伝承の蛇 13
「起きなさい。お前さんや。起きなさい。」
うーんあと10分・・・
「いいから起きなさいって!」
「ちょ、起きるから地獄突きは止めれ!」
そこには石像ではない神様が、手刀のポーズで立っていた。
「というかここ何処なんだ?」
「ここは我の空間、神様空間でウィリス。」
なんだその語尾は。
「最近読んだ漫画の真似だ。」
「ハッハッハ、お休み。」
「ま、待て。ジョーク!ノーカン!今日はお前さんにゴイスーでデンジャーな危機が迫っているので我が助太刀にきたのだ・・・でウィリス。」
「色々混じっているし、キャラ作りが半端じゃねえか。見ているほうが辛い。」
「え、あ、そのゴメン・・・」
筋肉娘め。シュンとしてもかわいくないぞ。
「それはそうと、どうしたよ。バイトについてはもう怒ってないけどさ。」
怒りは一周してどこかに行ったわい。
「そうそう、冗談めかしている場合ではないのだ。」
「神様だけだがな。」
「今、お前さんはぶっちゃけると仮死状態にある。」
スルーした上にかなり重要なことを言ったな。
「これは我の一部を完全に活用できていないのが大きい。送る場所を間違えた我の責任だ。」
ばつが悪そうに頭をかきながら続ける。
「そこで、ちと早いが我の特性をさらに覚醒させる。」
神様はいつぞやのように俺の肩に手を置き、術を唱えた。
突如、視界が真っ白になっていった。
ガンバンナサイネー
どこからともなく神様の声が聞こえ、意識が途切れた。
人の慌しい動きが体に響き、痛みで目が開いた。
ここは・・・
「気がつきましたか!」
アルサドの爺さんじゃないか。なんでこんなところに。
自分の体をみると、皮が煤けている。ところどころが赤く腫れあがり痛々しい。
「カシム殿から全て聞いております。今は御養生ください。」
その顔には、焦りがあった。
「町が、攻撃を受けています。」
シンセの町長邸は臨時司令部としてその役割を変えていた。
「見張り台より増援の要請です!」
「矢が足りない!倉庫から持ってきてくれ」
「弾幕薄いよ、なにやってんの!」
慌しく人の怒号が飛び交い、人が行き来する。
だが、飛び交うのが怒号だけではない場所も存在した。
前線である。
「帰ってくるんじゃなかった・・・」
「しょうがないだろう。曲がりなりにも生まれた町だ。」
と、矢が飛び交う中で愚痴をこぼすのはハーディーとカシムである。
この世界、大きな戦争も遠い過去の話となった。
今は、国という概念がなくなり、「おらが村」や、よくて栄えている「中央街」のみが自治権をもつようになった。
そのため、余りだした軍人を警備兵に改めて、故郷の治安維持に務めさせている。
一見、平和そうに見えるが同時に村同士の利権をめぐる小競り合いにて、警備兵の出番が多くなった。
村次第では、ある種の軍閥と化しているものもある。
もっとも、シンセやキトンのように環境や規模もほぼ同じであるため、争いがない例もある。
だが、職業軍人ではない以上、一度戦闘が発生すると男性陣は兵隊の真似事をさせられてしまうのだ。
なので三人組も戦うはめになっているのだ。
その昔、キトン、シンセの隣にて小さな変化があった。
いくつかの村落が合併して、ツルスという名で建国を宣言した。
新興国であったが規模を拡大させるわけでもなく、軍事侵攻することもなかった。
加えて辺境であるため、「国」というよりは「地方」というのが各村落の共通の認識であった。
だが今、そのツルスが明確な意図を持って自分たちの町を攻撃している。
「貧民街出身だから前線にも立たされるし・・・」
火を吹きながらぼやくハーディー。
「タイミング悪いよな。むこうさんは何考えてんだか。」
二人は戦場を駆ける。
「マハル大丈夫かな?」
マハルはその目のよさで見張り台にて状況を随時、臨時司令部に届けている。
「人の心配もいいが、俺たちの心配もしたほうがいい。」
と、カシムは折れた剣を敵兵の顔面に投げつけた。
「司令部より、『我に余剰戦力無し―』」
「もういい!畜生!上の連中は何もわかっちゃいねえ!!」
マハルは大きな声で叫んだ。
剛毅なようにも見えるが、膝の震えを隠すために叫んだのかもしれない。
従来詰めていた警備兵は遠方より矢で射られて重傷。
見張り台は防衛拠点として造られていないために増援を求めたが、その申し出は却下されたのであった。
「ここをやられたら、戦闘状況がまるでつかめなくなるぞ。だから金持ちは嫌いなんだ!」
素人の軍隊であるため、普通の軍隊よりも出資者がでかい顔をする。
金の使い方をとやかく言うならともかく、指揮にも口を出すから始末が悪い。
矢を板で防ぎながら、水筒をあおる。
「ずいぶんと嫌われたもんですな。」
野太い声がマハルにかけられた。
「親父さん!どうしてここに!?」
「援軍は無理ですが、一人ぐらいは手伝っても大丈夫でしょう。」
と、アフマドは食料や武器を肩からおろした。
「義父は高齢ですので家でククル殿とサミラを看ています。」
と咳払いをし、ニヤリと笑った。
「ツルスの烏合の衆に目にもの見せてやりましょう。」
「頃合いだな。太鼓を叩け!」
ツルスの本陣より太鼓の音が響く。
すると、後ろに控えていたツルス軍本隊が進軍し始めた。
「進軍開始しました。」
大柄な男は陣の主に報告する。
「うむ、敵は疲弊している。そのまま押しつぶせ。」
「ハハッ!」
そう言うと、大柄な男は恭しくその場を後にした。
「しかしよかったのですか?」
陣の主の横にいた部下は主に問う。
「構わん。ツルスに渡りをつける以上、これほどの土産はないだろう。」
「・・・あなたの町だったのですよ?」
「そうだ。ワシの町『だった』のだ。それがどうかしたのか?」
そう言って元町長、ハッジ・ファハドはシンセの方角を見つめた。
「火が切れた・・・」
ハーディーが最初は火を飛ばして敵をまとめて倒していたが、火種がなくなったために徐々に追い詰められていった。
「もう叫べん・・・」
カシムは気合の雄たけびをあげながら手を振り回し、敵を血祭りにあげていった。
しかし本人が使い方を間違えているため、こちらも追い詰められていった。
「観念しろ、貧民め。」
味方はもういない。
みんな槍の穂先に呑まれていった。
二人は背を合わせ、槍のカーテンと対峙する。
「これはもう駄目かもしれんね。」
カシムがつぶやき、槍の穂先が光った。
「本隊が出てきたようですな。」
「あれが本隊ではなかったのですか!?」
マハルは目を剥いた。
もう矢尻が板を突き抜けつつある。
これ以上の攻撃は耐えられないだろう。
「これが最後の武器です。」
「石じゃないですか・・・」
ないよりましだけど。
「司令部がケチだったので自分で調達したのですよ。」
と、アフマドは微笑んだ。
「しかたがない、とりあえず投げま―!」
マハルは自分の目が良くなったことをハーバクに感謝した。
「逃げろおおお!!」
その瞬間、砲弾が見張り台を粉砕した。