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71 代用品

最新話投稿しました!

お楽しみいただけると幸いです!

「舞衣さん!?あれ、いない!?」


 ナースステーションへと辿り着いたが、舞衣さんも楠本さんもいなかった。


 まさか…。


 急いで気配を探る。


「屋上か!?樹里愛屋上に案内して!」

「わかったわ、こっちよ!」


 樹里愛の案内で屋上に向かう。


 再度気配を探ったところ、舞衣さんは意識を失っていたようだった。


 そんな舞衣さんと一緒に屋上にいるってことは、つまり楠本さんは…。


「ここよ大我!」

「先制攻撃を仕掛ける!下がって樹里愛!」


 屋上へと続く扉を開けると同時にブーストダッシュでに攻撃を仕掛ける。


「あらぁ?随分と思い切りがいいのね大我君は…」


 オレの攻撃をあっさりと捌いた敵…楠本香織が、オレに対して予想外と言外に含めた声を発する。


「誰だって家族に危険が及んだら怒りでこうもなるさ…!それを間違ってるとか理由がわからないってヤツは人の気持ちを理解できないクズか想像力の欠片もないクズだけだ。つまり理解も想像もできてないアンタはクズだからここで死ね!」


 再びブーストダッシュで距離を詰めて拳からの後ろ回し蹴りを叩き込もうとするが、簡単に避けられたうえ、距離を開けられてしまう。


 意外と反応が早い…厄介だな…。


「あらあら、せっかちな子ね…そんなんじゃ女の子にモテないわよ?そういうことは教えてあげてないんですか?ダメなお姉ちゃんですね、スペンサー先生?」

「楠本さん、あなた…」


 樹里愛は事ここに至っても、まだ信じられないという表情を浮かべている。


 まあ、同僚が他の同僚を誘拐するなんて異常事態なんだ、当然だろう。


 だが、今のオレにはそんなことを気に掛ける余裕なんてない。


 もう一人の母親とも言える舞衣さんの命が掛かってるのだから…!


「そんな御託はどうでもいい!舞衣さんはどこだ!?」

「ふふふ…。どこだと思う?」


 この屋上にいるのは気配察知でわかっているのだが、何故か場所を探ることができない。


 この女の異能か、またはこの病院に潜んでいるゴーストの能力なのか…。


 いや、どっちでも構わないか…だって、やることは変わらないんだから。


「楠本さん、何故こんなことを…と聞きたいところだけど、今は置いておくわ。常盤さんはどこ?一刻も早く答えることをお勧めするわ」


 そう言いながら自身の異能である剣を出す樹里愛。


 これで二対一…さっさとコイツをボコボコにして、舞衣さんを助けないと。


「教えると思います?」

「思わない!!」


 ムカつく仕草で挑発してくる楠本へ攻撃を仕掛ける。


「大我、わかってると思うけど爆破はなしよ!?大騒ぎになってここに人が来ちゃうからね!」


 言われなくてもそんなことわかってる!


 だからこんなにも苦労してるんだよ!


「使いづらそうな異能で大変ねぇ?さて、今度は私の番ね?」


 オレの攻撃を簡単に捌いた楠本は、そう言って楠本は棍棒のようなものを取り出す。


 なんだアレは…アイテムか?


「下がって大我!私が受けるわ!」

「任せた!」


 樹里愛に前衛を任せてオレは一旦後方へ下がる。


 爆破できないんだったら、魔力で強化した拳でボコボコにするまでだ。


 しかし樹里愛が楠本と剣を交えた瞬間、バチィッ!!と、なにかが弾けたような音が聞こえた。


 音の出所に目を向けると、


「ぐぅぅぅ…!!」


 剣を手放し、苦悶の声をあげる樹里愛が目に入った。


 あれは…!


「電撃か!?」

「正解よ大我君♪」


 そう言い放った楠本は樹里愛を蹴り飛ばす。


 あの女…!


「お姉ちゃんを傷つけられたからって怖い顔しないで大我君?仕方なかったのよ、誰だって痛い思いや苦しい目には遭いたくないでしょ?」

「舞衣さんをさらったり、入院患者を苦しめたりしてるヤツが言うことかよ!?」


 再びヤツの懐に飛び込み、胴体へと拳を打ち込む。


 もちろんヤツはあの電撃棍棒で反撃してくるので、その都度距離を取って回避する。


 あれに当たったら、樹里愛のように麻痺して戦闘続行が困難になりかねない。


 わかってはいても、思うように戦えないのはじれったい…!


「あら?なんで私が篠原さんを苦しめているなんて思うの?」

「気づいてないのか?アンタからゴーストの匂いがプンプンしてるぞ?」


 そう、ヤツが魔力を使い始めた直後からゴーストの匂いが強くなっているのだ。


 つまり、楠本とゴーストは協力関係にあったのだ。


 そしてこれは推測だが、恐らく楠本が魔力によってなにかをすることが、ゴーストがターゲットにアクションを起こすトリガーになっていたんだと思う。


 そして楠本が行っていたことにも予想はついている。


 それは…。


「アンタ、あの患者に悪夢を見せていたんだろう?『対象者に悪夢を見せる』っていう、自分の異能でさ?」


 楠本の表情が変わる。


 ってことは図星か…。


 よかった合ってて…。


 こんなドヤ顔で言っておいて間違っていたら恥ずかしすぎる。


「その顔は正解か?まあ、そのアイテムで応戦してきた時から戦闘用の異能ではないと思ってはいたけどな。それにしても、まさか悪夢を見せるなんて異能とはね…。どんだけ悪趣味な能力なんだ、性格悪すぎだろ」

「私としては最高の能力なんだけどね?だって、この異能を手に入れてからというもの、毎日が最高に輝いているんだもの!!」


 悪夢を見せる能力で?


 いや、なんとなくわかってきた…。


「その異能で悪夢を見せられた人たちが苦しんでる様を見て楽しんでるってことか?ホント良い趣味してるな。人の趣味なんて千差万別なんだし、否定はしないけど」

「理解されるなんて思っちゃいないわ。でも仕方ないじゃない?だって、楽しいんだもの!」

「楽しい…ですって…?」

「樹里愛、大丈夫なのか?」

「大丈夫よ大我…。それよりも、楽しいってどういうこと…!?」


 樹里愛は楠本へ鋭い目を向ける。


「どういうことってそのままの意味ですよ?悪夢を見せられて憔悴している顔、ゴーストに生命力を吸われて苦悶している顔、いつ終わるともしれない苦しみに絶望している顔…。どれもとても素晴らしかったんですよ!!しかもそれを作り上げたのは私自身!!これが楽しくないなんてウソじゃないですか!!」

「狂ってる…!」


 樹里愛は義憤を感じていきどおってるみたいだけど、オレには彼女の気持ちが少し…いや、大分わかってしまった。


 そうだよなぁ…そりゃ楽しいよなぁ…。


 オレだって自分が描いた筋書通りにクズがバッドエンドを迎えたら、多分嬉しいし楽しいだろうし…。


 さすがにやらないけど…。


「わからないなんて可哀そう…。ならスペンサー先生にもわかりやすいように、なにが楽しいのかを説明してあげますね?」

「そんなのいらないわよ!!」


 激昂して今にも殴りかかろうとする樹里愛だが、体の痺れが取れていないのか動けないでいる。


 ちなみにオレは、あの女の説明とやらが気になるので、元から動くつもりはない。


「いいですか?私の異能は夢を見せるものなんです。悪夢だけじゃないから、大我君の推測は微妙に不正解ってわけですね。そしてこの異能の凄いところは、指定範囲が結構広いところなんですよ」

「指定範囲?」

「そうよ大我君。つまり、私が思った通りの夢を見せることもできるけど、それ以外にも素敵な使い方ができるのよ」


 素敵な使い方…?


「あなたが知らない記憶…それもトラウマになっている記憶を夢で見せることもできるってところかしら?そしてそれをあなたも鑑賞できる…と」

「さすがスペンサー先生、正解です!そしてこの能力を使っていけば、とても面白いことができると気づいたんです!それが…!」

「何度も繰り返して相手の記憶を知っていけばいくほど、よりターゲットを苦しませる悪夢を作り出すこともできるようになる…。最悪な異能ね…」


 マジかよ…えげつな…。


 でも相手の苦しむ顔を見るのが好きですって公言するようなあの女には、ピッタリの能力だな。


「ええ、その通りです!そして今回のターゲットである篠原さんは、最高傑作になる予感がするんですよ!なんせあの女、自分の顔が男受けが良いってことを利用して、彼女がいる男を寝取るのが趣味なんですよ!?そんな女が夢では男からも女からも邪険に扱われ、現実ではストレスと病状からやつれていって、日に日に醜くなっていく…。ああ、もう…最っ高だと思いませんか!?」


 ターゲットの女もクズだったか…。


 もしかして、クズの方がゴーストに狙われる率が高いんじゃ…?


「ねえ樹里愛?例の患者って別に助ける必要なくない?オレ、なんか助けたくなくなってきたんだけど…」

「なに言ってるのよアンタ!?たしかにアンタに対して悪い影響与えそうだから、あまり近づけたくない女だなとは思ったけど…だからって見殺しにするのはあんまりにも…」

「ああ、あともう一人…ターゲットにしたい人がいるんですよ」


 下卑た笑みを浮かべながら樹里愛へ目を向ける楠本。


 まさか…。


「あなたですよ、スペンサー先生?」

「私…!?」

「ええ、そうです。ねえ、スペンサー先生…?」


 一拍置いて、楠本は心底楽しそうに樹里愛へ言い放つ。


「大我君を亡くなった弟さんの代用品として、姉のように世話を焼くのはどんな気分ですか?」

本日は午後5時にも最新話を投稿しますので、よければ読んでください!

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