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42 願い

「エリーが魔王だったのか。なら教えて欲しいことがあるんだけど」

「あなた…。もうちょっと驚いてくれてもいいんじゃない?」

「ハイハイ、驚いた驚いた。で、さっきの話なんだけど…」

「そんな簡単にあしらうようなことしないでよ!お願い、もっと驚いて!そして私を讃えてよ!私魔王なのよ!?私、あなたが優勝したら正体明かそうと思ってセリフとかシチュエーションとかいろいろ考えて吟味してきたんだから!」


 そんなことしてたのかコイツ…。


 もしかしてアホなのか?


 ていうか…。

 

「魔王って暇なの?」

「そんなことないわよ!?忙しい中で必死に考えてたの!それだけが最近の生きる糧だったの!!」


 忙しい中でそんなん考えてるのもどうかと思うけど。


 てか、それだけが生きる糧とかどんだけ盛ってんだよ…。


「まあ、そんなことよりもさ、オレとアンタって前に会ったことある?」


 気になっていたことを聞く。


 絶対にどこかで見たことあるんだよなぁ。


「無い筈よ」

「そっか」

「今の時代では…ね」

「今の時代?」

「ええ。あなたは見たんでしょ?未来の記憶を」


 そう言われて気づく。


 そうだあの顔!


 知っている筈だよ!


「アンタ、未来でオレのことを痴情のもつれで殺した女か!!」

「ちょっと待って!あなたの記憶だとそうなってるの!?」


 あなたの記憶だと?


 どういうことだ?


 いや、そもそもの話…。


「なんでアンタ、オレが未来の記憶を持っているって知ってるんだ?」


 オレは一度も未来の記憶があるなんて言っていない。


 誰にもだ。


 なのに何故エリーはオレに未来の記憶があることを知っているんだ?


「その答えは簡単よ」


 エリーは告げる。


「私もあなたと同じ、未来の記憶があるからよ」


 自分もオレと同じ、未来の記憶を持つ者だと。


「アンタも未来の記憶を?」

「ええ、そうよ。だからあなたをデモンズゲームに参加させたの」

「今とんでもないこと言ったな、おい!アンタがオレをデモンズゲームに参加させた!?道理でおかしいと思ったよ!!オレの記憶だとゲームに参加するのはもっと後だったからな!!」


 そう、未来のオレ記憶ではもっと後、具体的には10年以上経ってから初めてゲームに参加していた筈だった。


 なのにこんなに早くゲームに参加させられておかしいとは思っていたのだ。


「なんでオレをデモンズゲームに参加させたんだよ!?」

「キャッ…!……あ、あんまり大きい声出さないでよ……ビックリするじゃない…」

「そんなことどうでもいいから早く理由を言えよ!」

「そ、それは…。だ、だって…!未来の記憶を見たはいいけど、肝心な箇所が抜けてたから、あなたが覚えてるかもしれないと思ったんだもん!!」

「だもんじゃねぇよ、うぜぇ…」

「酷くない!?」


 客観的に見て酷いことしたのはお前の方だと思うぞ?


 まあ、オレとしては結果オーライだけどさ…。


「はあ…まあいい…。それで?肝心な箇所が抜けてるってどこだよ?」

「気にならなかったの?なんであなたが倒れていたのか?なんで周りがボロボロになっていて、おまけに魔王である私まで血まみれになっていたのか」

「言われてみれば…たしかに周りボロボロだったな…」

「ホントに気づいてなかったの…?」


 エリーが信じられないって目でオレを見る。


 心外だな。


「エリーが血まみれになってオレの前に立ってたから、痴情のもつれでオレが殺されたんだと思ってたんだよ」

「さっき言ってた痴情のもつれってそういうこと!?ホント紛らわしい!!」

「さっきから怒ってばかりだなエリーは。そんなに怒ってばかりだと疲れない?少し落ち着きなよ」

「あなたのせいで怒ってるんだけど…」

「心外だな。怒らせるつもりも、怒らせるようなことを言ってるつもりもないんだけど……」

「ホントにタチが悪いわねアンタ…」


 疲れたような声でそんなことを言うエリー。


 ホント失礼なヤツだなコイツ。


 ちょっと意趣返ししてやろうか?


「ほら、怒ってばかりいるからそんな疲れるんだよ。いつも冷静沈着なオレを見ろよ?ゲームの後だってのにこんなに元気なんだぞ?」

「こ、この……!」


 オレの助言を聞かず、また怒ろうとしているエリーはオレを見習った方が良いと思う。


 まったく…まさか魔王が見習うべき存在になってしまうとはな…。


 エリーの言う通り、オレは少し、すこーしだけ、人間としては頭がおかしいところがあるのかもしれないな…。


「まあいいや。とりあえず話をまとめると、エリーは未来の記憶の中に欠けた部分があることに気がついた。そしてそれをオレが覚えてるかもしれないと思った。だからオレをゲームに参加させた。そういうことだな?」

「ハァ……。…まあ、そういうことよ……。未来の記憶は魔力で送られて来てたから、アンタが魔力を使えるようにならないと思い出せない状態だった…。でも人間を魔力が使える状態にするっていうのは結構面倒なのよ…。だから一番簡単な方法であるデモンズゲームに参加させたのよ…」


 なるほどね。


 それで本来のタイミングより早いタイミングで参加させられたのか。


 納得はいった。


 だけど…。


「悪いけど、エリーが知りたかったことはオレも思い出せないみたいだ」


 オレがエリーと一緒にいた時の記憶。


 そのあたりの記憶はかなり朧気おぼろげだ。


 思い出したいけど、頭に霧が掛かったみたいになっていて思い出せない。


「そう…。残念だけど仕方ないわね」

「ああ、どうにもならないことってのは考えても仕方ないからな。切り替えていこ?」

「相変わらず軽いわね、アンタ……」

 

 それはそうと…。


「なあ、他にも聞きたいことがあるんだけど?」

「なに?」

「え?答えてくれるの?」

「まあ…、協力者みたいなものだからね私たち。言えないものもあるけど、それ以外ならいいわよ」

「それじゃあ、早速…。なんでデモンズゲームなんてやってんの?」

「あ~…。そのことね……。話すと長くなるから、とりあえず今回のゲームに関しての諸々が終わった後でいい?」

「別に構わないよ。教えてもらえるなら順序なんてどうだっていいし」

「ホントアンタってそういうところドライというかなんというか……。まあいいわ。改めて聞くけど、願いは決まってるのよね?」

「ああ、決まってる」


 元々オレの願いなんて1つしかない。


「オレの願いは、素晴らしい人生を送ること、これ一択だ。オレが心の底から満足できる、そんな素晴らしい人生をな」

「かなり抽象的な願いね。どんな形で叶うか保証できないけど、それでも構わない?」

「構わない」


 大事なのは過程よりも結果だ。


 結果として素晴らしい人生を送れるなら文句はない。


「そう、わかったわ。じゃあ、願いを叶えるわね」


 エリーがそう言った直後、オレの周りに光が満ちる。


 そしてその光がオレに収束する。


 なんか神々しい感じだ。


「これであなたの願いは叶えられたわ」


 これでオレは素晴らしい人生を送れるのか。


 これからたくさんの面白いことに遭遇できると思うとワクワクする。

 

「とりあえず一旦エントリールームに戻すけど、人間界へ転送される時の転送先を私の元に変えておくから、話はその時にね?」

「オッケー」


 エントリールームってなんだよ?


 と思ったが、すぐわかるだろうし黙っておくことにした。


 いつもの転移と同じように目の前が輝きだす。


 そんなことよりもいろいろ知りたいことが知れそうだし、何を聞こうか。


 今はそれしか気にならなかった。



 輝きが収まった時目の前にあったのは、さっきと変わらない真っ暗な空間だった。

 

「大我!?ようやく戻ってきたの!?」


 樹里愛の声で我に帰る。


 そうか、この空間はいつものあの場所か。


 というか、ここってエントリールームって名前だったのか。


 未来の記憶を含めて初めて知ったぞ。


「皆無事だったんだな。よかった」

「無事だったんだなって…。それはこっちのセリフよ!」


 安堵した表情で告げる樹里愛。


 ジャンやジョナサンも同じだ。


 どうしたんだろうか?


「最期の祭壇へ向かっている最中に突然ゲームが終了してこの空間に戻されたと思ったら、あなたが勝利条件を達成して優勝したって言われて……。でもあなたは戻って来ないしで、何が何だか……」


 そういうことか。


 優勝したはずのオレがいつまで経っても戻ってこなかったから、心配してたってことね。


「3人とも、心配かけてゴメン。景品である願いをどうするかって聞かれたりしてて時間かかっちゃった」


 エリーの件は伏せておこう。


 未来の記憶が関わってきちゃうし。


 なにより説明が面倒くさい。


「それはそうと、願いは何にしたんだ?」


 ジョナサンが聞いてくる。


 言うまでもない。


 オレの願いはただ1つだ。


「素晴らしい人生を送りたいって願いを叶えてもらったよ」

「やっぱりか」


 皆わかってたらしい。


 まあ、自己紹介の時に公言してたしね。


「でも、抽象的過ぎるからどんな形で願いが叶えられるかはわからないって言われた」

「だから言っただろ…」

「いいんだよ、最終的に願いが叶えば。過程なんてどうでもいいし」

「あなたのそういう細かいことは気にしないところ、呆れるけど嫌いじゃないわよ私」


 オレもオレのこういうところ、嫌いじゃない。


 そんなことを話していたら光が強くなってきた。


 転送の合図だ。


「とりあえず、近いうちに連絡を取り合いましょう。わかったわね、特に大我?」


 樹里愛の提案に皆頷く。


 その瞬間あたりが光に包まれた。

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