93 イレギュラー
「と、まあアイツ、父親だとか意味わからんことを言い出してだな…」
「フラッシュ、残念だがシャドウは絶望的に説明役に向いてない…。主観が入り過ぎて肝心な部分を聞いてないし、なによりアホ過ぎて話している内容が頭に入ってこない」
「大方、気配遮断の方法が分かれば女の子絡みでいろいろできると思ったんだろうね…。シャドーは女性が大好きだから…。でもそれで嫉妬して重要な部分を聞き洩らすとは…」
「影だ兄弟。いろいろと言ってもあれだぞ兄弟、諜報活動の役に立ちそうと思っただけで…」
「さっきの話を聞いてる限り、その言い訳は無理があるだろ…」
コイツ、女にモテな過ぎて拗らせたんだろうな…。
結果、こんな残念なヤツに…。
「〈サバイバーズギルド〉も大変なんだな…」
「そうなんだよ!分かってくれるかい!?」
リディの呟きに対し、フラッシュが凄い勢いで食いつく。
薄々分かってはいたが、フラッシュは苦労人だな。
「それで?その後はどうしたんだシャドウ?」
「影だ。その後は…」
*****
「父親…だと?貴様が…?」
なんだ、どういうことだ?
父親?
アロナクスが?
誰の?
まさか…。
「アロナクス、アンタ…。こんなデカい息子がいたのか?」
「俺のことじゃねえよ!?」
なんだ、違うのか?
「相変わらず話を聞いていないのだなシャドー…。どうせ私の気配を感じ取れなかったから、『新たな気配遮断を身につけたんだな羨ましい!!』…とでも考えていたのだろう?」
「影だ。気配遮断だけでなく読心術まで…。貴様、一体どうやって…!?」
「読心術に関しては恐らく身につけてないと思うぞ?シャドウが分かりやす過ぎるだけだろ」
「シャドウじゃない、影だ」
戦友がよくわからないことを言っている。
俺が分かりやすい?
知的でクールなこの俺が?
「面白い冗談を言うな戦友は?ははは!」
「いや、冗談じゃないんだが…」
「気にするなジャン…。そいつはそういうヤツだ。それと、気配遮断の件だが、単にお前が勝利の余韻に浸ってたせいで私に気づかなかっただけだ。悪い癖だと前にも言っておいたであろう…?」
「ちょっと何言ってるのかよくわからないんだが?」
*****
「わかった、もういい。フラッシュ、これ以上は時間の無駄だ。直接会って話を聞いた方が早い」
「奇遇だねジョナサン。私もそろそろ話を切り上げた方がいいんじゃないかと思っていたところさ」
「なんだ?もういいのか?」
「ああ、もう大丈夫だ」
まったく要領を得ない上に、話が脱線しまくって先へ進まない。
まるで大我を相手にしているみたいだ。
いや、話の核心へ辿り着く気がしない分、大我より酷い。
大人しく本人から話を聞いた方が良いとシャドウを除く全員が判断し、先を急ごうとした、その時。
「あ、あの…」
建物に隠れていたのか、女性が声を掛けてくる。
「どうかしたんですかお姉さん!?」
「ひっ…!?」
「やめろシャドウ、怖がってるだろ!?」
「な…何故だ…!?」
「勢いがな…」
リディのいう通りだ。
あんな勢いで迫られたら、普通に怖いだろ。
「部下がすみません。それでどうしたんですか?」
「突然怪物に襲われて逃げて来たんですけど…これからどうしたらいいのかと思いまして…。それで、皆さんも逃げるのなら、一緒に連れて行ってもらえないかと…」
「もちろんです!!」
「お前は黙ってろシャドウ!」
「影だ!」
「重ね重ね部下がすみません…。ですが、あなたを連れて行くわけにはいきません」
フラッシュは何故か、女性に対して冷たい声で告げる。
「なに言ってんだフラッシュ!?」
「理由は言わなくてもわかりますよね?ねえ、宮古桃!」
そう言うとフラッシュは、剣型のアイテムを取り出して女性を斬りつけた!
唖然とする俺たちをよそに、女性は一般人とは思えない身のこなしでフラッシュの攻撃を躱す。
「宮古桃だと!?あの日本の死刑囚か!?」
死刑囚!?
そんなヤツまで今回のゲームに参加しているのか!?
「さすがにあなたの目を搔い潜ろうなんて無茶だったみたいね、〈閃光〉?」
「一応危険なプレイヤーの顔は一通り頭に叩き込んでいるからね。それにしても、あなたのような危険人物まで参加しているとはね…」
「偶然この街に滞在していただけだったのよ?でも結果としては良かったわ。だって、運命の人に会えたんだもの!!」
「運命の相手…つまり君の新しいターゲットか」
「ターゲット?」
「兄貴、あの女は惚れた相手とその周りにいる女を殺しまくった結果、死刑判決が下った殺人鬼なんだよ」
「マジかよ…。なんて迷惑な女なんだ…」
「あんな美女に惚れられるとか…。正直羨ましい…」
シャドウ…血涙流しそうな顔しながらそういうこと言うなよ…。
というか、あんな女に惚れられて嬉しいか?
「ああ…大我君、大丈夫かしら?あんな害虫共に囲まれて…。やっぱり無理やりにでも連れ出すべきだったかしら…?」
大我?
今あの女、大我って言ったよな!?
「なるほど…次のターゲットは大我か…」
「またあのクソガキかよ!?」
「はあ…」
今度こそシャドウは血涙を流し始める。
そんなに羨ましいのか…正直ドン引きなんだが…。
「ああ…。大我君…あなたがそばにいないと不安だわ…。やっぱり今すぐ戻って助けた方が…でもあの男をどうにかしないと…。ああ、でも…!?」
「考え中のところ悪いが、仕留めさせてもらう!」
フラッシュが光の矢を飛ばす…が。
「なに!?」
宮古桃と呼ばれた女は半透明になり、フラッシュが放った光の矢をすり抜ける。
「兄弟の異能は光だからな。恐らく自身の体を半透明にすることにより、光を透過させたんだろう」
シャドウが冷静に分析する。
さっきまであんなに意味不明な行動してた癖に…。
って、そんなことどうでもいい!
いくら異能とはいえ、そんなことが可能なのか!?
いや、大我の体を炎へと変化させる異能を考えると、可能なのか…?
「それにしても、ミカエルに続き、また体を変質させるタイプの異能か…。厄介だな…」
シャドウの呟きに疑問を持ったオレは、直接聞いてみることにした。
「なんでだ?」
「なんでだって兄貴、体を変質させるタイプの異能持ちは戦闘力、応用力が共に高い上に、話が通じない異常者ばっかりなんだぞ?そんなの厄介以外の何物でもないだろ?」
リディに言われた俺は、大我を思い浮かべる。
異常者ねぇ…まあ、変わっているとは思うが…。
「そうだったのか?でも大我も体を変質させるうえ、応用性の高い異能持ちだけど、あそこまでおかしいってわけじゃ…」
あの女に比べたら、大我もまだ普通よりだよな?
「あのクソガキも体を変質させるタイプの異能なのか!?かなり珍しいタイプだっていうのに、このゲームに参加してるの、これで三人目だぞ!?」
「クリスもそうだから、四人だな」
「クリス・セイジもそうなのか!?一体どうなっているんだ、今回のゲームは…!?」
シャドウが驚く気持ちもわかる…。
今回のゲームはいろいろとイレギュラーが多い気がする…。
一体どうなっているんだ…?
お読みいただきありがとうございます!




