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60 タイムパラドックス

「今思ったんだけど、この領域の中に犯罪者プレイヤーっているんだよね?なんでわざわざこんないるだけで辛い場所に隠れてるんだろうね?オレたちみたいなのから隠れるにしても、もっといい場所あったんじゃないかな?」

「ゴーストの領域ってのは、ゴーストの意思で効力を発揮させる対象を選べるからね。恐らく犯罪者プレイヤーはゴーストと手を組んでるんだろう」


 ゴーストと手を組むとかできるのかよ。


 本格的に人の道を外れてるな、そいつ…。


「多分ゴーストのエサとして一般人を誘拐して来ていたんだろう…。調べてみたら、ここ数日で行方不明になった人がそこそこいるみたいだったし」

「つまり…まさに外道ッ…!!…ってことか…」

「え?ま、まあ…そういうことだね…」

「あははは!大我は面白いねぇ!!」


 レイラにはウケたみたいなのでよかった。


「さて、隠れているのはわかっているよ?さっさと出ておいで?」


 レイラがそう言った直後、暗闇から男が現れた。


 ヤツが犯罪者プレイヤーか…。


「お前ら、ハンターズギルドの追手か…?」

「その通りだよ。一人違うのが混じってるけど」


 フラッシュを見ながら告げるレイラ。


 その目はなんかこう……邪魔者を見るような目をしていた。


 まあ、今まで消極的な敵対関係だったんだし、すぐには友好的になれないよね。


「私はフラッシュ・ゲイル。サバイバーズギルドに所属している者だ。突然だが君の身柄を拘束させてもらう。理由は…言わなくてもわかるね?」

「サバイバーズギルドまでいるのか!?しかもフラッシュ・ゲイル!?あの〈閃光〉か!?クソ!?」


 そう言って逃げ出す犯罪者プレイヤー。


 〈閃光〉?


 フラッシュの異名かな?


 カッコいいなぁ…。


 オレも異名とか欲しい…。


「逃がさないよ!!」


 レイラの刀が鞭のようにしなりながら、ヤツの足元を斬り裂く。


 前にもモンスター通り魔との戦いで見たけど、アレ便利だな…。


 オレの異能は基本的に大雑把だからなぁ…。


 ああいう、もろに使い手の実力が反映されるテクニカルな感じの異能もカッコよくて憧れる。


「それにしても、戦ってる時のレイラってカッコいいし綺麗だしで、素敵だよね…」

「思ってることが口から漏れてるよ大我?それより私たちも行くよ!」

「口から漏れてたってマジ!?今の聞かなかったことにして!!」


 そう言いながらフラッシュと共に犯罪者プレイヤーへと攻撃を開始する。


 ブーストダッシュで犯罪者プレイヤーの懐に潜り込み、ブーストパンチといういつものコンボだ。


 芸術的なフォームで吹き飛んでいく犯罪者プレイヤーへ、レイラが追撃で二―キックを繰り出す。


 凄ぇ…、あのスピードで吹き飛ぶヤツによく合わせられるなぁ…。


「これで終わりだ…」


 その瞬間、フラッシュの周囲から発射されたなにかが犯罪者プレイヤーへと向かう。


 フラッシュの異能か?


「な、なんだこれ!?」


 フラッシュが放った何かは犯罪者プレイヤーの四肢を拘束してしまう。


「あれってフラッシュの異能?当たった人を拘束する能力か?便利だね」

「拘束は私の異能の能力というよりは、魔力操作の賜物だね。大我も努力すればできるようになるよ、きっと」

「そうなんだ…。オレ、魔力操作苦手なんだけど、できるようになるかな…?」

「諦めずに努力すればきっとできるようになるさ!頑張ろう!必要なら私もサポートするからさ!」


 まさかのスポ根式根性論…。


 やっぱり最後にモノを言うのは努力と根性なのか…。


「私も協力するよ大我。でも今はとりあえず、確保したこのプレイヤーをどうするかを考えないかい?ゴーストも放っておけないし」

「それに関しては待機している私の部下に回収してもらおうと思っている。連絡するから、少し待っていてもらえるかい?」

「別に構わないが、そのままコイツを連れ帰ったらどうなるかわかっているね?大暴れしてやるから覚悟しておきなよ?」

「そんなことしないよ…。ああ、リサか?例のプレイヤーを確保したから回収しに……は?怖いからイヤだ?ちょ、ちょっと待って…!おい、リサ!?」


 なんか…今の感じ、回収を断られたみたいな感じがしたんだけど、気のせいかな?


 一応確認しておきたいんだけど、フラッシュって立場的には偉い筈……なんだよね…?


「相変わらず君の元には癖の強い部下しか集まらないのかい?」

「言わないでくれローレンス…。皆、基本は良いヤツらなんだ…。基本は……」

「苦労人ってフラッシュみたいな人を言うんだろうね」

「薄々勘づいていたことを、容赦なく突いてくるね大我は……」

「そんなことよりさ…」

「そんなこと!?さすがに酷くないかい!?私としては結構死活問題なんだけど!?」

「大我…魔王エレノアに対する態度を見た時も思ったけど、結構ズバッといくよね…」

「魔王エレノア!?君たち魔王エレノアと会ったことがあるのかい!?」

「大我のサポーターは魔王エレノアなんだ。まあ、私も最初は驚いたものさ。実際話してみたらあれだったけど…。あ、そうだ。そういえばあの時、未来の記憶がどうのって言ってたけど、あれは一体なんだったんだい?」

「オレ、未来の自分の記憶があるんだ。エリーも同じように未来の記憶があるらしくて…」

「ちょ、ちょっと待ってくれ…。情報量が多すぎてちょっと…」


 そんなに情報量多かった?


「み、未来の記憶…?これはまた驚きの新事実が発覚したね…」

「まあ、その未来の記憶も欠けている部分があったり、記憶と違う箇所だらけで今のところ全然役には立ってないんだけどね……。実際、未来のオレはハンターズギルドやゴーストのこととか知らなかったし」

「そうなのかい?それは妙だね…。基本的には最初のゲームを生き残ったプレイヤーには、我々の仲間が諸々の情報を知らせることになっている筈なんだが…」

「その辺りの記憶も曖昧なんだよね…。エリーの話だと、最後の記憶ではオレたちどころか周囲がかなり崩壊していたみたいだから、なにかがあったのは確実だと思うけど…。エリーはそれをオレたちに知らせないために、誰かが未来のオレたちの記憶を改竄したんだろうって言ってたよ。だから、重要な部分に限って覚えてないんじゃないかって…」

「なるほど、それで…。つまり魔王エレノアは未来の記憶の謎を解き、未来を変えるために君と組んでいるってことだね?」

「まあね。でもすでに未来は結構変わってるんだけどね。オレの記憶だとアレックス爺さんは未来でも生きてた筈だし」

「なんだって!?それは……。大我、このことは私たちだけの秘密にしておいた方がいいかもしれない…」

「え…?なんでさ?」


 未来の記憶の話をするとなるとどうしても説明が多くなっちゃうから、オレとしては助かるけど…。


 説明するの面倒臭いし…。


「未来の記憶を持った君が過去…我々にとっての現在に介入したせいで、アレックスさんが死ぬことになったと考える者が現れる可能性があるからさ。サバイバーズギルドにはアレックスさんの熱烈な信奉者もいるからね。そういう者たちが君に危害を加える可能性がある」

「な、なるほど…それは困る…。でも、フラッシュはいいのか?もしかしたらホントにオレのせいでアレックスさんが死んじゃったかもしれないのに…」


 というか、実際そうだろうし…。


 こういうのタイムパラドックスっていうんだっけ?


「まったく気にしていないということはないけどね…。でもそんなの大我にだって、それこそ魔王エレノアにだってわからないことだっただろうし…。そもそもの話、大我は好きで未来を変えているわけじゃないだろう?話を聞いた限りだと不可抗力でしかない。なら、怒りをぶつける相手は大我じゃないさ」


 人間が出来てるなぁ、フラッシュは…。


 オレならその場は冷静さを欠いて、つい原因となった人に当たってしまうかもしれないってのに…。

お読みいただきありがとうございます。

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