98 信念
「それで?これからどうするんだ?」
ボスみたいなヤツを倒したがゲームクリアにならない。
ということは、さっきのヤツとは別にまだボスがいるってことになるのか?
「それについては考えてある。これを見てくれ」
そう言ってラウルが取り出したのは、石板のようなものだった。
微かに魔力を感じるから、アイテムの一種か?
「これは?」
「今回のゲーム専用のアイテムだ」
「そういえば阿久津君が、今回のゲームが『トレジャーハントゲーム』って名前なんだし、宝の地図みたいなのがあるんじゃないかって言ってたような…」
そう発言したのは有馬由美という、大我のクラスメイトの女の子だった。
というか、クラスメイトが参加してくるとかどんな確率だよ…。
ホント、大我に関わると信じられないことがたくさん起こる気がする…。
「ほう…。彼は察しが良いな。その通り、これは既定の枚数を集めるとクリア条件が提示されるタイプのアイテムだ。つまり、これと同じものをあと三枚集めれば良いというわけだ」
「なんであと三枚だとわかるんだ?」
「石板の模様が四分の一しか描かれていないからな。四枚集めれば一枚の石板になると考えるのが一般的であろう?」
「それはそうかもしれないが…」
その仕組みを作ったのが悪魔たちというのが気になるんだよなぁ…。
ゾンビゲームや邪神復活ゲームの時のように、終盤になにかやってくるんじゃ、という予感がする…。
「というわけで、手分けして探すことにしよう。彼女と少年を離す必要もあるしな」
その言葉に樹里愛が悲壮な顔をする…。
まあ、離れたくはないよな。
だが、抗議の声をあげないところを見ると、一応納得はしているようだな。
「そういうことなら、私は大我と行動を共にしようかな?」
ローレンスがいの一番に声をあげる。
「私なら大我が無茶な行動を取ろうとした時に制止できるし、戦闘パターンも熟知している。だからなにかあった時に連携も取りやすいしね。なにより…」
そう言ってローレンスは、煽るように樹里愛を見る。
「そこの小姑と一緒にいると身の危険を感じるしね」
「は?なによそれ…。喧嘩売ってるの?」
「売ってきてるのはそっちの方だろ小姑?」
火花が見える気がするほど、お互いを睨み合う樹里愛とレイラ…。
一触即発の空気に緊張感が走る…。
「やめろ二人共。まったく…。この二人は離しておいた方がいいというのは私も同感だ。あともう一人、彼女たちのチームに入ってもらいたいところだが…」
「私は嫌ですよ。フラッシュに突然斬りかかるような女と行動を共にしたくありません」
「おやおや…。さっきは一緒に行動してくれたのにねぇ?」
「仕方なくよ、し・か・た・な・く!!誰が好き好んでアンタみたいな戦闘狂となんか…!」
フラッシュに斬りかかるとか、ローレンスは一体何をしてるんだ…。
嫌われて当然だろ…。
「しかし困ったな…。戦力比を考えるとラウルとローレンスは分けた方が良いのは明白。樹里愛もリサもダメ…。となると…」
あとは俺か有馬さんしかいないわけだが、俺としてはラウルに聞きたいことが山ほどあるので、できればラウルと行動を共にしたいところなんだが…。
「あ、あの…。私は阿久津君たちと一緒でも構いませんよ?お役に立てることはないとは思いますけど…」
「何言ってるんだ有馬!さっきの話を聞いてなかったのか!?その女は危険な女なんだぞ!?」
「わかってますけど、阿久津君もいますし、大丈夫なんじゃないかと…」
「だけど…!?」
「そんなに心配なら先生も一緒に来るかい?」
「え?」
「生徒が私みたいな危険な女と一緒に行動するのが不安なんだろう?なら、先生が私を見張っていればいい。なにかおかしなことを言っているかな?」
いやいや、自分を見張ればいいって言うがな、お前がなにかしても先生には止める力が無いんだぞ?
それじゃあ意味が…。
「…わかった…。あなたが二人に危害を加えるようなことがあれば、私自身が盾になっても二人を守る…。そして、たとえ敵わなくても、化けて出てでもあなたを殺す…。それだけは忘れないで」
「ああ、わかった」
「葵!?」
「心配しないで樹里愛。それに、私が彼女たちと行動を共にすれば、有馬だけじゃなく、阿久津のことも見ておけるし…。野放しよりは安心でしょ?」
「それはそうかもしれないけど…」
「あの、先生…阿久津君に何があったんですか?さっきも私だけ話を聞かせてもらえなかったんで、できれば教えてほしいんですけど…」
「阿久津のプライバシーに関わることだから、悪いけど話せない」
「そうですか…」
まあ、大我が転生者であることを知る人が増えると、それだけ大我に知られるリスクが増えることになるからな…。
教える必要が無いなら教えないに越したことはないだろ。
「ああもう!やっぱり私もアンタと一緒に行くわ!」
「リサ!?突然どうしたの!?」
「だって、初参加の有馬ちゃんや一般人の石川先生があの女と行動を共にするとか、不安しかないもの!それに私は〈サバイバーズギルド〉の一員なのよ!?彼女たちのような人たちの保護こそ私たちの使命!そのためなら大嫌いなあの女とだって行動を共にするわ!すんごい嫌だけど!!」
めちゃくちゃ嫌そうな顔をしているが、それでも我慢してするべきことをするというのは、彼女の信念を感じる。
フラッシュやシャドウもだが、〈サバイバーズギルド〉の連中は良い人が多いな。
「私は構わないが…」
そう言ってローレンスはチラッとラウルの顔を伺う。
「懸命な判断だな。それでこそ『彼』の作り上げた〈サバイバーズギルド〉のメンバーだ」
ラウルも満更でもなさそうな顔をしていた。




