44 綺麗なお姉さん
それにしても悪魔ってのはどうしようもないな。
この世界に生きている以上自分たちも無関係とは言えない筈なのに。
「しかも断った理由が、『自分には関係ない』とか、そんな理由じゃなくて、『だってめんどくさいし…』って感じだったらしいのよ!どう思う!?」
「悪魔ってホントどうしようもない連中だなって思う」
言うに事を欠いてめんどくさいとか。
ホント悪魔はろくでもない連中だな。
「でしょ?!当時の魔王も頭を抱えたらしいわ。なんで自分だけこんな苦労しなくてはいけないんだ?って。で、思ったらしいの。そもそも悪いのはすぐ死んで霊脈を圧迫してしまっている人間なんじゃないかって」
「そうきたか」
それはそうかもしれないが、原因が寿命である以上仕方ないだろ。
不可抗力ってヤツだ。
「それで思いついたらしいの。人間にノイズを浄化させた上で、それを見世物として悪魔に見せる。そして見物料として悪魔たちから魔力を徴収すれば一石二鳥なんじゃないかって」
「ハァ…。つまりそれが、デモンズゲームの成り立ちってことか…。以前言っていたアイテムの購入とかプレイヤーと交流する権利も魔力の徴収の一環ってわけ?」
「そういうことよ。そして集まった魔力でデモンズゲームで浄化し切れなかったノイズを浄化して、余った魔力でプレイヤーの願いを叶える。これが主な流れね」
「なるほどね。ちなみに、人間にノイズを浄化させるって話からいくと、エネミーの正体がノイズってことでいいのか?」
「その通りよ。だから基本的にゲームクリアの条件はボスエネミーの撃破になってるでしょ?」
言われてみればたしかに。
今回だって、勝利条件はゾンビを生み出す魔法陣の破壊やリッチーの撃破だった。
そういえば邪神の復活によるクリアの場合も、邪神がエネミーを滅ぼすとか言ってたな。
「なるほどね。あともう1つ。エネミーの姿が伝承や映画に出てくるクリーチャーみたいなのはなんでなの?」
地味に気になってたんだよね。
今回だってゾンビとかリッチーとかだったし。
「それは、まあ…やむを得ない事情ってヤツがあってね…。基本的にエネミーはゲームマスターが魔力によって姿を変化させてるんだけど、あまりに長く同じエネミーを使ったり、同じゲームを続けているとマンネリ化してきちゃうでしょ?そうなるとどうなるか…。予想はつくでしょ?」
「観客である悪魔たちがクレームを入れて来るのか…」
「そういうこと。だからゲームマスターたちにとっては次のゲームの内容及びエネミーをどうするかってのは常に悩みの種なのよ。だから、彼らは普段から人間界の伝承や映画、それ以外にもドラマやアニメとかをチェックして、次のゲームやエネミーに反映させてるってわけ」
「それでエネミーたちはどっかで見たことあるような造形をしてたんだな。あ…、てことはシークレットミッションが映画とかでよくあるシチュエーションが多いのも……」
「ええ。ゲームマスターが似たような映画とかを参考にしているからね」
オレの考えは間違ってなかったらしい。
そりゃ映画とかでよくあることをやったらシークレットミッションをクリアしやすい筈だよ。
参考にしてるのが一緒なんだもん。
「聞きたいことは以上かしら?」
エリーが確認してくる。
うん、今のところは大丈夫そうかな?
「ああ、今のところはな。でも、あとで聞きたいことができるかもしれないし、連絡手段があるといいんだけど…」
それに未来の記憶について思い出す可能性とかもあるので、こちらからの連絡手段があった方がいいだろう。
「そう言われると思って用意しておいたわ。はい」
エリーからオレへと魔力を送ってきているのを感じる。
こんなに簡単に連絡手段を確立できるとか、ホント魔力って便利だな。
「オッケーよ。これで私に連絡したいと願えば魔力によって私に連絡できるようになったわよ」
「サンキュー。じゃあそろそろ帰るわ」
今回はかなり重要な話を聞けたし、よかったよかった。
「最後にもう1つ。未来の記憶に関してだけど」
エリーが真剣な顔で話してくる。
「あなたも私も未来の記憶を断片的にしか覚えていないということは、記憶の改竄を受けている可能性が高いわ」
「記憶の改竄?」
「ええ、そうよ。記憶の改竄っていうのは魔力が無い一般人相手ならともかく、魔力を持っている者相手だと本来は難しいものなのよ。それなのに魔力のあるあなた、そして悪魔である私の記憶を改竄しているなんて…正直普通じゃない」
魔力のある人間や悪魔の記憶をイジるのは難しいんだな、初耳だ。
「つまり、私たちの敵…って言っていいのかわからないけど、とにかく私たちの記憶を改竄したヤツは相当厄介なヤツよ。それだけは肝に命じておいてね」
「了解了解」
返事をしたらエリーは不安そうな顔をしていたが、納得してくれたらしく、転送の光が強くなっていった。
光が収まって来たので目を開ける。
いつもの通学路だ。
辺りはもう真っ暗になっている。
結構時間が経っていたんだな。
「ねえ、君?ちょっといいかな?」
声がしたので振り向くと、銀髪のメッチャ綺麗な女の人が立っていた。
見た感じオレより少し年上の外国人のお姉さんって感じだ。
「…?どうかしたかい?」
「え?あ、ああ、いえ、大丈夫です…。え~と…、なんでしょうか?」
「ここに行きたいんだけど、道を教えてもらえないかと思ってね」
スマホに地図を表示してきたので見てみると、電車に乗らないと行けないような場所だった。
「これ、電車に乗らないとダメですよ?」
「そうなのかい?困ったなぁ…」
もしかして駅までの道がわからないとかかな?
それなら…。
「もし良ければ駅まで案内しましょうか?」
「いいのかい?助かるよ…。日本に来たばかりで勝手がわからなくてね…」
「あぁ、外国っていろいろ勝手が違いますもんね…。それじゃあ行きましょうか」
「ああ、よろしく頼むよ。あ、その前に自己紹介を。私は〈レイラ・ローレンス〉。君は?」
「阿久津大我です。レイラさんは旅行ですか?」
歩きながらお互い自己紹介をする。
ちなみに夢のくだりは今回はカットした。
レイラを目の前にしたらドキドキしてそれどころではなかったのだ。
「レイラでいいよ。私も大我って呼ばせてもらうから。で、質問の答えだけど、大我の予想通り、旅行だよ。一人旅が趣味でね」
「いいなぁ、一人旅。オレも早く大人になって一人旅とかしてみたいな。なんかカッコいいし」
「カッコいい?ふふ、変なことを言うね大我は」
その微笑みを見てオレは思った。
この人…超可愛ええ!!
「へ、変ですかね…?男子高校生…海外だとティーンエイジャーでしたっけ?ま、まあ、どっちでもいいんですけど…。その、オレのような年代の男子からしてみたら、やっぱり一人旅ってのはカッコいいってイメージですよ?それもレイラみたいな綺麗なお姉さんがしてるとなると猶更…」
「き、綺麗なお姉さん?え~と、ゴメンね…、私、実はそういう風に言われることにはあまり慣れてなくて…」
この人ちょっと可愛い過ぎんか?
お互い気恥ずかしくなったのか、少しの間無言になる。
その状態のまま少し進んで気づく。
ここ、あまりにも静かすぎないか?
というか…人の声がしない…。
「大我、気づいているかい?さっきから全然人の姿を見かけない」
そうか、レイラの言う通り、人がいないからこんなに静かだったのか。
どうなってるんだ?
とりあえず辺りを警戒しながら先を急ぐ。
その時、幻覚を見た。
腕が蠍の爪のようになった人間みたいなヤツが人を襲っている幻覚だ。
瞬きをして前を見る。
そんなモンスターみたいなヤツはいなかった。
やっぱり幻覚か。
デモンズゲームが終わった直後だからな、疲れているのかもしれない。
その時、誰かがオレの腕を掴んだ。
「誰だ!!」
掴んでいた腕を振り払って相手を見る。
「しー!静かにしてくれ!」
「皆人?」
そこに立っていたのはクラスメイトである禅院皆人だった。




