69 嫌悪感
本日から投稿時間を少し早くさせていただきました。
これからもよろしくお願いします。
~大我SIDE~
樹里愛と神父様が何を話していたのかは知らないが、なにか気に食わなかったので会話に割り込むことにした。
「何の話してるの?早く行こうよ樹里愛」
よくわからないけど、樹里愛が他の男の人と話しているのを見るのは…なんかこう…嫌な気分になる。
でも、それを樹里愛に悟られるのはなんか嫌だった…。
愛衣に対してすらここまでの独占欲を感じたことは無いのに、なんで樹里愛に対してはここまで…。
よくわからなくてイライラする。
「どうかしたの大我?」
「別に…。なんでもない」
イライラする…。
なんでもいいからこのモヤモヤを発散したい。
「なあ神父様?ゴーストを顕現させれば、この前みたいにボコボコにしてもいいんだよね?」
「あまり褒められる言い方ではありませんが、まあ、その通りですね」
「ならいい」
絶対にオレがボコボコにしてやる。
「着いたわ。ここに例の患者の担当者がいるわ」
そう言ってナースステーションへと入っていく樹里愛に続いて、オレもナースステーションへと踏み込む。
「え?大我?なんでここに…?」
ナースステーションには舞衣さんがいた…。
そういえばここ、舞衣さんの職場だったな…。
*****
「スペンサー先生が仰っていた最近知り合ったっていう少年が、まさかウチの大我だったなんて…。世間は狭いですね…。あ、大我!スペンサー先生に迷惑掛けて無いでしょうね!?」
「掛けてるわけないでしょ?まったく…信用無いなぁ…」
「阿久津君…あなた、よくもまあ、そんなウソを堂々と言えるわね…」
「やっぱり迷惑掛けてたんですね!すいません!ほら、アンタも謝っておきなさい!」
「痛い!痛いんだけどおばさん!?」
無理やり頭を下げさせようとするとか、いくらなんでも酷くない!?
「いえ…あの…。そこまで気にしてないですから…。それに、私は大我の世話を焼くことを苦労とは思ってないですし…」
「え?それはどういう…?」
「スペンサーさんと阿久津君、実の姉弟みたいですもんね」
姫路のフォローが入るが、その言い方だと誤解を招く気がする…。
「姉弟?どういうこと大我?」
ほらね?
「いろいろ面倒見てもらってるだけだよ…。認めたくないけど…」
「やっぱり迷惑掛けてるんじゃない!!」
「掛けてない!」
「いえ、掛けてます」
「掛けてますね、間違いなく…」
「神父様も姫路も酷くない!?」
「掛けられて無いと言うとウソになるけど…」
「樹里愛まで!?」
皆でなんなんだよ!?
そんな言われるほど迷惑掛けて…掛けて…。
「あれ?もしかして結構迷惑掛けてる?」
「掛けてるわね、間違いなく。でもいいのよ別に、迷惑なんていくら掛けても…。アンタが私のそばで、元気に生きていてくれさえすればそれだけで私は…」
「ん?ん~…?本当にどういう関係なの?」
「どんなって…他人には言えない関係?」
「アンタそれ前にも誤解されるから言うなって言ったわよね!?」
「なんとなく理解しました…。すみません…。この子馬鹿なんです…」
舞衣さん、さすがにそれは酷くない!?
「オレと樹里愛の関係についてはもういいでしょ!それよりも変な患者のことを聞こうよ!」
話題逸れすぎ!
誰のせいだ!!
「言っておくけど、話が進まないのはアンタのせいよ?」
さすが舞衣さん…オレが考えていることが筒抜けだ…。
*****
「例の患者のことですよね?担当の子をすぐ読んできますので少し待っていてもらっていいですか?」
「ええ。お願いします」
そう言って舞衣さんは、さっき見かけた看護師さんを呼びに行ってしまった。
「まさか常盤さんが前に話してた、息子みたいな男の子ってのがアンタだったとはね…。常盤さんが言うように世間は狭いわ…」
「どうしよう…。これ確実に樹里愛に迷惑掛けたからって説教されたうえ、罰を受けさせられるパターンだ…。最悪だ…」
「でも、今日の様子を見るだけでも、阿久津君は説教されるべきだと思う…」
「なんでだよ!?」
「そりゃ、アンタが悪いからでしょ?」
舞衣さんが看護師さんをつれて戻ってきた。
「スペンサーさん、彼女が?」
「ええ。彼女が例の患者の担当の〈楠本香織〉さんです」
「こんにちわスペンサー先生、それと皆さん初めまして。楠本と申します。常盤さんから、皆さんも〈篠原さん〉のことで話を聞きたいとお聞きしたのですが?」
「ええ。彼らは聖王教会の聖職者ということで、相談に乗ってくれるそうなの。だから篠原さんのことを話してもらってもいいかしら?」
「それは構いませんが…。一ついいですか?」
「なにかしら?」
「常盤さん、もしかして彼が息子同然って言っていた大我君ですか?」
「ええ、そうよ?この子が小さいころから面倒を見ている、私の息子同然の阿久津大我よ」
「やっぱり!ようやく会えたわ!私、楠本香織って言うの。よろしくね!」
「よ、よろしくお願いします…」
なんでこの人オレに対してこんなに食いついてくるんだ?
「常盤さんの娘さんと仲良いんでしょ?私、幼馴染モノって大好物なの!」
なるほど、そういうことか…。
「ハイハイ、その話はまた今度にして!今は例の患者のことをお願いね?」
「す、すみません…。なんか幼馴染の女の子にお世話されなきゃまともに生活できない男の子ってシチュが尊過ぎて…」
「なんか最近、オレへの風評被害が酷い気がする…」
別に愛衣に世話されなきゃ生活できないわけじゃないのに…。
「風評被害じゃないわね。普段の生活態度を改めなさい」
「その言い方じゃ、オレがなんか悪いみたいじゃん」
「悪いみたいじゃなくて、悪いのよ…」
「え…。なんですかこの会話…。スペンサー先生と大我君、まるで御姉弟みたいじゃないですか?年の離れた姉弟モノ…。大我君…どこまであなたは私の性癖に突き刺さるの…?」
「性癖とか言い出したよこの人。大丈夫なの?」
「楠本さん、後で個人的に話したいことがあるから、時間を取ってもらってもいいかしら?それとそろそろ本題に入ってもらいたいのだけど?」
樹里愛がとてもいい笑顔で、話を進めろと詰める。
樹里愛は美人だからな、怒った時の顔は凄く怖いのだ。
「個人的には御二人の関係性を教えてもらいたいところですけど、今は我慢します…。患者は〈篠原有美〉さんという若い女性なのですが、時々原因不明の症状が現れるんです」
「それってさっき樹里愛が言ってた突然昏睡状態になったり、体の痛みを訴えたりってヤツ?」
「そうですね。他にも、突然体中に発心が出来たり、高熱になったりもしていて…」
「ふむ…。それが全て唐突であり、原因が不明と…?」
「ええ。体の不調なので一概には言えないのですが…話を聞いた限りでは、悪夢を見た直後に体調に変化があるみたいで…」
「ほう…悪夢ですか?」
「ええ。変に記憶に残っている悪夢をよく見るみたいなんです。その直後はほとんど確実に体調が悪くなるって言っていて…。さすがにオカルトじみてるし、気にし過ぎなだけだと思うんですけど…」
いやいや、ほぼそれで確定でしょう。
「なるほど。貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました」
「こんな話でよろしいんですか?」
「ええ。恐らく悪夢を見たショックで体調を崩しているんでしょう。心と体というのは繋がっていますからね。そして悪夢と言うのは自身でも気づいていない不安感から来るもの。その不安を解消できれば、悪夢を見ることも無くなり、体調も良くなる筈です。なので、彼女と面会させてほしいのですがよろしいですか?私も聖職者の端くれ。彼女の不安を解消するため、力を尽くしたいのですが…」
スゲェそれっぽい感じのこと言ってるな神父様…。
「面会ですか?それは…」
「よろしいですよね?」
そう言いながら神父様は、自分の指に嵌めている指輪へ魔力を込めて、舞衣さんと楠本さんへと向ける。
「ええ…。構いません…」
「篠原さんのことをよろしくお願いします…」
なんか舞衣さんたちの様子変じゃない?
「姫路、これって…」
「私たちに配備されているアイテムの能力よ。相手の意識を希薄にしてこちらの要求を通しやすくするのよ」
「は?」
そんな凶悪なアイテムを舞衣さんに使ったのか?
こいつら…!
「それでは行きましょうか?」
「ちょ、ちょっと!?彼女たちは大丈夫なのですか!?」
「すぐに意識を取り戻すので心配しないでください。それよりもスペンサーさん、例の患者の体調が心配です。病室への案内をお願いしてもよろしいですか?」
「っ…。わ、わかりました…」
樹里愛もあの神父に憤りを感じたようだった。
そりゃそうだろう。
樹里愛よりも倫理観とか薄いって自覚があるオレですら、こいつらに嫌悪感を抱いているのだから…。
お読みいただきありがとうございます。




