64 アヴェンジャー
匂いがする廃ビルはここか…!?
時間を見ると、幻覚で見た時間より3分前…!!
「ギリギリだ…!突入するぞ!」
「ええ…!?」
姫路と廃ビルへ入ると、明らかに半グレとわかるような連中が下品な笑い声をあげながら屯していた。
「なんだテメェ…ぶへぇ!?」
「邪魔だクズ共!」
隙だらけの顔面を殴り飛ばす。
驚愕して固まっているクズ野郎の仲間たち。
お前ら、イキってる癖に実戦慣れしてないとか、ファッション半グレか?
「オラオラどけよクズ共!悪霊に憑かれてる馬鹿はどこだ!!」
「被害者になんてことを言うの!?信じられない!!」
んなことどうでもいい!!
ターゲットはどこだ!?
「な、なんだよお前ら…!?いい加減にしてくれよ…!?なんであたしばっかこんな目に…!?」
言動からして怪しいヤツ発見!
時間を見ると、幻覚で見た時間を1分過ぎていた。
あれ?
「怪しいヤツ発見したけど、時間になってんのにゴーストが出てきてないのはなんでだ?」
「……推測でしかないけど、恐らく私たちが介入しなかった場合、彼女がゴーストを呼び寄せてしまうなにかしらのアクションをしていたんだと思う。でも…」
「オレたちが騒ぎを起こしたせいで出てこなくなったと…?それじゃあ、オレたちが悪いみたいじゃん」
「みたいじゃなくて、悪いのよ!時間が無かったとはいえ、ここまでの騒ぎにならないような方法なんていくらでもあったでしょ!?」
いや、あまりにも時間が無さ過ぎて絶対に無理だっただろ。
「いい?ゴーストは死んだときに諦めきれない願望があったからこそ、霊脈に還ることが出来なかった魂なの。だからその願望を刺激するようなアクションを起こせば顕現するの。なのに後先考えずに行動したうえ、こんな騒ぎまで起こして!落ち着いてゴーストの願望を探ってさえいればこんなことにはならなかったのに!!ここまでの騒ぎになってしまったら誤魔化すのだって大変なのよ!?」
「いや、その願望を探る時間が無かったから、こんな手段を取ったんだろうが…。なに?自分ならもっとうまくできたって言いたいのか?」
「そうね、少なくともあなたよりはうまく出来たわ!」
地味にムカつくな、この上から目線の態度…。
まあいいや。
「はいはい、そうですか。そんなことよりさ、つまりコイツがゴーストを呼び寄せるようなことをすれば、ゴーストが顕現するってことでいいんだよな?」
「恐らくね…。え?もしかして…」
「おい、そこのクズ女。お前さっきどんな会話してた?」
「ひ、人をクズ呼ばわりするヤツなんかに言うわけないだろ!?」
「いやいや、お前さ…。アイツらみたいなクズとつるんでるんだろ?ならお前もクズ…少なくともクズと同類ってことだろ?って、そんなことどうでもいいんだよ。お前、オレたちが来る直前までどんな会話してたんだよ?」
「やめなさいって!彼女は…!」
「わ、私たちが舎弟兼金づるとして使ってたヤツが首吊ったから、まさか自殺するなんてって笑ってて…」
「うわぁ…クズ過ぎて引くわぁ…。なあ、コイツら死んで当然のクズみたいだし、このまま放置しておかない?多分だけど、コイツらの死に様はすっごい笑えると思うぞ?」
「そ、そんなのダメに決まってるでしょ!?」
「なんでだよ?今の話聞く限り、悪いのはこのクズ女たちだろ?助ける価値ある?」
「無垢なる人々を守り救済する…。それが私たちの教義であり掟だからよ!」
「いやいや、こんなヤツが無垢?本気で言ってるのか?」
「当然でしょ?彼女はゴーストに憑かれた哀れな被害者。罪は無いわ。悪いのは死して尚、生者を苦しめる死者よ」
「コイツの場合はゴーストに狙われる理由も理不尽なものじゃなくて正当なものだろ?なのに罪は無い?本気で言ってるのか?って、ああ、そういうことか…」
「なに?」
「つまりこういうことだろ?お前ら教会の連中は、ゴーストに危害を加えられている被害者がいれば無条件に助ける。自分たちで善悪を判断することも、考えることもせずに…。なぜなら教義だの掟だのでそう決まってるから。はっ…!まるで命令通りにしか動けない操り人形みたいだな」
「なんですって…?」
「操り人形みたいだなって言ったんだよ。いや、自分たちで考えることすら放棄してるんだから、操り人形ってよりも、設定された通りのことを繰り返す機械みたいなモンなのか?どちらにしてもイカれてる」
「私たちの教義を馬鹿にしてるの!?」
「馬鹿にしてるのはお前らの教義じゃなく、お前ら教会の連中だよ」
「なっ…!?」
姫路がオレの言葉に怒りの隠し切れないという表情を浮かべた瞬間、当事者の癖に蚊帳の外になっていた女が口を開いた。
「な、なんなんだよお前ら…。なんで私を責めるんだよ…。悪いのは勝手に死んだアイツだろ…?それなのになんで私が責められてるんだよ…!?」
「いや、どう見てもアンタが悪いからだろ?なに自分は悪くないとか、悪いのは死んだヤツみたいな責任転嫁してんだよ?どこまでもクズだなアンタ」
「やめなさいって言ってるでしょ!もういいわ!後は私が解決するから、あなたは引っ込んでなさい!」
「へいへい、お好きにどうぞ」
「まったく…。見苦しいところを見せてすみません。私はあなたを保護しにここに来ました」
「わ、私を保護しに…?」
「ええ、そうです。それで、保護するにあたって、少し教えてほしいことがあるんですがよろしいですか?」
「教えてほしいこと…?」
「はい。さきほどあなたは『なんであたしばっかこんな目に』とおっしゃってましたが、一体何があったかを知りたいんです」
「な、何がって…?」
「些細なことでもいいんです。最近何か身の回りでおかしなことはありませんでしたか?」
「最近あったこと…。突然私の物が壊れたり、誰かの視線を感じたりとかはよくあったけど…。あと、手首とかに誰かに掴まれたような痣ができてたり…」
「確定じゃん」
「口を出さないで。物が壊れたり視線を感じたりした時の状況を教えてもらってもいいですか?」
「何をしていたか…?たしか…友達と馬鹿話をしていた時や楽しいと思うことをしていた時が多かったような…」
「あれか?自分を苦しめてたくせに楽しそうにしてるコイツらが気に食わなかったってところか?てことは、ここでゴーストを倒さなかったら、コイツが楽しそうにするたびに怪奇現象に襲われて、楽しい気分が台無しにさせられるってことか?そして最終的には呪い殺される…。そっちの方が面白そうだし、やっぱりこのまま放置しない?」
「そんなことできるわけないでしょ!?あなた一体なに考えてるの!?」
「なにって、基本面白いと思えることを追求してるだけなんだけど…」
「悪趣味ねあなた」
「それは自覚してる」
「な、なあ…。頼むから助けてくれよ…。なんでもするから…」
「じゃあ助ける代わりに死ねって言ったら死んでくれる?」
「え…?」
「ちょっと!?」
「なんでもとか言ってたくせになんだそれ?言葉も考えも軽すぎだなアンタ。そんなアンタのせいで死ぬ選択をすることになったとか、そりゃゴーストのヤツも復讐に走るわ」
つまり今回のゴーストは正当な復讐者、英語にするとアヴェンジャーってことだな。
ヤバい、アヴェンジャーとかカッコ良すぎ…。
オレ、ゴーストの方を応援したくなってきた。
「なんなんだよお前……!?なんでさっきからヒドイことばかり言うんだよ!?」
「さっきから言ってるだろ?アンタが悪いからだ」
「やめなさい!このままじゃ…!」
「もういい…。…たしが……ばいいんだろ?」
「会話するつもりあるんならちゃんと相手に聞こえるように言えよ。ホントに自分勝手なクズだな」
「だからやめなさ……」
「私が死ねばいいんだろ!だったらさっさと殺せよ!!!」
「わかった」
了承の声が聞こえた瞬間、ゴーストがクズ女を殺すためにこの世に顕現した。
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