伝承の蛇 14
板や建材が舞い、足場が崩れる。
マハルは地面に向かって落ち行くはずが、急に進行方向が90度変更されたように感じた。
「無事か?なんとか間に合ったようだな。」
「だ、旦那ぁ!」
「ククル殿!?」
二人がまず驚いたのは、ここにいるはずのない者がここにいたことと、その原因となった怪我である。
未だその傷は癒えず、赤黒く変色した肌が痛々しい。
だが、その傷以上の変化が二人を驚かせる。
「なかなかどうして、空を飛ぶっていうのは素晴らしい!」
そういうと大蛇は血の色をした翼を羽ばたかせた。
神様め。こんなことできるなら先に言ってくれよな~
傷は痛い。そもそもこの羽は傷から流れる血から作ったものだ。
だが、それを上回る歓喜が俺を支配する。
空を飛ぶっていいね!人類が挑戦してきたわけだわ。
この体にあたる風!よし、アッちゃんパワー全開!
「フッフッフッ ヒーローは遅れて現れる!」
俺は額のアッちゃんを通じて力を集中させ、咆哮した。
「それがメキシコ風!!」
放たれた紫色の光は敵の大砲を貫き、爆発を起こす。
「本当に神の使いだったんだ・・・」
「なんだ。信じてなかったのか?」
と、俺につかまっているマハルの顔を見た。本当に驚いている。
おいおい、マジで信じていなかったのか?
さらに敵陣へと羽ばたく。
先ほどの爆発と光線で薬が効きすぎたか、敵は一目散に逃げ出した。
「大砲は珍しいのか?」
「あの砲弾を射出する兵器ですかな?そういったものができたと聞いたことはありますが、やはりあれがそうですか。」
さすが、神はなんでもお見通しですな。と感心するアフマド。
珍しいと言ったのは、あれから一台も見ていないからである。
俺の目の届く範囲外から町に撃たれたら総崩れになることを懸念したが、安心してもいいだろう。
「おーい!旦那ぁ~、マハル~。」
「二人ともー 無事かー!?」
カシムの声に、マハルが下に手を振る。危ないっての!今降りるから!
「―すると突然、敵の後ろで爆発が起こり、その隙をついて俺達は窮地を脱出したわけだ。」
やれやれと腹をなでるハーディー。続けてカシムも首肯する。
「ホントホント、神に感謝だぜ。」
「フッフッフ。それ、俺がやったんだぜ。」
と自慢してみる。おお、いい感じで驚いてくれてるなー。
「二人とも、マジだ。」
ん?マハルくん。君は何を言っているのかな?
「なんてこった・・・」
「本当に神の使いだったとは・・・」
「よし、お前ら三人ここに並べ。丸焦げにしてやっから。」
そんなに信じられんかったかね。確かに初対面じゃ「人語を話すでっかいヘビ」だったけど。
「まあまあ、ここは戦場です。帰ってからじっくりやりましょう。ほら、夜も開けてきましたぞ。」
空の端がオレンジに染まりだす。
「そうですよ。さすが親父さ・・・ん? んん~~~??」
マハルが、遠くを見つめて目を細めた。
「旦那、旦那!」
「何だよマハル。今更丸焦げでも、毛は大丈夫だろ。」
俺達の髪は!?と頭をおさえるカシムとハーディーを尻目に、マハルの呼び掛けに応えた。
「誰かが敵の陣地から抜けだしましたぜ。」
ハッジ・ファハドは焦っていた。
逃げなくては!ツルスに渡りをつけるどころの話ではない。
どれもこれもすべてあのヘビのせいではないか!
倉庫から魔具まで出したというのに!
「なぜだ!なぜあの怪物がいるのだ!」
魔具「グロームの槍」
その筒から発射された槍が対象を穿ったが最後、鋼線を伝う電撃が全てを焼き尽くす。
だがその大きさと用途から、対人では過剰、攻城には心もとない。頼りない「旧大戦の遺物」とされた魔具である。
『赤い角』から砂漠での襲撃失敗の報告から、大型モンスター対策として暗殺者を送り込んだのだが・・・
「監視者の報告では、確かに仕留めたはずです。」
「現に生きているではないか!空を飛び、光を吹くなどという報告は聞いていないぞ!」
「それは・・・」
「神様の使いだからさ。」
不意に声が降ってきた。
少し遅れて、大きな影がその行く手を防ぐ。
その影がニタリと笑ったような気がした。
「ひいい!」
「貴様!ヘビめ!」
尻もちをつく彼の部下と対象に、目を見開き老人が叫ぶ。
「貴様が!全て貴様が!」
「ふん。そんな杖で立ち向かうなどと・・・分をわきまえるがいい。」
途端、紫色の光がハッジ・ファハドの網膜を焼き、その意識を白濁させた。
「逃げるな!押せ!押し返せ!」
『赤い角』首領はその大柄に見合う声をあげるも、帽子にあつらわれた赤い羽根は持ち主の疲労を度合いを示すかのように、ぺたりと下がっていた。
大声を張り上げながらも、首領は思う。
あのヘビが、砂漠での襲撃失敗その原因であるあのヘビが、あのとき以上の暴力をもって我々を蹂躙する。
はたして、監視・・・もとい視察にきたツルス本国の行政官は無事逃げおおせただろうか。
そしてわが主、ハッジ・ファハドは無事に脱出できたのだろうか。
「よう、また会ったなデカイの。」
「砂漠での借りは返させてもらうぜ。」
「この髪の恨み、てめえにぶつける!」
心配を他所に、チビ・デブ・ハゲが躍り出た。
三人はククルの指示で別行動していたのである。
「なめるなよ、貧民どもめ。ここで3人まとめて始末して汚い路地裏にたたき返してくれるわ。」
首領の手にあるクロスボウと鉈がギラリと光る。
三人組の因縁を断ち切る戦いが始まった。
『なんとか敵の親玉を捕らえられたな、御主人。最後の仕事ができたらついに家へ帰ることができるぞ。』
「やれやれ、仕事が『大暴れ』から『神話の創造』というのは虚偽表示もいいところだ。おかげで時間もかかったわい。」
それも送り先ミスが原因とは・・・
『そこも含めて、色々と帰ってから話に花を咲かすといい。』
「久しぶりに人間の身体か。寝ぼけて変な動きしないよな。」
『そうだな・・・おっと、「赤い角」の首領と彼らの戦いも始まったようだ。』
遠くをみれば、躍動する四つの影。
「勝ってくれよ、三人とも。」
作者の初めて買ったマンガは稲卓でした。
今回は遅れ来たヒーローが先生にプランチャせずに、敵に破壊光線をぶっ放してます。
時代の流れ的に「とある大蛇の破壊光線」とでもいいますか・・・
ピコン ―サブトン没収―
え?ちょ?何これ?
うわなにをするやm