。ノドも体力も・・・」


「それでいい。いいか、俺があいつの目を引くから、ハーディーは反対側。カシムはあいつの近くに隠れろ」


地面に線が足される。


「定位置についたらハーディーは火球を小さく、たくさん出してくれ。あいつの動きを止めてほしい」


マハルはカシムの顔をみる。


「そして動きが止まったところをカシムがトドメをさすんだ。」


「おいおい、それじゃ俺も巻き込まれるぞ」


「心配するなカシム。さっき叩いた地面を見てみろ。その先に何があったのかも」


言われたカシムは目をやる。叩いた手の跡・・・よく見るとその先端から、数本の切れ込みが砂の上を走っていた。

そのうちの一本は壊れ落ちた照明の台に繋がっている。


「あ」


「そういうこと。つまり多少離れていても大丈夫なわけだ。むしろこっちのほうが凶悪だな」




「そしてみっつ、おまえはもう死んでいる。」


どこからともなく世紀末救世主伝説のテーマが流れてきそうである。


「なにを馬鹿な。死ぬのはおまえだ。」


鼻で笑った首領がその足をカシムに一歩進めようとした。


「な、に・・・」


ずるり、と柔らかいものが滑る音がした。


「なんだこれは!」


「だから・・・言っただろ・・おまえはもう・・死んでいる」


「ぐわあああああああああああああ!!!!!!」


断末魔とともにドサドサドサ・・・と砂に塊が転がり、砂を赤く染めた。


「血祭りになるのは・・・おまえだったな。って聞いちゃいないか。」


しかし眠いな・・・と、カシムはそっと意識を手放した。




次にカシムが目を覚ましたのは、ベッドの上だった。


「目が覚めたかの」


声をかけたのはアルサドだった。


「爺さん・・・みんなは?」


「連れの二人はおまえさんを運んだ後、隣のベッドでよく寝とるよ。まだしんどかったらここで寝ているがいい」


「ありがとう・・ございます・・・」


そういうとカシムは再び眠りについた。


アルサドはやれやれと立ち上がった。

この三人があの「赤い角」を壊滅させたとは・・・

じゃが、町のお偉方は手柄を自分のものにしようと奔走しておる。

かわいそうじゃが、わしの力ではどうにもならん。

せめて、職ぐらいは探してやらんとジゴクに落ちるわい。


部屋のドアを閉め、外に出たところでふと思い出す。

そういえばサミラはどこに行ったのかのう?


主人公が格好よく智謀をつくし、敵を倒すっていうのをやりたかったんだけど・・・無理あるなあ。


ずいぶん長くやってしまった・・・

多分あと二回で「伝承の蛇」は終わります。


さて、次はどこに、何しに行かせよう?


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