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8 難易度ナイトメア

 今の状況を一言で言うと割とヤバい。


「なんだコイツ!?スピードが他のゾンビと段違いだぞ!?」


 今ジャンが言った通り、ゾンビ化したプレイヤーは滅茶苦茶強い。

 正確に言うと魔力の使えるプレイヤーがなったゾンビは滅茶苦茶強いのだ。

 理由はゾンビになっても魔力は使えるかららしい。


 クソ過ぎる。


 さっきからジャンがボウガンで迎撃しているが全て躱している。

 オレも加勢したいところだが、この女が邪魔だ。


「樹里愛、この人連れて先に逃げて!」

「え!?ちょっと!?」


 樹里愛に女を押しつけ、落ちていた盾をジョナサンへ渡す。


「ジョナサン、前衛頼む!ジャンは援護を!」


 アレックス爺さんともう一人の部下を見ると、2人はゾンビ化した男と大量のゾンビを相手にしているようだった。

 あっちは大丈夫そうなのでこちらは目の前のゾンビたちへ集中する。


 目の前のゾンビが腕を伸ばしてくる。

 腕を斬り落とし、続けざまに首を落とす。

 横を見ると盾でゾンビを吹き飛ばしているジョナサンが目に入る。

 そして態勢を崩しているゾンビへとどめを刺していくジャン。


 中々良いコンビネーションだ、オレも加わろう。


「よっと。いやぁ~、さっきよりも楽できていいねぇ」

「むしろ一人で何体も倒したってのがスゲェよお前。素直に尊敬するぜ」


 ジョナサンがオレの軽口に返してくれる。

 褒めてくれるなんて、ジョナサンはいいやつだな。


「おしゃべりはそのくらいにしておけ。見ろ、厄介なのが来たぞ」


 ジャンの声に従い前を見てみるとゾンビ化した自警団の男がこちらへ向かってきていた。

 ジョナサンが先程と同じように盾で吹き飛ばそうとするが、それに合わせて自警団ゾンビが拳を突き出すのが見えた。

 直後、ジョナサンの方が吹き飛ばされた。


 マジかよ、アイツらカウンターとかしてくるのか!

 魔力による身体強化だけでも厄介なのにカウンターをしてくる知能まであるとか、マジで厄介極まりない。


「大丈夫か君たち!?」


 アレックス爺さんたちが駆けつける。

 よかった、さすがに魔力が無い今のオレたちじゃ正直勝ち目がない。


「さすがにあのゾンビには勝てる気がしないから、お願いしてもいい?」

「もちろんだ。君たちは逃げてくれ」


 そう言って、大量のゾンビを圧し潰すアレックス爺さん。

 問題なさそうなので、お言葉に甘えて逃げさせてもらおう。


「ジャン、ジョナサン、行こう。オレたちがいたら足手まといになりそうだし」


 二人とも同意してくれたので、三人で出口に向かう。

 その時、さっき噛まれた自警団の男が起き上がる姿が見えた。


 嫌な予感がして立ち止まる。

 同時にアレックス爺さんたちの方へ動き始める自警団ゾンビ。

 ヤバい。


「爺さん!後ろ!」


 アレックス爺さんが後ろを振り向くのと自警団ゾンビが床を蹴るのはほぼ同時だった。

 直後、嚙み千切られるアレックス爺さんの首。


 完全には千切れていないが、あれではもう助からないだろう。


「アレックスさん!!」


 自警団の男が眼前にはゾンビが迫っていたにも関わらず、アレックス爺さんの方を向いて叫ぶ。


「危ない!前!」


 警告を発するがもう遅い。

 彼が振り向いた時には手遅れだった。


「うわあぁぁぁ!!」


 自警団の男へ群がるゾンビたち。

 血飛沫が舞っている。


 オレはその光景を見ながらアレックス爺さんの元へ戻ろうとする。


 助けにではない。

 どうせ今からでは助からない。


 そうではなく、今のうちにアレックス爺さんにとどめを刺しておかないとヤバいと判断したからだ。


 自警団の男たちでさえあの強さなのに、アレックス爺さんがゾンビ化してしまったら、ただでさえ難易度ハードのゲームが難易度ナイトメアのゲームに進化してしまう。


 それだけは避けなくては。


 そう思い、戻ろうとしたが…。


「もう助けるのはムリだ!諦めろ!」


 ジョナサンに腕を引っ張られる。


 いや、助けるんじゃなくてとどめ刺しに行くんですけど!?


「こっちだ!早くしろ!」


 ジャンが急かす。


 ヤバい、マジヤバい!

 このままだと難易度ナイトメアが確定してしまう!


「このままじゃ難易度ナイトメアになっちゃう!!」

「何言ってんだこんな時に!?」



 難易度ナイトメアが確定してから数分後。


 オレはジャンとジョナサンと一緒に走っていた。

 

「皆はどこに逃げたんだ?」

「ゾンビのいる方向へ行ったとは思えない。ということは恐らくこの先だろう」


 ジャンの考察に納得する。

 自警団の二人だけなら行けそうだが、十人近くの非戦闘員を守りながらではまずムリだ。

 それならば、今のところゾンビがいないこの先に逃げたという可能性は高い。

 早いところ合流したいものだ。

 皆の無事を確認したいというのもあるが、それ以上に魔力のある自警団たちと合流したいからだ。

 アレックス爺さんたちが死んだ今、希望は彼らだけだ。


「皆、無事だったのね!」


 樹里愛がオレたちに気が付いて近寄ってくる。


「ま、なんとかな。皆も無事に逃げられたみたいだな」


 ジョナサンが答える。

 樹里愛の話では逃走中、何度かゾンビの襲撃を受けたらしいが、自警団の二人のおかげで無事だったらしい。


「君たち、無事だったか」


 自警団の二人もオレたちに気づき駆け寄ってくる。


「あれ?アレックスさんたちは?」

「俺たち以外は全滅だ」


 何があったかを二人に伝えるジャン。


「信じられないわ。アレックスさんがやられたなんて・・・」

「ピーターとレイもかなりの実力者だったんだ。それが・・・」


 二人とも信じられないといった様子だがやられてしまったのは事実だ。

 信じてもらうしかない。


「あは、あはは、あははははは!」


 突然誰かの笑い声が聞こえた。

 誰だ?と声のする方へ目を向けると、笑っていたのはバカカップルの彼女だった。


「彼女、あれからずっとああやって笑ってるか、あの男への恨み言を呟いてるのよ」


 そうなのか、チンピラに捨てられたショックで壊れちゃったのかな?

 あれはあれで面白いから、助けて正解だったな。


「ねぇ坊や?お姉さん、坊やにお願いがあるんだけどぉ」


 バカカップルの女の方がそう言って近寄って来た。


 媚びてるような声が気持ち悪い。


 未来のオレの会社でも普段からこういう声で話す女がいたが、碌な奴じゃなかった。

 普段のやらかしもそうだが、仲間内でしか出さない本性がヤバすぎた。

 それを知ってる今、こんな声を出すヤツなんて警戒心しか湧かない。


 というか、なんでヤバいヤツってこういう媚びた声出すんだろうな?

 それ自分から私はヤバいヤツです、って自己紹介してるようなもんだからやめた方がいいぞ。


「これからはぁ、お姉さんを優先して守ってほしいのぉ。お礼はするからぁ」


 そう言って胸を押しつけてくる。


 助かりたいから体で誘惑ってマジかよ!

 最高、最高だよこの女!

 やっぱり彼氏も彼氏なら彼女も彼女だった。


 どんだけ面白いんだよこのバカカップルは。


「ちょっと!子供相手に何してるのよ!?」


 と樹里愛が割り込んで、オレと女を引き離す。

 正直あのままだと笑いだしそうだったから助かった。


「なによ!邪魔しないで!」

「子供相手に誘惑とか何考えてるの!あなたもこんな女、相手にしない!」

「ちょっと!勝手なことしないでよブス!」


 いや、樹里愛の方が明らかに美人だと思うぞ。

 というか、樹里愛以上の美人なんてそういないだろ。

 西洋風の顔立ちに綺麗な金髪、バランスの取れたスタイル。

 これ以上の美人なんてそういないんじゃないか?

 てか、樹里愛ってもしかして芸能人?

 これだけの美貌ならあり得るな。


「ガァァァッ!!」


 そんな時、今までよりも大きなゾンビの声が聞こえた。

 オレはその声の元凶にすぐに思い至った。


「ねぇ、オレの予想を言ってもいい?」

「さっきもやめろって言ったのに言っただろお前。知ってるぞ、日本ではそれをフラグを立てるって言うんだろ?」


 そう、ジョナサンの言う通り口に出すとその通りのことが起こるというフラグだ。

 さっきは面白がって口にしたが、今回は予想が当たると困るので口にしない。

 意味は無いかもしれないが、藁にも縋りたい状況なのだ。


「きっとあのジジイよ!あのジジイがゾンビになったのよぉぉぉ!!」


 バカカップルの女が叫ぶ。


 即フラグ立てやがった、この女!

 その声を聞きつけたのかこちらへ近づいてくる音がする。


 フラグ回収早すぎだろ!


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