魅と祙
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
現役、難関大学受験生の動画を見るのにハマってます。
問題は解きたくないですが、内容は面白いです。
神社巡りが趣味になって、ひっそりとしたご縁を感じる事がままぁある。今回もそんな巡り合わせ。難関大学を目指す浪人生が息抜きに上げてくれた動画に、こんなものがあった。
――今回の現代文、とても面白くて漢字の成り立ちだったんですよ。例えば魅力の『魅』。未だ鬼にならないって書くんです。これって……。
もう受験なんて懲り懲りだし、やろうとは思わないけれども、頑張っている人は時折面白い話をくれる。考え抜いた回答とか、今みたいな難しい問題の紹介。
そこでふと考えた。何故部首が『鬼』なのか。何故部首が『礻』では無いのか。『魅力』という言葉に成り代わるくらいならば、もっと崇高な部首を与えられるべきではないのか。
そんな疑問を抱いたまま、頭の良い彼に会うことになった。挨拶もそこそこに、私は話を切り出した。
「『魅力』の『魅』って、未だ鬼にならないって書くんだよ。なんで……神様と同じ部首じゃないんだろうね……」
生粋のブラックの良さ全て消し去るように、ミルクと砂糖を入れながら、スプーンを掻き回す。昔から完全な黒は好まない。黒のなり損ないである茶褐色が好き。
満足そうに甘い珈琲を眺める私を一瞥すると、持っていたメモ帳に何かを書き始めた。
「あるぞ。その字」
「えっ?」
胸元まで持ち上げたマグを落としかけるのを、力を込めて押しとどめる。書いてあるのは、余り目にした事がない単語だった。
「祙。魅と同じ意味を持つ。つまり、すだま、もののけ、化け物等々……。まぁ昔の人間は不可思議なもの、神やら魔やら分別しなかったんだろ。何方も不可思議なもの。一括り」
私は書かれた文字に釘付けになり、しげしげと眺める。部首が違っても意味は全く同じ。未だ鬼にもなれないならば、未だ神にもなれない。余りにも中途半端である故に、もののけ。
好奇心に満ちた私の反応に彼は気を良くしたらしい。彼は頬杖を着くと、私を指さした。
「未だ鬼にも、神にもなれない。だから物の怪なんだ。半端物ゆえ。でも半端故に引き付けられるんだ。お前が完璧超人嫌いなのと一緒だよ」
「ま。最初から何でも出来て、頑張らない奴は好きじゃないけど。壊してやりたくなる」
「出来やしないよ。お前はお人好しだから」
オマケ
「例え神様になられても、貴方様の事を魅力的だと思いますよ」
「ふふふ。未だ神になれないものが、神になるには力が必要なんだ。私は力を得て、その境地に立ったと受け取っておくよ」
「その経過を見たら、もっと魅力的に見えるでしょう」
「思い出したくないなぁ」
未だ神にも鬼にもなれない。
でもだからこそ、引き付けられると思ってますよ。
だって葛藤とか努力がないと、なれませんから。
それこそが魅力だと思ってますよ。
最後の一文は、そんな彼女の一面を表したものかと。
神様にも鬼にも慣れやしない。
きっと壊す時に躊躇ってしまう。
それこそが、この子の人間らしい魅力。お人好し。
オマケで登場した方も、何方の漢字の成り立ちからしても、何方に転んだとしても、本当に魅力的……。好き。
真顔で怒られないか心配してます。
~ここからはこの話のきっかけ〜
頭のいい方って、話す言葉も面白いんですよね。
大真面目な勉強指南の動画の所々で、際どい人間らしさが見えて思わず笑ってます。
そんな動画に登場した、現代文。漢字の成り立ち。
『魅』という文字ではないですが。
わざわざ『魅力』なんて言葉があるんだから、『鬼』なんて使わなくても……⊂( *・ω・ )⊃
とか思っていたらありました。ちゃんの同じ意味でした。
漢字って凄いですね!!