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84 影(シャドウ)

~ジョナサンSIDE~



 転送された先は人がたくさんいる繫華街のような場所だった。


「なんだ?なんで人がいるんだ?」

「そういうステージ設定なのだろうね」


 振り返ると、そこには先程知り合ったフラッシュがいた。


「フラッシュ…。ステージ設定ってどういうことだ?」

「ゲームの舞台となるステージには大きく分けて二つの種類があるんだよ。悪魔たちが魔力によって作り上げたステージと、現実の世界の一部を利用するステージの二種類がね」

「つまり、今回は後者の現実の世界の一部を利用したステージだと?」

「間違いなくね」


 なるほどな…。


 それで一般人がこんなにいるのか…。


「なあ?今回みたいな状況で一般人が死んだりした場合って…」

「ゲームをクリアすると生き返るから安心していいよ。ただし、魔力を持っていない者に限定される上、あくまでゲームをクリアすれば、だけどね…」


 つまり俺たちがゲームをクリアできなければ犠牲となった一般人は…。


 だが最悪、一般の人が死んでしまったりしても俺たちがゲームをクリアしさえすれば救えるというのは、少し心を安心させてくれる。


「さて…。『トレジャーハントゲーム』は、ヒントを見つけてお宝を見つけるか、ボスを倒せばゲームクリアとなるんだけど、どちらを目指す?」

「できるだけクリアしやすい方を…って、協力してくれるのか?」


 これは自分の願いを叶えるために戦うゲームの筈…。


 前回の俺たちみたいに一人ではどうしようもなくて協力するってことはあるかもしれないが、フラッシュはサバイバーズギルドのトップの一人だって話だったし、俺と協力する必要なんて無さそうだが…。


「もちろんだよ。たしかにデモンズゲームはたった一人の優勝者になって願いを叶えるために戦うゲームだ。だが生き残るためにお互い協力するのは、別におかしなことではないだろう?」


 それはまあ、たしかにな。


「ならよろしく頼む。それで、宝を探すか、ボスを倒すかだったな…。やっぱり、宝を探す方が難易度は低いのか?」

「このゲームの場合はそうとも限らないんだ。というのも、宝を在り処を指し示すヒントを探し出す難易度が結構高くてね…。簡単には見つからないから、結局ボスを倒した方が早い…となる場合も結構あるんだ」


 なるほど…。


 なら、ヒントを探しながらボスに遭遇したら倒すってのが最善か?


「ちなみに、ボスはかなり強力だからね?手分けしながらヒントを探しつつ、ボスを発見したら倒そうと考えて、敗北していったプレイヤーはかなりいる。だからこのゲームでは、宝を見つけるか、ボスを倒すか…そのどちらかに全力を注ぐべきとされているんだ」

「なら手分けせずに皆で固まりながらヒントを探しつつ、ボスにも備えればいいんじゃ…?」

「それもダメだ。見てくれ」


 そう言ってフラッシュは魔力によって画面を投影する。


 これは…時間?


「これはこのゲームの制限時間。この時間内にクリアできなければ、私たちは強制的に敗北となる。普段のゲームなら敗北となったところで願いを叶えてもらえなくなるだけだから特に問題はないけど…」

「今回の場合は一般人がいるからな…」


 そうだ。


 一般人がいるこの状況でもし強制敗北になってしまったら、犠牲になった一般人を蘇らせることができなくなってしまう。


 これは厄介だな…。


「それじゃあどうするんだ?」

「とりあえず私の部下と合流しようと思う。彼は索敵能力が高いから、もしかしたらすでにヒントを発見している可能性があるし…」

「ヒントならすでに発見したぞ兄弟」


 そう言って何者かが俺たちへ話しかけてくる。


 もしかしてコイツが…?


「さすがだなシャドー。君ならもしかしたらって思っていたよ」

「シャドーじゃない兄弟…。シャドウだ」


 突然現れて一番最初にすることが自分の名前を訂正するとか、変なヤツだなコイツ…。


 というか、俺には訂正前と訂正後の違いがよくわからないんだが…。


 発音が少し違うのか?


「はあ…。それでシャドー?ヒントはどんなものだったんだい?」


 面倒臭そうにシャドウに対応するフラッシュ。


 まるで変なヤツに絡まれたような空気感を感じる。


シャドウだ兄弟。ヒントを手に入れたには手に入れたんだが…」


 そう言ってシャドウは石板のような物を取り出した。


 なんだこれ?


「これがヒント?どういうことだ?」


 正直ただの石板にしか見えないが…。


「魔力を感じるから、ヒント用のアイテムであるのは間違いないと思うぞ兄弟」

「ふむ…」


 フラッシュは石板を注意深く観察している。


「ところでガイ。貴様、さっき麗しのレディと話していたな?」


 シャドウが突然俺に声を掛けてくる。


 ビックリした…。


「え~と…もしかして樹里愛のことか?」

「そうだ。あのレディと一緒にいたクソガキ…あの二人は一体どんな関係だ?」

「どんなって…。まあ、過保護な姉と自由奔放な弟って感じだな…。それがどうしたんだ?」

「……しい…」

「は?」


 なんて言ったのか聞き取れなかった。


 なんだって?


「羨ましい!なんて羨ましいんだあのクソガキ!!」

「突然どうしたんだ!?」


 いきなり発狂したように叫び出すとか、怖すぎだろ!?


「またシャドーの発作が始まったか…」

「発作?」

「彼は女性が好きらしいんだが、奇行や言動、その他諸々が原因で女性陣からは距離を置かれがちでね…。その結果、女性と仲良くしている男性を見ると、嫉妬心からかああいう風に暴走するんだよ」


 シャドウの奇行に溜息を吐きながらフラッシュが説明してくれたが、正直なにを言っているのかわけがわからなかった。


 タクシー運転手としていろんな人と接してきたが、こんな変なヤツ見たことないぞ…。


「まあ、いつものことだから無視していいよ。それよりも…」


 そう言いながらフラッシュはさっきの石板を俺へと見せてくるが、血の涙を流しながら地面を転がっているシャドウを放っておくのはどうなんだ?


 見ろよ、通行人もドン引きしてるぞ…。


「うう…うう…羨ましい…!なんで俺はあのポジションにいないんだぁ!!」

「見てくれジョナサン。この石板の端の方を。これ、円の一部に見えないかい?」


 言われてみるとたしかにこの感じ、円の四分の一くらいに見える…。


「つまり、これは一枚だけではなく、四枚集めて初めて一枚の石板になるアイテムなんだと思う」

「なるほど、つまり…」

「ああ、あと三枚の石板を集める必要があるということだ」


 そうか…制限時間があるってのに、前途多難だな…。


「シャドー、他にこの石板らしきものは見掛けなかったんだよね?」

「うう…シャドウだ兄弟…。一応見掛けはしたんだが…」

「なんだって!?それはどこで!?」

「〈セイジ・キングダム〉の連中が持って行ったぞ…」

「な…!?」


 シャドウの言葉に絶句するフラッシュ。


 どういうことだ?


「〈セイジ・キングダム〉ってなんだ?」

「とある古参プレイヤーが率いている集団だよ…。その古参プレイヤーがかなり問題でね…。話が通じない癖に、かなり強いっていう、厄介極まりないヤツなんだ…。これはマズイな、連中とやり合わなければならないのか…」


 そんなヤツらが…って、ちょっと待て!?


「なあ、その〈セイジ・キングダム〉もそうだが、もし残りの二枚を他のプレイヤーが見つけていたとしたら…」

「ああ…。協力する気の無いプレイヤーは、もしかしたら私たちを襲うかもしれない…」


 ただでさえ時間が無いってのに、プレイヤー同士の抗争もあり得るとか…。


 今回のゲームも一筋縄ではいかなそうだ…。

お読みいただきありがとうございます!

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