89 弟
~ジョナサンSIDE~
あの後シャドウが偵察に出てしまったので、俺はフラッシュと共にエネミーから一般人を守りながら、目的地へと向かって移動していた。
目的地はもちろん、ヒントこと石板型のアイテムを持っているらしい、〈セイジ・キングダム〉とかいうヤツらのところだ。
「で、問題の〈セイジ・キングダム〉なんだが、問題の古参のプレイヤーってのはどんなヤツなんだ?」
俺たちの目的は、ゲームクリアのために協力を要請することだが、交渉が破断となった場合は戦闘になる可能性もある。
なので、相手がどういうヤツなのか、どれくらい強いのか知っておきたいところなんだが…。
「ヤツの名前は〈クリス・セイジ〉。年齢は恐らく三十代後半で、大体二十年ほど前からデモンズゲームへ参加している。そして問題の戦闘能力なんだが…アレックスさんと正面から渡り合えるレベルと言えば、どれほど脅威かわかってもらえるかな?」
アレックスさんと同等ってマジか…。
ゾンビ化していたとはいえ、アレックスさんと対峙したことがある俺は、あの人の強さを身をもって知っている。
今はあの時よりもかなり強くなったとは思うが、それでもまたアレックスさんのゾンビと戦ったら同じようにやられる自信がある。
そんなアレックスさんと同等の強さを持つヤツとこれから会うのか…。
一気に不安になってきた…。
「しかも、いつも大量の部下を連れて歩いていてね…。一体どれほど強大な悪魔がサポーターについていたら、あんな数のプレイヤーをゲームに参加させられるのか…。まったく見当もつかないよ…」
たしかサポーターの悪魔が大量の魔力と引き換えに、好きな人間をプレイヤーとしてゲームに参加させられる権利を買ってるって大我が言ってたよな…。
「ちなみにサバイバーズギルドのサポーターは、一回のゲームに何人のプレイヤーを参加させてくれてるんだ?」
「多くても十人程度だ。今回みたいに少ない場合もあるけどね…」
「十人か…。思ったよりも多いんだな。で、セイジ・キングダムは一体どれほどのプレイヤーを参加させているんだ?」
「少なくとも、常に三十人以上は参加している…。部下の報告では、五十人以上の時もあるらしい…」
「なんだそれ!?いくらなんでも多すぎだろう!?」
「そうなんだ、いくらなんでもおかしいんだよ…。なにかからくりがあるんだとは思うんだけど…」
トップは戦闘力がかなり高く、部下は部下で数が多いとか…。
敵対は絶対に避けるべきだな…。
「おしゃべりはここまでかな…。連中、私たちに気づいていたらしい」
フラッシュの言葉で初めて気づく。
完全に包囲されていたことに…。
ざっと数えて十数人はくだらない…。
これほどの数の人間に囲まれていたのに、気づかなかったなんて…。
「完全に気配を消して、待ち構えていたみたいだ…。やられたよ…。まさか私が気づけない程の練度とは…」
ここに来るまでの戦闘で、フラッシュの強さは嫌という程思い知らされた。
単純な強さだけではない…。
視野の広さ、決断の早さ、そしてなにより頭の回転の早さ。
そのどれもが、俺とは比べ物にならないほどのものだったのだ。
そんなフラッシュですら欺くほどの手練れがこれほどいるとは…。
〈セイジ・キングダム〉…一体どれほどの力を持った連中なんだ…。
「サバイバーズギルドの〈閃光〉だな?一体我々になんの用だ?」
ヤツらのリーダー格と思われるヤツが声を発する。
というか、あれ?
この声…?
「〈セイジ・キングダム〉の者だな?我々には戦闘の意思は無い。交渉をしに来ただけなんだ」
「交渉だと?」
リーダー格の男はフラッシュの言葉に怪訝な声を出す。
まあ、さっきフラッシュから聞いたファイナルゲームの仕様を考えると、別の組織同士で組むメリットはあまり無いからな。
警戒するのも無理はないのかもしれない。
それはともかくとして、やはりこの声…聞き覚えがある…。
だがありえない…。
だって、この声は…。
「ああ。今回のゲームは…」
「お前、リディ…か?」
そんなわけないと思いつつ、リーダー格の男へ声を掛ける…。
そんな筈がないのに…。
リディが…弟がこんな所にいる筈ないのに…。
だが、聞いてしまった…。
「…はあ……。そうだよ兄貴…。まさか兄貴がデモンズゲームのプレイヤーだったとはな…。さすがに驚いたぜ…」
本当に…本当にリディだったのかよ…!?
「お前…!なんで…大学はどうしたんだよ!?」
「ちゃんと大学には行ってるって…。これは、そう…最初はバイトのつもりで始めたら、成り行きでこうなったというか…」
成り行き!?
成り行きで〈セイジ・キングダム〉に入った上、デモンズゲームに参加してるってどういうことなんだ!?
突然のことで頭が混乱しているのか、リディの言っていることがさっぱり理解できない!
「どういうことなのかわかるように…!」
「落ち着いてジョナサン」
〈セイジ・キングダム〉の一人が俺へと近づいてくる。
その声は…。
「マリア!?お前まで〈セイジ・キングダム〉に参加していたのか!?」
そこにいたのは、俺の幼馴染である〈マリア・カーン〉だった。
「お前ら、なんで…!?」
「ジョナサン、彼らと知り合いなのかい?」
「あ、ああ…。取り乱してすまなかったフラッシュ。コイツは俺の弟の〈リディ・ミラー〉、そしてこっちは俺の幼馴染の〈マリア・カーン〉だ」
「弟さんに幼馴染!?そんなことが…」
まあ、驚くよな…。
俺だってかなり驚いているし…。
お読みいただきありがとうございます!




