92 父親
~ジョナサンSIDE~
一旦クリスと別れたオレとフラッシュ、そしてリディは、〈セイジ・キングダム〉の連中が〈ラウル・アロナクス〉を見たという場所へ向かっていた。
「それにしても」
フラッシュが口を開く。
「〈セイジ・キングダム〉がこんなにたくさんのプレイヤーをゲームに参加させられていた理由が、まさかあんな方法だったとはね…」
そう、フラッシュはクリスと別れる前に、どうやってこんなにたくさんのプレイヤーをゲームに参加させているのかを聞いた。
その答えはこうだった。
『我は以前のゲームで優勝した時に、景品として願ったのだ。人間に魔力を与えて、我のアイテムとする力を…。自身の所持するアイテムなら、ゲームに持ち込むことは可能であるからな』
まさか〈セイジ・キングダム〉の構成員を自分のアイテムとしてゲームに持ち込んでいたとは…。
さすがのフラッシュも予想外だったらしい。
「彼はこんな俺たちにも戦う力を…彼の役に立てる力をくれたんだ。ホント、素晴らしい方だよ」
リディはそう言うが、俺としては家族を危険なことに巻き込んだヤツという印象が強い。
なので、正直あまり好きにはなれそうになかった。
「それで?彼が目撃されたというポイントはまだ先なのかい?」
「ああ。部下の話ではもう少し先…」
「今戻った兄弟」
「「うわ!!」」
突然影からシャドウが出てくる。
「誰だお前!?」
「突然出て来るなよシャドウ!?ビックリするだろうが!?」
「すまないリディ、彼は私の部下のシャドーだ。こらシャドー、いつも皆を脅かさないように言っているだろう?」
「シャドーじゃない、影だ兄弟。それよりも、面白いヤツと遭遇したぞ兄弟。誰だと思う?」
悪戯っぽく笑みを浮かべるシャドウ。
「まさか、アロナクスさんと遭遇したのかい?」
「なんだ、ヤツがいることに気づいていたのか」
「ああ、〈セイジ・キングダム〉の者たちから聞いていたんでね」
「ヤツらと協力体制を取ることにしたのか?まあ、ヤツがいる以上納得はいくが…。だが安心しろ兄弟。ヤツは今回、俺たちと敵対する気はないらしい」
「「なんだって!?」」
驚愕するフラッシュとリディ。
なんだ?
そんなに意外なことなのか?
一体どんなヤツなんだアロナクスって男は…?
「なあ、なんでそんなに驚いているんだ?」
「いいか兄貴、アロナクスって男はな、〈サバイバーズギルド〉の立ち上げメンバーの一人だったんだが、〈サバイバーズギルド〉は腑抜けしか集まってこない組織だって言い残して、脱退した過去があるんだ。そして〈サバイバーズギルド〉を抜けてからというもの…」
「そこからは我々が引き継ごう。彼は我々の元を去った後から、露骨に我々を敵視していてね…。〈サバイバーズギルド〉の構成員と知るや否や、襲撃することも珍しくなかったんだ…。それなのに、今回は敵対する気はないだって?一体どういう風の吹き回しなんだ?」
「なんでも戦友…ジャンを保護するのが最優先だからとかなんとか…」
「ジャンを?っ」
なんでここでジャンが出てくるんだ?
いったい何がどうなってる?
「一回彼に会って話を聞いてみるしかなさそうだね…。彼はどこに?」
「戦友の仲間と合流すると言って、あの美女やクソガキの元に向かった。おおまかな場所は聞いてるから、必要なら案内するが?」
「よろしく頼むよ。二人もそれで構わないかい?」
「ああ、構わない」
「こちらも構わないんだが、とりあえずフレンドってなんだ?とか聞かないのか…。噂通り変わり者ばっかりなんだな〈サバイバーズギルド〉の連中は…」
「いや、このシャドウがぶっちぎりで変人ってだけだと思うぞ」
そんなことを話ながら俺たちは、シャドウの案内に従って移動を始めた。
*****
移動を開始してしばらく…。
俺たちは閑散とした繁華街へと足を踏み入れた。
何故人がいないのか…。
その理由は目の前に広がる戦闘の跡を見れば明らかだった。
「なんだこれ…。誰かここで戦ったのか…?」
激しい戦闘であったのは火を見るより明らかだ。
なんせ地面が抉れていたり、街灯がまるで根本から溶けたように倒れているのだから。
「ああ、俺とジャンがミカエル・アンダーソンと戦った場所だな」
「ミカエル・アンダーソン!?あんな戦争大好き人間まで参加してるのか今回のゲームは!?」
「戦争大好き人間とは物騒だな…。一体どんなヤツなんだリディ?」
「言葉通りの意味さ。戦争が大好きで、戦争を起こすために人々を傷つけ、戦争を起こしたいヤツに媚びを売り、戦争を楽しむために紛争地帯で生きる…。そんな異常者さ」
そんなヤツもプレイヤーとして参加させるとは…。
やっぱりデモンズゲームはろくでもないな…。
「まさかミカエル・アンダーソンがいるとは…。それで?彼はどうしたんだい?」
「俺とジャン…じゃなかった、戦友で無力化させた後、アロナクスと戦友が連れて行った。まあ、アロナクスがいるんだ、何かあっても大丈夫だろう」
言い間違えるくらいなら、最初から普通に喋れば良いのに…と思ったが、口に出すのはやめておいた。
どうせ言ったところでシャドウが従うはずないしな。
「たしかにそうだが…。なあ、シャドー…。彼と会った時のことを詳しく説明してくれないか?」
「影だ兄弟。で、アロナクスと会った時のことだったな…」
少し間を開けて、シャドウは話始めた。
*****
俺の峰打ちによって沈んだアンダーソンに、俺は手錠型のアイテムを取り付けた。
これでこの男は、自身の異能を使えない。
液体化なんてカッコいい異能を持っている癖に油断するからそうなるのだ…。
俺がカッコよく口角を上げながら勝利の余韻に浸っていると、共に戦った戦友が、
「そろそろソイツから話を聞きたいんだが、起こしても大丈夫か?」
と聞いてきた。
まったく…戦友は少し空気が読めないらしい…。
だが、ここで駄々をこねるのはクールではない。
「異能を封じるアイテムを取り付けたから、いつでも構わない」
「それ、異能を封じるアイテムだったんだな。って、そんな場合じゃないな。ありがとう」
そう言って戦友は、アンダーソンを蹴り起こす。
「ゲホッ!ゲホッ!…なんだぁ、一体…?」
「目が覚めたかクズ野郎。約束通り質問に答えてもらうぞ?」
「あ~…今の戦いで記憶が消えちまった。なんで兄ちゃんの聞きたいことにはぁ…!?」
ベラベラと意味の無い言葉を垂れ流すアンダーソンの顔を蹴り飛ばす戦友。
「今ので記憶は戻っただろ?俺たちを襲うように指示したのは、一体どこのどいつだ?」
「へ、へへ…。思い出せねぇなぁ…」
「コイツ…!」
俺は再度アンダーソンへ暴行を加えようとする戦友を止めようとした。
経験上、こういうヤツは短時間での暴力では口を割らないと理解していたからだ。
その時、よく知っている声がした!
「やめたまえジャン。ここで彼をいくら痛めつけても口を割ることはない」
全く気配がなかっただと!?
影に潜み影を狩ることを生業としている俺が気づけなかった!?
以前は気づけていた筈…!
まさか、ヤツはなんらかの方法で俺を欺くほどの気配遮断ができるようになったのか!?
なんて羨ましい!
じゃなくて厄介な!?
その方法、俺にも教えてほしいぞ!
あくまで諜報のためだ!
断じていかがわしいことのためではない、いかがわしいことのためではないのだ!
大事なことなので二回、心の中で言い訳をしておいた。
だが…。
「誰だ貴様…?何故俺の名前を知っている…?」
「私の名前は〈ラウル・アロナクス〉。国連…「羨ましい羨ましい羨ましい…」…そして…「羨ましい羨ましい羨ましい…」…の…」
羨ましい羨ましい羨ましい!
やっぱり羨ましい!
なんて羨ましいんだアロナクスめ!!
許さん!
この恨み、絶対に忘れんぞ…!
「父親だ」
父親?
何言ってんだアイツ?
お読みいただきありがとうございます!




