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3 アイテム

「いつまでこんな茶番を続けるつもりだ?子供みたいなことばかり言って…。お前なんかの命令に従う者がいるわけないだろう?理解したのなら大人しくしていろ」


 男が言いたいことは言ったとばかりに背を向ける。


 カ、カッケェ・・・!


 ビジュアルも欧州風の顔立ちにどこか陰のある雰囲気。

 男のオレから見てもカッコいいの塊だ。


 そんな男に正論を言われて、大人しく引っ込んでろ三下!!とまで言われたのだ。


 チンピラはもちろんご立腹である。

 顔も真っ赤で、今にも彼に掴みかかりそうだ。


 というかあれだな。

 このチンピラ凄い面白い。

 ずっと見てても飽きないかも。


 あ、やっぱりチンピラが男に掴みかかった。

 思った通りの行動しかしないなぁ、このチンピラは。


「二人共落ち着けって!」


 黒人の男が二人の間に割って入る。

 この人もさっき話した一人だ。


 黒人でスキンヘッドでおまけにムキムキな筋肉。

 オレが思うカッコいい要素を組み合わせたようなビジュアルだ、最高。


「今は争ってる場合じゃないだろ?」


 そう言って落ち着かせようとする。

 が。


「ふざけやがって!舐めてんじゃねーぞ!テメェ!」

「そうよ!ユキ君をバカにするな!」


 バカカップルはヒートアップ。


 スゲェ、ゾンビ映画の登場人物を見てるみたい。


 そういえば、ゾンビ映画でああいうギャーギャー騒ぐ自己中キャラが序盤で死んでしまうのは作劇上邪魔になるからって理由と、序盤にキャラ付けを強烈にしてから死なせることによってインパクトを強くするという理由があると聞いたことがあるが本当なんだろうか?


 ちなみに国籍が違うのに普通に会話が出来ているのは、魔力のおかげである。

 こういうところだけはすぐ効力を発揮するのはなんなんだろう?

 身体強化とかを先にできるようにさせろよ、意思疎通できても死んだら意味ないだろ。


 そんなどうでもいいことを考えていたら、樹里愛がオレに気づいて近寄ってきた。


「どこに行ってたの?」


 少し声に怒りを感じる。

 心配してくれてたんだろうか?


「ゾンビの頭かち割ってきた」


 サムズアップしながら答える。

 

 樹里愛は険しい顔をしている。

 変なこと言ったかな?


「そう…。でも危ないからあんまり無茶なことしちゃダメよ。あの人たちが言ってたけど、私たちはまだ魔力が使えないから、戦える状態じゃないみたいだし」


 あれ?

 さっきはアレックス爺さんたちを信用できないとか言ってたのに。

 と、不思議に思っていたら、


「あんなのを見せられたらね」


 と横を見るのでその視線を追う。


 そこにはゾンビの残骸が転がっていた。


 おぉ、気が付かなかったがここにもゾンビがやって来てたんだな。

 それで魔力を使った戦闘を見て信じざるを得なくなったと。


「まったく、勘弁してくれよ。争ってる場合じゃないだろ?」

「それはあっちへ言ってくれ。言ったところで効果はないだろうが」


 二人がこちらへ来る。

 アレックス爺さんがあの場を諫めたみたいで、チンピラへなにかを言っている。

 言い返されているが。


「ああいう奴らには何を言っても無駄よ、関わるだけ損ってやつね」


 樹里愛が二人に声を掛ける。


「まあ、異論は無いな」

「おかげで酷い目にあった」


 殴られたのか黒人の男が頬を抑えている。

 苦労してそうだな、この人。


「自己紹介がまだだったわね。私は樹里愛・スペンサー。あなたたちは?」

「オレはジョナサン。ジョナサン・ミラーだ。よろしく」


 黒人の男が答える。

 ジョナサン・ミラーか、カッコいい名前だ。


「オレはジャン・ルイージ・アガッツィだ」


 欧州風の男も名前を教えてくれた。

 それにしてもルイージか。

 勝手な想像だがこの人、髭がチャームポイントのお兄さんがいそう。


「君は?」


 と聞かれたので答える。


「オレは阿久津大我。夢は素晴らしい人生を送ることです」


 樹里愛が呆れた顔をしているが、こういうのは普段から以下略。


「そ、そうか。いや、すまない。いい夢だな、応援してるよ」

「甘やかしちゃダメよ。いい、大我?あのね……」

「抽象的過ぎるだろ。まだ若いからいいかもしれないが、もっと具体的な夢を持つべきだ」

 

 三者三様の反応。

 そのどれもが否定的なのはなんとなくわかる。


 そんなに変かな?この夢。


 

 その後はというと、オレたちはアレックス爺さんたちに従い移動することになった。

 目的はゾンビが来ても守りやすい場所を探すこと、そして勝利条件であるゾンビを発生させている魔法陣を探すためだ。

 途中何度もゾンビが襲撃してきたが全てアレックス爺さんたちが撃退してしまった。

 このロングソード、レアアイテムだろうから、試したいんだけどなぁ。


 ちなみに余談だが、アイテムの中にもランクがあり、大まかにコモンアイテムとレアアイテムに分けられる。

 アイテムを手に入れる手段はいくつかあるが、箇条書きにするとこんな感じだ。


 ・シークレットミッションをクリアする

 ・ゲームフィールドの中に置かれている宝箱から手に入れる

 ・落ちている物を拾う

 ・敵から奪う


 この中でシークレットミッションをクリアして貰えるアイテムは確実にレアアイテムとなっており、強力な能力を持つものが多い。

 他の手段でもレアアイテムは入手できるが確率はかなり低く、基本的にコモンアイテムしか出ない。

 悪魔にも入手確率を渋るという文化があるらしい。


 話は戻るが、このロングソードはシークレットミッションで手に入れた物なので、レアアイテムとなる。

 そうなると効果はお墨付きなのは間違いないが、いかんせんどういう能力かがわからない。


 なので実際に戦闘で試したいのだ。

 魔力があれば能力の確認ができるので、そんなことする必要もないのだが。

 ホント、初ゲームなのが悔やまれる。


「おいガキ。いいもん持ってんじゃねぇか。寄越せよ」


 突然チンピラが寝言を言ってくる。

 起きてるくせに寝言言うとか器用だなコイツ。


「ははは、やるわけないでしょ」

「なんだとテメェ!舐めてんのか!」


 これがすぐキレる若者ってやつか。

 にしても沸点低すぎだろ。

 未来のオレの上司と同レベルだな。

 あんなのと同レベルとか情けなくないのか?


「またお前か、騒ぎを起こさないと死ぬ生態なのかお前?」


 ジャンがチンピラを煽る。

 いや、不思議そうな顔してるから本気で言ってる可能性あるぞこれ。


 だが、わざとだろうが天然だろうが、チンピラからしたら煽られているのに変わりはない。

 チンピラの顔が怒りで真っ赤になっていく。

 

 いいぞ、面白いからもっとやれ。


「やめなさい。さっきも言ったでしょ?こんな奴ら、関わるだけ損だって」


 樹里愛が仲裁?しにやって来る。

 

 いや、仲裁じゃなくて嫌味言いに来ただけだなこれ。

 美人がキツイこと言うと迫力が半端ないって聞くけどホントだな。

 スゲェ怖いもん。


「テメェら、揃いも揃って俺のことをバカにしやがって・・・」

「そうよ!ユキ君に謝ってよ!慰謝料払いなさいよ!」


 チンピラは怒りに震え、彼女の方はキーキー喚いている。

 うるさい。


 それはさておき、ここで何かやらかすのがテンプレだがどうなるだろうか。

 ヤバい、ドキドキしてきた。


「アァー・・・」


 その時またゾンビの声が聞こえてきた。


 アレックス爺さんが目配せをして部下二人がゾンビの元へ向かう。


 いいなぁ、オレも戦いに行きたい。

 というかこのロングソードの力を試したい。


「テメェらに見せてやるよ!俺の力をな!」


 そう叫び、二人の後に続き走り出すチンピラ。


 アイツホントに面白いな。

 これはアイツの行動を見届けなければ。


 ロングソードの試し斬りのため、そしてなによりチンピラがどうなるかを見物するため、オレは後を追うことにした。

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