80 ファイナルゲーム
「こりゃ面白そうなことになってんな、なあ兄ちゃん?」
突然声を掛けられて振り返ると、そこには知らない男が立っていた。
まあ、ナビゲーターの説明を聞かずにここにいるということは、コイツも初参加のプレイヤーではないということだろう。
少し警戒しながら会話に応じる。
「まあ、外から見てる分には面白いかもな。俺としては当事者の一人が知り合いのうえ、相手が相手だからハラハラしっぱなしだが…」
そう…あのローレンスという女はまともじゃない…。
目の前で見ているだけで、かなりの実力者ということがわかる。
そんなのを前にして、一歩も引かずに舌戦を繰り広げている樹里愛は大したものだと思うが、見てるこちらとしては気が気じゃない。
「そうかい?俺としては今にもキャットファイトが始まるんじゃないかとウズウズしてるんだけどな」
「キャットファイトって…。趣味が悪いなアンタ…。いや、好きなものは人それぞれってのはわかってはいるんだが…」
「人が戦い合うのを見ているのは楽しいもんだろ?それが美女同士なら猶更な。それともあれか?戦いはいけないことだなんて言うつもりか?いいか?戦争ってのは人間の性だ。それを否定するってのは、人間であることを否定するようなもんだぜ?」
「別に戦いは絶対ダメというつもりはないが…。だが、やはり争い合うよりは平和な方がいいと俺は思うがな」
「そうかいそうかい。兄ちゃんもやっぱそっち側の人間だったか。まあ、仕方ないよな?平和な世界の方が、普通の人間にとっては生きやすいからな」
肩を竦めるような仕草をする男。
その目には落胆の色が浮かんでいた。
「誰だってそうじゃないか?アンタは違うのか?」
「おう、俺は断然張り詰めた空気の方が好みだからな!特に戦場!あの空気は一度味わったら二度と忘れられねぇ…。誰もが次の瞬間には死ぬかもしれないという恐怖に苛まれながら、生きるために、そして一秒でも早く敵を殺すために考え、そして動き続ける。戦場こそ、人間が本来生きるべき場所なんだと俺は悟ったぜ?」
生きるか死ぬかが当たり前の世界が本来の生きる場所?
本気で言っているのかコイツ?
「そうか…。俺は常に戦場に居続けるなんてゴメンだから、アンタとは相容れないな」
「そうみたいだな。兄ちゃんは常に周囲に気を張ってるみたいだったから、俺と似たタイプなのかと思ったんだけどな」
コイツと似たタイプ?
冗談でもお断りだな。
「それはそうと兄ちゃん…。どこかで俺と会ったことあるか?」
「…?いや…ないと思うが…」
「そうか?どっかで兄ちゃんを見たことある気がするんだけどな…」
「皆さまお待たせしました」
男が首を傾げている間に、ナビゲーターから初参加のプレイヤーへの説明は終わったらしい。
「彼らへの説明は終わったようだね。では、私はこれで」
俺たちへ声を掛け、フラッシュはナビゲーターからの説明を受け終わったばかりに初参加プレイヤーの元へと向かっていく。
サバイバーズギルドは元々初参加のプレイヤーの保護を目的として設立されたと聞いているからな。
本来の目的を果たしに行くんだろう。
「あいつら、毎回初参加のプレイヤーを保護するだのなんだの言ってるけどよ、正直有難迷惑だよな」
「有難迷惑?どこがだ?初参加のプレイヤーからしてみたら、突然訳の分からない状況に放り込まれてるんだぞ?それを助けようとしてくれるサバイバーズギルドは、彼らからしてみたら救世主のようなものだろう?」
「それだよそれ!救っちまうから良くないんだよ!人間ってのは、危機的状況に陥った時にこそ成長するんだぞ?なのに奴らが救っちまったら、成長できずにヤツらに寄生しないと生き残れないような腑抜けばっかになっちまう。俺が見たいのは、そんな腑抜け共じゃないんだよ」
そう言って、ヤツは俺をまるで値踏みするように見てくる。
「俺が望んでるのは、危機的状況を自分の力で突破して、しぶとく生き残る…兄ちゃんや、あそこで気を失っているガキみたいな連中こそが自由に生きていける…。そんな世界なのさ」
なんだその一部の者には天国だが、それ以外の者には地獄みたいな世界…。
やはりコイツとは相容れない。
これ以上話すのは精神衛生上良くないと判断して、無視を決め込む。
さて、さっさと転送してほしいところだが…。
「なお、今回のゲームは、優勝者が確定する『ファイナルゲーム』となっておりますので、ご了承ください」
は?
なんだそれは?
俺以外にも、ナビゲーターの言葉に困惑しているプレイヤーがかなりいるのか、周囲がざわめき出す。
「知らねえのかい兄ちゃん?普通は一つのシーズンに二回のゲームで優勝者を決めるんだけど、それを一回で済ませちまおうって場合もあってな?それを『ファイナルゲーム』って言うんだよ」
そういうことか…。
ということは、今回のゲームで初参加のプレイヤーは魔力が無い状態にも関わらず、周囲がほぼ全員ライバルという状態に置かれるわけか…。
それ、俺たちの時よりもかなり厳しい立場なんじゃないか?
その時、またナビゲーターの声が聞こえた。
前回のゲームのことを考えると、ゲームの開催にはまだ時間があるんじゃないか?
その時の俺は、そんなことを考えていた…が…。
「それではファイナルゲーム、『トレジャーハントゲーム』を始めさせていただきます」
なんだと!?
前回は転送まで少し時間があったってのに、今回はもう転送だと!?
今回のゲームは一体どうなっているんだ!?
驚愕の中、俺たちは戦場へと転送されるのだった。
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