41 魔王
今週は二話ずつ掲載していきます。よろしくお願いします。
そう、オレの体は炎になっていた。
だからオレの体に刺さっていた剣をすり抜けられたのだ。
ここでオレは閃いた。
もしかしたら、炎になって突撃すればデュラハンたちを躱してリッチーの元へ辿り着けるのではないか?
「だが、どうやってあのリッチーを倒す?」
そもそもオレにはアイツを倒す手段がない。
元々が硬いうえに障壁まであるのだ。
あれをどうにかする攻撃力がないとどうしようもない。
打開策を模索しながらデュラハンからの攻撃を躱す。
こいつら、思った以上に絶妙な連携をしてきやがる。
さっきから何度も何度も体を切り裂かれている。
痛い、すごく痛い。
さっきも言ったけど、再生するっていっても痛いものは痛いのだ。
正直もうやめてほしい。
しかもデュラハンの間を縫うように、リッチーの魔法まで飛んで来る。
さっきから体を貫かれるわ、切り裂かれるわ、近くで爆発して焼かれるわ、散々である。
しかも爆発の場合、衝撃も凄まじいもので、吹き飛ばされるし頭がクラクラするしで最悪だ。
せめて爆発するなら自爆にしてくれないかな。
そうすればゲームは終わるし、オレは爆発の真骨頂である自爆を間近で見れてハッピーになれるしで、良いこと尽くめなのに。
そう考えたところで気づく。
オレの能力は炎。
それを限界まで魔力を送り込みながら溜め込み、一気に解放したら、凄い爆発力を生むのではないか?と。
もちろんリスクはある。
というよりも、リスクしかない。
普通だったら死ぬ。
そりゃそうだ。
だってこれ、爆発するのは自分なのだから。
要は魔力を用いた自爆なのである。
そんなことをやるヤツは頭がイカれたヤツだけだろう。
しかし、オレにはアレがある。
そう、再生能力である。
あの再生能力があればワンチャン生き残れるのではないか?
どうせこのままだとジリ貧でほぼ死亡確定という絶望的な状況だ。
やってみる価値はある。
よし、作戦は決まった。
あとは覚悟を決めるだけだ。
「オレはやれる、オレはやれる、オレはやれる!!」
自分を鼓舞する。
これから自爆するのだ。
自分で自分を鼓舞でもしなきゃ、やってられない。
そこでふと考えてしまった。
「あとで樹里愛に怒られるんだろうなぁ……」
嫌だなぁ…。
心が萎えてきた。
いやいや!
ここでやらなきゃ無駄死にするだけなんだ、やらない理由がないだろ!
萎えていた心に喝を入れ、オレは炎と化し、デュラハンの群れへ突っ込んだ。
炎となったオレはデュラハンなんていないように通り抜ける。
便利過ぎるな炎化、あっという間にリッチーの目の前に辿り着けたぞ。
問題はここからだ。
このままリッチーに組みついて自爆する必要がある。
それなら。
そのままリッチーに掴みかかる。
はっきり言って隙だらけ。
人間ならこれだけ隙だらけなら罠かと考えるだろう。
だが、エネミーなら恐らく何も考えることなく……。
「ぐう……!!」
そう、こんな風に罠とか疑うことなく、胸を貫いてくると思っていた。
「ゴホッゴホッ……!」
ついせき込んでしまう。
口から血を吐き出す。
痛い…。
痛いが。
「捕まえた……」
オレの胸を貫いているリッチーの腕を掴む。
もう逃がさない。
魔力を全身に限界まで溜め込む。
今にも暴発しそうだがまだだ。
まだ最大威力にはほど遠い。
「ガアアッ!!」
リッチーが暴れる。
できれば暴れないでほしい、痛いから。
その時、背中から(いや、腹からもか)鋭い痛みが走る。
見ると腹から剣が生えていた。
これはたしかデュラハンが持っていた剣。
ってことは後ろからデュラハンに刺されたってことか…。
正直ボーっとしてきて現実感がない。
血を失い過ぎたか。
だが問題ない。
余計なことを考える暇がない分、魔力の操作に集中できる。
ここだ、ここが魔力の臨界点。
オレは一気に溜め込んだ魔力を解放した。
「ミッションコンプリート!セカンドゲーム『邪神復活ゲーム』はプレイヤーの勝利となります。皆様お疲れさまでした」
遠くでナビゲーターの声が聞こえた気がしたが、オレはそれ以上意識を保っていられなかった。
気がつくといつも通り、真っ暗な空間にいた。
『優勝おめでとう。どう?勝者となった気分は?』
気づくとエリーの声が聞こえていた。
特等席とやらから見ていたらしい。
「オレが優勝ってことは無事にリッチーは倒せたみたいだな」
『そうね。さすが私が見込んだ人間!って言いたいところだけど……』
なんだ?
『さすがにあれは私でもドン引きよ。なに、自爆って?頭おかしいんじゃないの?いくら再生能力を持ってるって言ったって痛みはあるんでしょ?それなのに自爆って……。頭おかしいんじゃないの?』
「2回言うな。仕方ないだろ?あれしか方法がなかったんだから…。それに痛みは我慢すればいいし…」
『我慢すればいいって考え自体がもうアレね…。まあいいわ。それよりもどうなの?勝者になった気分は?』
「そんなこと言われても……」
全然実感が湧かない。
『実感が湧かないのかしら?まあ、初優勝したプレイヤーの大半はそうみたいだから不思議じゃないけど。まあいいわ。それより勝者となったからには願いを叶えてもらえるわけだけど、どんな願いにするかはもう決めているの?』
「そりゃ決まってるよ!当然だろ!!」
『キャッ…!……い、いきなり大きな声出さないでよ…!コホン…そ、それじゃあ願いを聞かせてもらっていいかしら?』
「はあ?なんでエリーに言う必要があるんだ?」
普通はゲームマスターに伝えて叶えてもらうんじゃ?
『その理由は簡単よ。ゲームマスターは願いを聞くだけ。実際に願いを叶えるのは……』
目の前が輝きだす。
目を開けると、綺麗な女性が目の前に立っていた。
あの女の人は……。
「この私だからよ♪」
エリー?がなんか言っているが、オレとしてはエリー?をどこかで見たような気がする方が気になる。
どこで見たんだったかな?
「なあ、オレ、アンタとどっかで会ったことある?」
「えぇ?!先に聞くのがそれ?!」
彼女は驚いているが、オレとしては気になるのだから仕方ない。
「え、えっと…。なんで私が願いを叶えるんだ?とか疑問に思わないの?」
「いや、悪魔がどうやって願いを叶えてくれるかとか興味ないし……」
『願いを叶えてくれる』という結果が大事なんであって、『どうやって願いを叶えるか』という過程は割とどうでもいいし……。
「え、えぇ~……。」
エリーは困惑している。
彼女の予定では「なんでエリーが願いを叶えてくれるんだ?!」ってオレが驚く筈だったんだろう。
でもオレがそんなに興味を示さなかったから、予定が狂ってしまったと…。
「なんかゴメン」
「謝らないでよ!?余計に私が惨めになるじゃない!!」
オレのコミュ力じゃこれが限界だった。
「それで?なんでエリーが願いを叶えてくれるんだ?」
今更だが、疑問に思ったので聞いてみる。
「今更聞くの?!ホント、唯我独尊というか、マイペースというか…」
エリーが呆れたように呟き、気を取り直して告げる。
「私の名はエレノア。今代の魔王よ」
初耳の情報が聞こえた。
お前、魔王だなんて以前の自己紹介の時言ってなかったじゃん。




