85 ヒーローのように
~大我SIDE~
フラフラしながら道を歩いていると、繁華街へと出た。
というかここ…。
「ねえ阿久津君…。ここ、私たちの街じゃない?」
「やっぱりそうだよな?」
なんとなくそうなんじゃないかと思っていたが、正解だったらしい。
まあ、一般人が巻き込まれるタイプのステージもあることは知っていたから、自分たちの街もステージになることもあり得るんだよなぁ、とは思ってはいたが…。
実際に起こるとさすがにビックリするな。
「とりあえず、宝の地図を探しに…」
「きゃあー!!!」
響き渡る悲鳴。
なんとなく予想が着く。
「な、なに!?」
「どうせ一般人がエネミーに襲われてるんだろ、さっきの宮古さんみたいに」
「だ、だったら早く助けないと!」
「そうなんだけど、オレが本気で移動すると有馬や宮古さんは追いつけないから、ここら辺で隠れててほしいんだけど、いい?」
「わ、私は構わないけど、宮古さんはどうですか?」
「私はできれば大我君から離れたくないんですけど…」
まあ、さっき危険な目にあったばかりだしね。
気持ちはわかる。
「そうなると二人に合わせて歩いて行くことになるね。まあ、オレとしてはまだアルコールが抜けてなくて気持ち悪いから、ゆっくり行ける方が助かるんだけどね」
「そっちが本音でしょ阿久津君…。阿久津君は皆を救える謂わばヒーローなんだよ?なのにそんな消極的でいいの?」
「いや、オレは別にヒーローじゃないし…」
「謙虚なのね大我君…。その上、皆を助けたいってわけじゃないのに私は助けてくれた…。やっぱり大我君は私の…」
「なんか言った宮古さん?」
「いいえ、なんでもないわ。それじゃあ、皆で声のする方へ向かうってことでいいのかしら?」
「そうですね。できればゆっくり…」
「できるだけ急いで!」
そう言った有馬は、オレの腕を引いて走り出した。
ちょ、ちょっと待って…!?
まだ酔いが…。
「なんなのあの子…。私の大我君を…」
「どうしたんですか宮古さん!?早く行きますよ!!」
「…ええ……。わかってるわ…」
そうして三人で走っていると、段々とこちらへ走ってくる人が増えてきた。
エネミーは近いのか?
「有馬!?それに阿久津!?お前らこんなところで何してるんだ!?」
声のした方を見ると、担任である石川先生がいた。
「なんで化け物がいる方へ走ってるんだ!?ほら、早くこっちに来い!!」
オレたちの手を引いてエネミーがいる方向とは逆の方へ連れて行こうとする石川先生。
「ちょっと待ってください先生!私たちこれからその化け物を倒しに行くところなんです!ね、阿久津君?」
「化け物を倒しに行く!?なに言ってるんだ!?」
「先生、オレとしては体調が最悪で、できれば少し休みたいんですが、有馬が休ませてくれないんです…。少し休ませるように有馬を説得してくれませんか?」
「ダメだよ阿久津君!?皆を守るためにも早く化け物を倒しに行かなきゃ!?」
「ね?さっきからこの調子なんですよ。でもオレ、走るとアルコールが回って気持ち悪くなるんです。なので、できればゆっくり行きたいんです」
「いや、お前飲酒してたのか…?とか、あの化け物倒せるのか…?とか、いろいろ言いたいことはあるんだけど、とりあえずお前らは一体何を知ってるんだ?」
なにをって…あれ?
今まで宮古さんの前でゲームのこととかエネミーのこととか普通に話してたけど、大丈夫だったのか?
「私たち実は、悪魔が開催してるデスゲームに参加してまして…」
おお、やっぱり話せるのか。
「デスゲーム!?悪魔!?一体どういう…あっ!じゃあさっきの化け物はもしかして!?」
「ええ、オレたちが参加しているデスゲームの敵ですね。なのでオレたち…いや、オレなら倒せます。だけど一つ問題が…。実はオレ、今酔っぱらってる状態なんで、移動やら戦いやらをするのが難しい状態なんです」
「うん、状況はわかったが、一つだけわからない…。お前未成年だろ?なんで酔っぱらってるんだ?」
「ジュースと酒を間違えて飲みまくったからです。誰にだって間違いはあるでしょう?」
「いや、その間違いは流石にあり得ないだろ…」
先生は無慈悲にも断言する、あり得ないと…。
やめてくださいよ…。
そんな風に断言されると、なんかオレがおかしいみたいじゃないですか…。
「…ん?」
話ながらも続けていた気配察知に魔力の反応があった。
これは知っている人たちの魔力だ。
「皆、仲間が近くに来てるみたいだから合流しようと思うんだけど、いいかな?」
オレの提案に誰も反対しなかったので、移動を開始する。
有馬だけは少し不満のようだったが…。
有馬はあれだな、戦う力を持つオレをヒーローのように思っている節があるな…。
いや、ヒーローのように行動してほしいと思っているというか…。
まあ、力を持っている存在に力の無い人を守ってほしいという気持ちはわからなくもない。
だけど、前に皆人にも言ったことがあるが、選択権があるのはいつだって『力を持つ者』なのだ。
そして『力を持っている者』であるオレは、正直ヒーローのような活動をする気は無い。
弱きを助け、強きを挫くなんてことには興味はないのだ。
まあ、善人にはハッピーエンドを迎えてほしいし、悪人にはバッドエンドを迎えてほしいって思っているのは間違いないのだが…。
なんていうか、ニュアンスの違いというか、どこに重きを置いているかの違いというか…。
ともかく、オレはヒーローなんてものになるつもりは無いのである。
と、そんなことを考えていたら、彼女たちの元まで着いていたらしい。
「樹里愛、レイラ!無事だったんだな!」
「ああ!大我!よかった、無事だったのね!!」
オレの姿を見た瞬間、樹里愛はオレの元へ駆け寄り、その勢いのまま抱きついてくる。
「え!?ちょ、ちょっと樹里愛!?」
「よかった…。本当によかった…!」
あれ?
もしかして樹里愛泣いてる?
「どうしたんだよ樹里愛?」
「アンタが心配だったのよ…。よかったわ、本当に無事でよかった…」
「君が見つからないって半狂乱になっていたからね…」
レイラが呆れたように樹里愛を一瞥した後、オレへと声を掛けて来た。
って、半狂乱?
「大切に思ってる人と離れ離れになってたんだから、焦るのは仕方ないでしょ?これだから突然人に襲い掛かるような戦闘狂は…」
「だからゲイルへ襲い掛かったのは悪かったって言ってるだろ?まったく…これだからサバイバーズギルドの連中は…」
「レイラ、その人サバイバーズギルドの人なの?」
「ああ、ゲイルの部下らしいよ」
「〈リサ・ストーク〉よ。阿久津大我君よね?よろしく」
「彼女、あの廃病院に入ることを拒否してたヤツらしいよ?」
「は?ああ…あの時の…」
たしか幽霊関係は現実にいるゴーストだけじゃなく、映画とかの創作物でもダメっていう…。
「こ、怖いものは怖いんだもん…。仕方ないじゃない…」
「まあ、気持ちは分かるよ?」
やっぱり〈サバイバーズギルド〉には面白い人が集まってるんだな…。
と、オレたちがそんな話をしていたところ…。
「やっぱり樹里愛よね?」
と、石川先生が樹里愛へ声を掛けた。
あれ、知り合い?
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