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79 意思

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ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

~ジャンSIDE~



 面白いものを見て、楽しいことをしたいだけ…か…。


 それが大我が前から言っていた『素晴らしい人生』ってヤツか。


 気持ちはわかるが、それはとても難しいことだ。


 この世界は時折、理不尽な運命を与えてくるのだから…。


「そこにいるのはもしかして阿久津大我かい?」


 振り返ると、長身の男が立っていた。


「そうだが…。おまえは?」

「自己紹介がまだだったね。私は〈フラッシュ・ゲイル〉。〈サバイバーズギルド〉という組織でトップ…の一人をさせてもらっている」

「サバイバーズギルドだと…!?」


 たしかそれは、あのアレックスとかって爺さんが言っていた、プレイヤーを保護している組織だった筈…。


 そんな組織のトップ層が何故大我を知っている!?


「え~と…大我から聞いてないかな?以前知り合う機会があって…」

「いや、聞いてないんだが…」


 まあ、多分言うのを忘れていたんだろう…。


 大我だしな。


「樹里愛……も聞いてなかったんだろうな…。聞いてたら俺たちへ伝えてる筈だし…」

「ごめんなさい…」


 さっきから樹里愛の様子がおかしい…。


 一体どうしたんだ?


「いや、大我の世話を樹里愛に押し付けてしまっていた俺たちも悪いさ。な、ジャン?」

「そうだな、その通りだ」

「やっぱり仲間内でも大我はそういう扱いなんだね…」


 この言いぐさから考えて、このフラッシュという人物も、知り合って早々、大我に迷惑を掛けられたらしいな。


 まあ、大我の行動は基本的に無茶苦茶だからな…。


「大我は興味があることが最優先ってところがあるからな…。恐らくなにか興味を惹かれることがあって、完全に忘れていたとか、そんなところだろう」

「だろうな」

「いや、一応大我の名誉のために説明させてもらうと、後でちゃんと紹介し合う場を作るから、と言ったきり放置してしまっていた私も悪いところはあったから…。君たちはデモンズゲームに参加して日が浅いから、諸々のことを説明しておきたかったんだけど、中々時間が取れなくてね…。すまない…君たちにとっては死活問題だろうに…」

「いや、別に頭なんて下げなくても…。というか、サバイバーズギルドやハンターズギルド、それにゴーストとかの基本的なことなら、大我から聞いてるから大丈夫だぞ?な、ジャン?」

「ああ。なんか大我が親切なプレイヤーに出会って、ハンターズギルドへ連れて行ってもらって聞いてきた、って俺たちに話してくれたからな」

「なんでローレンスのことやハンターズギルドに行った話はして、私に会った話はしなかったんだ大我…」


 まあ、大我だしな…。


 あいつの考えていることはよくわからん。


「まったく…。大我といいローレンスといい…」

「そのローレンスっていうのは…」

「私のことだよ」


 声のした方へ目線を向けると、銀髪の見目麗しい女性がいた。


「やあ大我…って大丈夫かい?」

「そういえばどうして大我は気を失っているんだい?」


 まあ、事情を知らないヤツらからしてみたら、意味わかんないよな…。


「ジュースだと思って酒を大量に飲んじまったんだとさ」

「それは災難だったね」

「いやいやローレンス…。彼はまだ未成年だよ?誤って飲酒してしまったことを災難で済ますのは…」

「デモンズゲームなんてイカれたゲームに参加してる癖に、今更未成年飲酒なんかで騒ぐのかい?殺し合いよりまだ健全じゃないかな?」

「そういう問題かい?まったく…」

「それにしても大我…数日見ない間に更に強くなったみたいだね?」


 ローレンスという女は大我を見て、楽しそうに呟いた。


「数日?まさか…」

「ああ、最近大我は私と一緒にハンターズギルドのクエストを片付けていたからね。その時にいろいろと教えてあげたのさ。戦い方や、強くなる方法をね」


 それで最近の大我の行動に合点がいった。


 それで最近鍛錬の方法とか、異能の使い方とかをいろいろとレクチャーしてくれてたわけだな。


「俺たちもいろいろと大我を通じて世話になっていたみたいだな。礼を言う」

「気にしなくていいよ?ちゃんと取引した結果、大我にいろいろと教えることになったんだし」

「取引した結果?まさか…」


 フラッシュがなにかに気がついたらしい。


「どうしたんだ?」

「彼女…戦闘狂なんだ…。だから大我に求めた対価ってのは恐らく…」

「君の予想通りさゲイル。十分強くなったら私と戦ってもらう。それが私が大我を鍛える交換条件だったのさ」


 そう言ってローレンスという戦闘狂せんしは、良い顔で笑った…。


 その瞬間、俺はこの女から、得体の知れないなにかを感じた。


 根源的な恐怖…とでも言えばいいのだろうか?


 そう…自分が狩られる側でしかないと理解させられたような…そんな感覚…。


 正直、この女とはあまり関わり合いにはなりたくないな。


「この子と…戦う…?そのために鍛えている…?」


 呆然としていた樹里愛がローレンスへと掴み掛かる。


「ふざけないで!?この子をなんだと思っているの!?」


 そんな樹里愛の手を振り払いながら、ローレンスは樹里愛へ胡乱な目を向ける。


「なんだいあなたは…?顔は似てないけど大我の姉かい?まあ、家族なら大我のことが心配なのはわかるけど、大我も了承して取引したことなんだよ?それなのに私を責め立てるなんて、おかしいんじゃないかい?」

「子供相手に危険なことを対価にして取引するなんて、責められて当然じゃない!」

「でも大我自身が了承して、選択したことなんだよ?それなのにそれを咎めるのは、大我の意思を否定、いや、無視してるってことじゃないかい?」

「ええ、そうね!この子は危機意識が薄いから、だから危険なことをしようとしているのなら誰かが止めてあげなきゃいけないの!たとえそれが大我の意思を否定することになってもね!」

「過保護だね…。そのうえ傲慢だ。大我には大我の意思があり、望みもあるのに、それを否定して自分の思い通りにしようなんてね…」


 ローレンスが樹里愛を嘲笑する。


 言っていることはわかるが、大切に思っている人が危険なことをしようとしていたら止めるだろ普通…。



お読みいただきありがとうございます!

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