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39 嫌な予感

~樹里愛SIDE~



「よし!大我、あとは頼んだぞ!」


 ジョナサンが最後のアイテムを手に入れ、走り出す。


 これであとは作戦通りに祭壇に奉納しに行くだけ。

 どの祭壇に奉納しに行くかは事前に決めてある。

 これも全てあの子が気配察知の応用で地形を把握してくれたおかげだ。


 本当にあの子は凄い。

 魔力の使い方、今回の気配察知、地形把握、そして今回の作戦立案。

 いずれも大我が1番私たちの生存に貢献している。


 それに比べて私は大我におんぶにだっこ状態だ。

 自分のことながら、本当に情けない。


「プレイヤーチーム、祭壇への奉納を確認。各チームの祭壇への奉納は、プレイヤーチーム残り5、エネミーチーム残り1となります」


 誰かが祭壇へ奉納したらしい。


 この調子で奉納していけば、あの子の負担を減らせる。

 一刻も早くこのゲームを終わらせないと。


 あの子が傷ついている姿を想像する。

 それだけで自分の心が痛むのがわかった。


「違う。大我はあの子じゃない。あの子じゃないのよ……」


 そう、あの子じゃない。

 大我はあの子じゃない。


 自分に言い聞かせる。

 それでも心配になってしまう。


 だからこそ、一刻も早くゲームをクリアしてしまいたいのだ。


「これで、よし!」


 早く次へ!


「プレイヤーチーム、祭壇への奉納を確認。各チームの祭壇への奉納は、プレイヤーチーム残り4、エネミーチーム残り1となります」


 これで残り4つ…。


 あと少し…。

 あともう少しだ…。


「早く、早く次の祭壇へ…!」


 気が急いて仕方がない。


 自分でもいつも通りの思考が出来ていないのが理解できた。

 でも仕方ない、だってあの子が今も苦しんでいるのだから。


 気ばかり焦るも、私の体は今以上に速くは動いてくれない。


「プレイヤーチーム、祭壇への奉納を確認。各チームの祭壇への奉納は、プレイヤーチーム残り3、エネミーチーム残り1となります」


 よし!

 良い調子だ!


 最初はどうかと思ったが、この作戦は大成功だったらしい。


 大我の献身が功を奏している。

 自分のことではないながら、少し誇らしく感じる。


 本当にあの子は凄い!!

 さすが私の……。


「違う、違う…。違うってわかってるのに……」


 ずっと走りっぱなしだから、酸欠で頭が回っていないのだろうか?

 きっとそうだ…。


 だから何度大我はあの子じゃないと自分に言い聞かせても、勘違いしそうになるのだ…。


 そうに決まっている。


「プレイヤーチーム、祭壇への奉納を確認。各チームの祭壇への奉納は、プレイヤーチーム残り2、エネミーチーム残り1となります」


 あと少し……。

 ボーっとし始めた頭で大我のことを想う…。


 待っててね大我……。


 今度こそ、お姉ちゃんが守ってあげるからね……。


「プレイヤーチーム、祭壇への奉納を確認。各チームの祭壇への奉納は、プレイヤーチーム残り1、エネミーチーム残り1となります」


 これであとは私が最後の祭壇へ奉納すればゲームクリア……。

 ようやくこのゲームを終われる……。

 今度こそ、あの子を失わずに済む……。


 そう思っていた。


 だがこれは悪魔のゲーム。


 そんな簡単に終わらせてくれるわけがなかった。


 ナビゲーターのアナウンスが止まった瞬間、近くにいたスケルトンたちがブルブル震え出した。


 酸欠で頭が回らないながらも、嫌な予感がした。

 一刻も早くこのゲームをクリアしなくては……。


 なので私は急いでその場を離れた。


 結果論だが、私のこの選択は間違っていた。

 私はこの時、無理をしてでもスケルトンの数を減らしておくべきだったのだ…。


 だが、そんなことを知らない私は全力でその場から逃げた。

 逃げてしまった。


 私が選択を誤ったと気づいたのは逃げ出して少し経った後、通路を走っている最中だった。


 後ろから何かの音がしたので耳を澄ます。


 これは……馬の蹄の音?

 まさか……。

 つい立ち止まって通路の入り口を凝視する。

 

「お願い……。杞憂であって……」


 願望が口を突いて出る。


 だが、そういう時に限って嫌な予感は当たるものだ。

 通路の入り口から出てきたのは、大量のデュラハンだった。


「私、大我ほど日頃の行い悪くないと思うんだけど…!」


 最後の祭壇まではまだ距離がある。


 どうする!?

 頭をフル回転させるが、考えている間にもデュラハンたちは私へ向かって馬を走らせて来る。


 速い!

 さすがにあれでは逃げきれないと判断し、一旦迎撃することにする。


「はぁぁぁ!」


 気合を込めて一閃。


 馬の足を断つ。

 馬が倒れ、投げ出されるデュラハン。


 この馬がいると、どんなに距離を取っていても無意味だ。

 なので狙うのならこの馬だろう。


 だが、まだまだデュラハンと馬はいる。

 これじゃ焼け石に水だ。


「このままじゃ大我が……!」


 あの子の身を案じてしまい、焦りばかりが募る。


 やはりあのスケルトンがデュラハンに変化したのだろうか?

 あの時、少しでも数を減らしておけば…。

 後悔ばかりが募る…。


 いえ、考えるのは後よ。

 今はこの状況をどうすべきかを考えなければ…。


 頭を切り替え、再度デュラハンを迎撃する。

 

「この…!どきなさい!」


 向かって来るデュラハンの攻撃を避け、再び馬を斬る。

 別のデュラハンが向かって来るのが見えたので、前回のゲームで手に入れていたメイスを投擲。

 デュラハンに当たり倒れるが、馬を失ったデュラハンが即座に馬の背に乗る。


「キリがない……!」


 このままじゃジリ貧だ…。

 この状況をどうにかしなければ勝ち目はない。


 どうすればいいの……?


 困窮を極めた時、私に向かって来ていたデュラハンの馬が突然倒れた。

 よく見れば馬の首に矢が刺さっている。

 これは……!


「樹里愛!無事だな!」


 声のした方へ振り向くと、ジョナサンがボウガンを手に立っていた。


 あのボウガンはジャンが自分には必要ないとジョナサンに渡していたもの。

 ここにきてジャンの判断が私を救ってくれたらしい。


 私は心の中でジャンにお礼を言った。


「おーい!2人ともぉ!」


 声のした方を向くと、ジャンがこちらへ向かってくるのが見えた。

 噂をすれば影というが、本人が現れるのはさすがに予想外だ。


 だが、これで戦力差は覆せるかもしれない。


「2人とも頼む!手を貸してくれ!」


 ………。

 今ジャンは何を言ったのかしら?


 そう思ってジャンの方を見ると、後ろから大量のデュラハンが追いかけて来ていた。


 敵を引き連れて来るってどういうことなのよ!?


 そういうことするのは大我だけで十分なんだけど!?

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