70 都合の良い人形
前回から8時に投稿すると言っておきながら、投稿が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
これからは気を付けますので、これからもよろしくお願いします。
「彼女の病室はこちらです…」
樹里愛が歩き始める。
その後を追いながら、神父に対しての警戒は解かない。
アイツはなんの罪悪感も抱かずに人を利用…いや、犠牲にできる外道…。
オレはさっきの件であの神父にそういう印象を持ってしまった。
なら、警戒をするのは自明の理だろう。
「どうしてそんなに神父様を警戒しているの?神父様は素晴らしい人なのに…」
「舞衣さんたちに問答無用で催眠を掛けておいて素晴らしい人か…。正直お前にとっては使命に殉じている聖職者なのかもしれないが、オレにしてみたら大切な家族に突然得体の知れない催眠を掛けるイカれた野郎にしか見えないね」
「自分の身内に対しては随分と優しいのね?以前私の制止を振り切って、ゴーストに憑かれた哀れな被害者に罵声を浴びせた人とは思えないわ」
やっぱり根に持っていたか。
「そりゃ自分の身内に危害を加えられてなんとも思わないヤツなんていないだろ?というか、身内と見ず知らずの人を同列に扱えって方が無理な話だ。お前らは違うのか?」
「当然でしょ?私たちには崇高な使命があるんだから。たとえ、仲間がやられようと、任務は遂行しなければならない…。私たちの助けを求める、無垢なる人々を守るためにね…。犠牲になった同士たちもきっと納得している筈…。わかるかしら?そこが私たちとあなたの…プロと素人の違いよ」
なるほどね。
つい馬鹿にしたような笑いが零れてしまう。
「なにかしら…?」
「いや、悪い。癇に障ったか?なら謝るよ。だけど…ふふ…」
「言いたいことがあれば言えば良いんじゃないかしら?」
「いや、なに…。前はあまり深く考えず、とりあえず人形って言ったんだけど、まさかそれが事実だったとはな…」
「なんですって?」
「だってそうだろ?無垢なる人々のためって価値観を受け付けられて、そのためだけに生きる。そして、そんな、自分じゃない誰かの思惑のために身内の犠牲すら肯定するなんて…!しかもそれを誇りに思って他者を見下す?これを滑稽と言わずになんて言うんだ?まさに都合の良い人形そのものじゃないか!」
あまりの可笑しさに笑いが止まらない。
「もっと言うならさ、その無垢なる人々ってのも笑えるよな?だって、お前らに助けを求めるってことはさ、都合の良いヒーローに助けられるのを求めるってことだろ?ゴーストに憑かれるようになった原因が自分たちにある、自業自得のヤツらがだぜ?そんな自業自得の連中が、自分でどうにかできないからって人に助けを求める?どこまで情けないんだろうな、って素人であるオレは思っちゃうんだけど、どんな人も差別することなく…いや、どんな人間だろうと考えることなく救うだけのプロであるお前らは、そんなことすら考えないんだろうな?羨ましいぜホント…悩んだりすることが無い生き方を、なんの疑問も無く受け入れられるヤツらはさ!」
「…なにが言いたいのかしら……?」
「わからなかったのか?救う価値すら無い連中だろうと、そんなことを考えること無く救うお前らは、いつだって自分は被害者だと、助けられて当然の存在だと考えてるクズ共からしたら、とても都合の良い人形だなって言ってるんだよ」
姫路の眉がつり上がっていく。
それがわかっていても、オレはもう止まれなかった。
「だけどな、人間ってのはそうじゃない。自分の大切な人に危害が加えられたら平静ではいられないし、怒りが湧くもんなんだよ。だから復讐する者も生まれるし、復讐されて当然のクズも生まれる。でもお前らにはそんなこと関係ない。だって、教えではゴーストに憑かれた者は被害者で、被害者は救うものとされているから。な?お前らは教えによって自動で動いている人形そのものだろ?」
クズだろうが善人だろうが関係なく、機械的に救うなんて、まさに心の無い人形
だ…。
そんな人形が、人を死に追いやったクズは擁護して、それを責めたオレは逆に責め立てるとか…。
ホント笑える。
「この…!」
「やめなさい恵令奈さん」
「しかし…!?」
「我々には我々の、彼には彼の考えがあるのです。たしかに彼の主張は我々を侮辱するものだったかもしれない…。ですが、彼がそう思うことになった原因が我々にあるのもまた事実です。ならば、私たちにできるのは彼に与えてしまった印象を払拭し、理解してもらうことでしょう?彼を責め立て、無理やり考えを変えようと罵声を浴びせることではありません。それだけは、絶対の筈ですよ?」
「は、はい…。申し訳ありません…」
唇を噛みしめながら、神父の言葉を肯定する姫路。
上司から諭されたら自分の意見も言わずに押し黙るんだな、と煽ろうかなとも思ったが、樹里愛がオレの腕を掴んで言外にやめろと訴えてくる。
正直、まだ言い足りなかったが、引き下がることにした。
話進まないし。
*****
「ここが例の患者…篠原さんの病室です」
ようやくゴーストに憑かれているであろう患者の元に辿り着けた…。
長かった…。
「ここがそうですか…。阿久津君、あなたの感覚もここで間違いないと訴えていますか?」
「ああ…。間違いなくここにゴーストに憑かれてる人がいる」
間違いない…とオレの感覚はそう言っている。
だが…。
「正直、もうアンタたちと行動を共にするのは嫌なんで、ここからはアンタたちだけでやってもらっていいか?」
「なっ…!?」
除霊の瞬間を見てみたかったが、これ以上こいつらと一緒にいるのも嫌だしな…。
それに気になることもあるし…。
「あなたね!?自分勝手もいい加減に…!?」
「構いませんよ。後は我々に任せてください」
「いいんですか神父様!?」
「ええ、いいんですよ。目的だった、ゴーストに取り憑かれた人に辿り着けたうえ、他にもいろいろわかりましたから。後は…」
「ああ、後はアンタたちに任せるよ。樹里愛、行こう」
「ま、待って大我!?…それじゃあ、終わりましたら再度私たちに声を掛けにナースステーションへと来てください…」
そう言って樹里愛はオレの元へと走ってくる。
さて、じゃあオレはオレで気になることでも片付けますか。
「大我!どうしてわざわざ喧嘩を売るようなことを言ったの!?それにここまで来て別行動を取るなんて…」
「単純に気に入らなかったからだけど…。それに今のところ実害が出てないとはいえ、舞衣さんに対して躊躇無くアイテム使いやがったし…」
「あれは…たしかに私もどうかと思ったけど…」
「樹里愛だって不快感を露にしてたじゃん。てか、オレと樹里愛って同じようなタイプに対して嫌悪感抱くのか…。もしかしたら似た者同士なのかもねオレたち」
「それは…。いえ、そうかもね…」
なんで言い淀むんだろう?
いつも説教してるオレと似てるとか嫌なのかな?
地味にショック受けるから、違う理由であってほしいな…。
「それはそうと、どこに向かってるの?」
「ナースステーションだよ」
「ああ、常盤さんたちの様子を見に行かないといけないものね?」
「それもそうなんだけどさ、ナースステーションに今回の事件を解決する鍵がありそうな気がしてさ…」
というか、なんか匂いがプンプンしてるんだよね。
「鍵…?」
「うん…。直感だから、確証はないんだけど…」
「それなら私も一つ、気になることがあるんだけど…」
気になること?
なんだろ?
「ほら、あの神父が言ってたじゃない?私たちを姉弟と言う人たちは、私たちの魔力の波長が近いから勘違いするんだろうって…」
「たしかに言ってたけど…。それがどうかしたの?」
「いえ…。楠本さん…私たちのことを姉弟なのか?って言ってたから…」
「そういえば…。単純にオレたちのやり取りを見てって可能性も無きにしも非ずだけど…」
「そう、何事にも例外があるのはわかってるけど、アンタの直感の件もある…。もしかしたら…」
普通に考えたらあり得ない…。
あり得ないが…もしも万に一つ、億が一つ…予想が的中していたとしたら…。
「急ごう樹里愛!舞衣さんが危ないかもしれない!」
「ええ、急ぎましょう!」
そう言ってオレたちは、ナースステーションへ向かって走り出した。
お読みいただきありがとうございます。
本日は投稿が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。




